発表年:1971年
ez的ジャンル:吟遊詩人系フレンチSSW
気分は... :逆さまに微笑むことができるかい?
今回はSaravah Recordの主宰でも知られるフランス人ミュージシャンPierre Barouhを代表する1枚、『Ca Va, Ca Vient』(1971年)です。
フランス、パリ生まれのミュージシャン、プロデューサー、俳優Pierre Barouh(1934 - 2016年)の紹介は、『Vivre』(1966年)に続き2回目となります。
本作『Ca Va, Ca Vient』(1971年)は、1966年に自身が立ち上げたSaravah Recordからリリースする自身初のアルバムであり、当時のフレンチ・ポップスに新風を吹き込んだ生命の躍動が詰め込まれたフォーキー作品です。
Pierre Barouh作品にフレンチ・ボッサを期待する人もいるかもしれませんが、本作でそれに該当するのは、Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作のボサノヴァ名曲カヴァー「Ce N'Est Que De L'Eau(Agua De Beber)」のみです。
正直、サウンドのみ聴いていても本作の素晴らしさはわかりづらいかもしれません。単に哀愁漂う寂しげな曲のオンパレードのように聴こえるかも?
本作は歌詞内容とサウンドをセットで聴くことで、その味わいが増してくる1枚です。
僕の所有する国内盤はPierre Barouhの奥方であった潮田敦子バルーさんによる日本語歌詞と歌詞内容についての注釈が付いています。それを読みながら聴くと、本盤の持つ生命の躍動が伝わってきます。
ぜひ日本語歌詞付の国内盤でお楽しみください。
全曲紹介しときやす。
「Ca Va, Ca Vient」
Pierre Barouh/Jerome Savary作。タイトル曲は自身が監督を務めた同名長編映画の主題歌。ビル工事の労働者がサーカス団と共に旅に出る物語です。本曲もサーカス会場のようなサウンドと共に人生のチャンスを歌います。♪逆さまに微笑むことができるかい♪と人生はさかのぼることができず、人生のチャンスに飛び込むことができるか否かは個人の選択次第であることを歌います。フランス人らしい人生観ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=V5JThrc8LSU
「De L'Amour A L'Amour」
Pierre Barouh/Jacques Datin作。以前にシングル・リリースした楽曲の再レコーデイング。時計の秒針の音のみをバックに映画的手法で描かれた歌詞を寂しげに歌います。
https://www.youtube.com/watch?v=7FiJGxEi3SM
「Le Petit Cine」
Pierre Barouh作。「小さな映画館」という邦題のイメージがピッタリの1曲。ピアノとバンジョーの軽やかな音色が印象的な旧いサイレント・ムービーのBGMのような雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=kqxumulfLiA
「Ce N'Est Que De L'Eau」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作のボサノヴァ名曲「Agua De Beber(おいしい水)」をカヴァー。以前にシングル・リリースした楽曲の再レコーデイング。フランス語によるフォーキーな「おいしい水」も独得の味わいがあります。エレピのアクセントもいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=INuUneeFEJQ
本曲について、当ブログでは、Sergio Mendes & Brasil'66、Wanda Sa(Wanda De Sah)、Diane Denoir/Eduardo Mateo、Al Jarreau、Bossacucanova & Roberto Menescal、Sheila Landis/Rick Matle、Aquarius Y Luiz Antonio、Sebastiao Tapajos/Maria Nazareth/Arnaldo Henriques、Vida Nova、Tamba Trioのカヴァーを紹介済みです。
「Boite De Cirage, Creme De Marron」
Pierre Barouh/David Mac Neil作。邦題「靴墨のビンとマロンクリーム」。バンジョーとアコーディオンをバックに、マロンクリームに似ている茶色のビンに入っている靴墨を子供がなめそうに光景を歌います。
https://www.youtube.com/watch?v=5BiYZFS7LJM
「Le Courage D'Aimer」
Pierre Barouh/Francis Lai作。以前にシングル・リリースした楽曲の再レコーデイング。♪人を愛する勇気などもうない♪と歌う失恋ソング。人生どん底の哀愁感が歌&サウンドから滲み出ています。
https://www.youtube.com/watch?v=JMcX-A1tOSM
「80 A B」
Pierre Barouh/Areski Belkacem作。1940年ヴェルサイユ生まれのアルジェリア系のパーカッション奏者Areski Belkacemは、Saravahを代表する前衛的な1枚、Brigitte Fontaine『Comme A La Radio』(1969年)でも知られるミュージシャンです。そのAreski Belkacemのパーカッションが鳴り響く、トライバル&アヴァンギャルドな雰囲気の1曲です。フリー・ジャズ調のクラリネットもいい感じ。
https://www.youtube.com/watch?v=Vs0XStZjlC0
「Paris Wellington」
Pierre Barouh作。恋人がパリとは地球の裏側にあるニュージーランドのウエリントンへ行ってしまったと嘆く、寂しげな哀愁ラブソング。パリとウエリントンの距離感が伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=M7gSp-gSeAs
「Decroche-Moi La Terre」
Pierre Barouh作。邦題「地球を取って」。フランスでは女性が愛を確かめるために言うわがままに対して、男性が「月を取ってと言うつもり」と反論するそうです。それを前提にここでは女性が「地球を取ってちょうだい」とわがままを言う様を描いています。ノスタルジックなサウンドも含めてフランスらしい男女の関係性が伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=OGcDKpWTcdA
「La Chanson Du Port」
Pierre Barouh/Francis Lai作。以前にシングル・リリースした楽曲の再レコーデイング。フランス語の音韻を楽しむ曲なのだとか。この曲もノスタルジック&不条理な雰囲気が漂います。
https://www.youtube.com/watch?v=LDdaziPT68k
「La Foret」
Pierre Barouh/Francois De Roubaix作。邦題「森林」。環境破壊をテーマにしたフォーキー・チューン。地球環境問題が大きく取り上げられる以前に、こういった問題意識を持っていた点に感服します。
https://www.youtube.com/watch?v=93YkCk2sAfM
「Le Petit Cheval De Bois」
Pierre Barouh/Francis Lai作。邦題「小さな木馬」。街の騒音をバックに遊園地モードのワルツが展開されます。
https://www.youtube.com/watch?v=g5cSqZrYvKo
「Lorsque J'Etais Phoque」
Pierre Barouh作。邦題「僕がアザラシだった頃」。本編のラストはフランス人SSWらしいフォーキー・チューン。Pierre本人は自身を犬とアザラシの生まれ変わりと思っているのだとか。
https://www.youtube.com/watch?v=96AypcN8kZs
「Le Naufrage」
CDボーナス・トラックその1。Pierre Barouh/Michel Rivard作。リズムボックスとシンセを使ったサウンドが他の曲にはない雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=AMzKmafPE2k
「La Complainte De Ben」
CDボーナス・トラックその2。Pierre Barouh/J. Godebarge作。同名映画の主題歌。フランスらしい哀愁モードが伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=Hb_jBryze7w
Pierre Barouhの他作品もチェックを!
Original Soundtrack『Un Homme Et Une Femme』(1966年)
『Vivre』(1967年)
『Viking Bank』(1977年)
『Le Pollen』(1983年)