発表年:2020年
ez的ジャンル:Brainfeeder系天才ベーシスト
気分は... :人生はそういうものさ・・・
新作アルバムから最も旬なアーティストであり、天才ベーシストThundercatの最新作『It Is What It Is』です。
黒人ドラマーRonald Bruner Sr.を父に、グラミー受賞歴を持つ敏腕ドラマーRonald Bruner Jr.を兄に持つ天才ベーシストであり、Flying Lotusの右腕としてBrainfeederを牽引するThundercat(本名Stephen Bruner)について、これまで当ブログで紹介してきたのは以下の3枚。
『The Golden Age of Apocalypse』(2011年)
『Apocalypse』(2013年)
『Drunk』(2017年)
従来にはないヴォーカル重視のメロディアスな新境地を示し、各方面で絶賛された3rdアルバム『Drunk』(2017年)。
4thアルバムとなる最新作『It Is What It Is』は、『Drunk』路線をさらに推し進めたヴォーカル重視&メロディアスな1枚に仕上がっています。
アルバム・タイトル"It Is What It Is"は、「仕方ないさ」「そういうものさ」という変わりようのない現実を、諦めの気持ちを込めて表現するフレーズです。
新型コロナウイルスの感染防止のため、ステイホームをせざるを得ない世界中の人々の気持ちともリンクするタイトルですね。
プロデュースはFlying LotusとThundercat。
アルバムにはLouis Cole(KNOWER)、Childish Gambino、The Internetの中核メンバーSteve Lacy、元SlaveのSteve Arrington、Zack Fox、Lil B、Ty Dolla $ign、ブラジルの才能あるギタリストPedro Martinsといったアーティストがフィーチャリングされています。
さらに国内盤ボーナス・トラックでは、Michael McDonaldがフィーチャリングされています。
それ以外にKamasi Washington、BadBadNotGood、Miguel Atwood-Ferguson、Sounwave、Mono/Poly、Dennis Hamm、Ronald Bruner Jr.、Brandon Coleman、Taylor Graves、Scott Kinsey等のミュージシャンが参加しています。
メロディアスな曲作り、メロウ・サウンド、ファルセット・ヴォーカルにさらに磨きがかかった内容で全編楽しませてくれます。
♪次、どうなるかなんて、はっきりわからない♪
♪でも大丈夫、こうやって呼吸している限りは大丈夫さ♪
全曲紹介しときやす。
「Lost In Space/Great Scott/22-26」
L.A.のプログレッシヴ・フュージョン・バンドTribal Techでの活動で知られるキーボード奏者Scott Kinseyとの共作。評論家はScott Kinsey経由で無理矢理Joe Zawinulに結び付けたがっていますが、Thundercat本人にそういった意図はないようです。キーボードとベース、ヴォーカルのみの演奏ですが、宇宙の失われた場所へのメッセージが本作の雰囲気をよく伝えてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=kNlDipE9E14
「Innerstellar Love」
「Lost In Space/Great Scott/22-26」から繋がっています。Kamasi Washingtonも参加したコズミック・フュージョン。Thundercatらしいベース・プレイも堪能できます。
https://www.youtube.com/watch?v=yA4R9qLa26E
「I Love Louis Cole」
KNOWERのLouis Coleをフィーチャー。Louis Cole主導で制作され、そこにThundercatのヴォーカル&ベースを乗っけたらしいです。ポップ職人であると同時に、L.A.ジャズ・シーンで腕を磨いてきたドラマーでもあるLouis Coleの個性を楽しめるアッパー・チューン。ポップ×ビートミュージックなさじ加減が絶妙です。
https://www.youtube.com/watch?v=YHTufn3VWq0
「Black Qualls」
Childish Gambino、The Internetの中核メンバーSteve Lacy、元SlaveのSteve Arringtonをフィーチャー。Steve Arringtonについては、親交のあったDam Funkに紹介してもらったようです。Steve Lacyについては、Thundercatの弟Kintaro(Jameel Bruner)が元The Internetメンバーだったので、その繋がりでしょう。この顔合わせならばファンク・チューンを期待しますが、その期待通りのメロウ・ファンクで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=_p7dXbDAXuQ
「Miguel's Happy Dance」
タイトルから予想できるように、Miguel Atwood-Fergusonのことを歌ったもの。Thundercatのファルセット・ヴォーカルが映えます。ドラム・プログラミングはFlying Lotus。
https://www.youtube.com/watch?v=_D_DGhBR7NA
「How Sway」
『Apocalypse』の頃のThundercatらしい超絶ベースを楽しめる1曲。歌詞には「Aye」「Yo」の二語しかありません。
https://www.youtube.com/watch?v=QwQeEmY1QxI
「Funny Thing」
『Drunk』からのメロウ路線に磨きがかった、ファルセット・ヴォーカル冴えまくるポップ・ダンス・チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=lSrKfSDwIi0
「Overseas」
Zack Foxをフィーチャー。メロディアスなドリーミー・ポップ。この曲のメロウネスも格別です。
https://www.youtube.com/watch?v=HE-2bO2I_es
「Dragonball Durag」
タイトルの通り、Thundercatの『ドラゴンボール』愛が反映された1曲。曲自体はメロウAOR的な仕上がりなので、そのギャップが楽しいかも?Kamasi Washingtonも参加しています。
https://www.youtube.com/watch?v=ormQQG2UhtQ
「How I Feel」
1分強のインタールード的な小曲。
https://www.youtube.com/watch?v=qIOMiQ3d80A
「King Of The Hill」
Brainfeederの10周年記念コンピ『Brainfeeder X』(2018年)にも収録されていた楽曲であり、カナダのジャズ・ユニットBadBadNotGoodとの共演です。メロウ路線を象徴するドリーミーな仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=VOVi-INLRWI
「Unrequited Love」
報われない愛の孤独感を切々と歌い上げます。ファルセット・ヴォーカルが似合う曲ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=eRo_FFrliAs
「Fair Chance」
Lil B/Ty Dolla $ignをフィーチャー。抑えたトーンの美しい演奏にラップが乗りますが、違和感なくいい雰囲気を醸し出してくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=IoFOXgIme9M
「Existential Dread」
1分に満たない曲ですが、♪次、どうなるかなんて、はっきりわからない♪でも大丈夫、こうやって呼吸している限りは大丈夫さ♪という歌詞は沁みてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=f728T_wocZ8
「It Is What It Is」
本編ラストはブラジル人ギタリストPedro Martinsをフィーチャーしたタイトル曲。ソングライティングも二人の共作です。メロディアスなヴォーカル入り前半と、♪Hey Mac♪と2018年9月に逝去したMac Millerへ呼びかけるインスト中心の後半との二部構成です。
https://www.youtube.com/watch?v=lqDs_quhy0I
「Bye For Now」
国内盤ボーナス・トラック。前作でも話題となったMichael McDonaldを再びフィーチャリング。二人の共演らしいAOR調メロウ・チューンに仕上がっています。この曲にも亡き友人Mac Millerへの想いが込められているようです。
https://www.youtube.com/watch?v=j35c7si8ztU
Thundercatの過去記事もご参照下さい。
『The Golden Age of Apocalypse』(2011年)
『Apocalypse』(2013年)
『Drunk』(2017年)