発表年:1974年
ez的ジャンル:ファミリー・ソウル・グループ
気分は... :大人の階段を上る…
今回は70年代ファミリー・ソウル作品からThe Sylvers『The Sylvers III』(1974年)です。
The Sylversは、テネシー州メンフィス出身のSylvers兄弟姉妹によるファミリー・グループ。
メンフィスからL.A.へ転居した後、Olympia Sylvers、Leon Sylvers III、Charmaine Sylvers、James J. Sylversという年長の兄姉4名でThe Little Angelsを名乗り、1960年にレコード・デビュー。
70年代に入ると弟のEdmund Sylvers、Ricky Sylversが加わり、The Sylversを名乗るようになります。
この6名体制で『The Sylvers』(1972年)、『The Sylvers II』(1973年)、『The Sylvers III』(1974年)という3枚のアルバムをリリースしています。
その間、年少の弟Foster Sylversが1973年にアルバム『Foster Sylvers』でソロ・デビュー。さらに翌年には年少の姉PatとAngieを従えた2ndソロ『Foster Sylvers Featuring Pat & Angie Sylvers』をリリースしています。
その後、この年少組3名がThe Sylversに加わり、グループは9名の兄弟姉妹体制となります。この9名体制で『Showcase』(1975年)をリリース。同作からディスコ路線のシングル「Boogie Fever」(USチャート、同R&Bチャート共に第1位)というグループ最大のヒットが生まれています。
次作『Something Special』(1976年)からも「Hot Line」(USチャート第5位、同R&Bチャート第3位)、「High School Dance」(USチャート第17位、同R&Bチャート第6位)といったディスコ路線のヒット曲が生まれました。
その後も『New Horizons』(1977年)、『Forever Yours』(1978年)、『Disco Fever』(1979年)、『Concept』(1981年)、『Bizarre』(1984年)とコンスタントにアルバムをリリースしています。
ただし『Something Special』以降は一作ごとに年長の兄姉が1人抜け、2人抜け、3人抜けとメンバーが減っていき、『Concept』(1981年)では5名体制となっていました。
Jackson 5/The Jacksonsの大成功には遠く及びませんが、同じ70年代を代表するファミリー・グループですね。また、兄弟の1人Leon Sylvers IIIは、グループ脱退後、80年代西海岸を代表するレーベルSolarの看板プロデューサーとして、Shalamar、Dynasty、The Whispers、Lakesideなどを手掛けたことでお馴染みですね。
さて、本作『The Sylvers III』(1974年)は、6名体制の前期The Sylversのラスト作となります。
前2作のアイドル路線とは少し異なった雰囲気のアルバムに仕上がっています。年下メンバーの変声期を経て、より大人のグループの雰囲気を醸し出すと同時に、ファンクネスを強調したグルーヴィー・サウンドが特徴の1枚に仕上がっています。
このように前2作と異なり、アイドル年少メンバーが加わり、一気にディスコ路線が開花する次作『Showcase』(1975年)以降とも異なる本作は、ヒットはしませんでしたが、他のThe Sylvers作品にはないSylversワールドを楽しめる1枚なのでは?
プロデュースはMichael VinerとPerry Botkin, Jr.。最強ブレイク・ビーツ「Apache」でお馴染みのThe Incredible Bongo Bandのコンビです。
リード・シングルにもなった「I Aim to Please」、疾走感が格好良い「Am I Truly Yours」といった本作らしいファンキー・グルーヴ、フリーソウル的なラブリー・メロウ・グルーヴ「Be My Love」大人のソウル・グループへの成長を感じさせるメロウ・バラード「Even This Shall Pass Away」、メロウ・ミディアム「Wish You Were Here」、ポップ・ソウルな「What's It All About」、「TCB」よいったあたりがおススメです。
本作でしか聴けないThe Sylversワールドを楽しみましょう。
全曲紹介しときやす。
「I Aim to Please」
Sharon Sylvers作。リード・シングルにもなったファンキー・グルーヴがオープニング。ワウワウ・ギターの不穏な響きとキレのあるホーン・サウンドが印象的な格好良い1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=wolGL8D8kTM
2 Live Crew「Hangin' Out」のサンプリング・ソースとなっています。
2 Live Crew「Hangin' Out」
https://www.youtube.com/watch?v=BIQaXs0w_MA
「Could Be You」
James Sylvers作。大人のソウル・グループへの成長を感じさせるミディアム・ソウル。ぐっと落ち着きが増しています。
https://www.youtube.com/watch?v=DpRugh4ewOE
「Wish You Were Here」
James Sylvers作。軽くパーカッシヴなメロウ・ミディアム。ヴォーカル・グループとしての成長を感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=QaJ8oadU4IE
「Don't Give Up the Good Life」
Shirley Sylvers作。アイドル路線の甘酸っぱさを残したメロウ・ミディアム・グルーヴ。これはこれで悪くありません。
https://www.youtube.com/watch?v=jMLE6_hbvq4
Statik Selektah feat. Lil' Fame「The Good Life (Give It Up)」、Von Pea「Good Life」、Peedi Crakk「Good Life」等のサンプリング・ソースとなっています。
Statik Selektah feat. Lil' Fame「The Good Life (Give It Up)」
https://www.youtube.com/watch?v=L3bWv1CweZI
Von Pea「Good Life」
https://www.youtube.com/watch?v=4LOPFqjMZ6s
Peedi Crakk「Good Life」
https://www.youtube.com/watch?v=Os90XP18aNw
「Even This Shall Pass Away」
Leon Sylvers III作。素敵なメロウ・バラード。大人のソウル・グループとなったThe Sylversを満喫できます。
https://www.youtube.com/watch?v=-y6znGvNPLY
9th Wonder & Buckshot「No Future」
Constrobuz「High Context Culture」のサンプリング・ソースとなっています。
9th Wonder & Buckshot「No Future」
https://www.youtube.com/watch?v=hNQqTqJ35NI
Constrobuz「High Context Culture」
https://www.youtube.com/watch?v=CCRp6d_5Tqo
「Am I Truly Yours」
Leon Sylvers III作。本作らしい疾走感が格好良いファンキー・グルーヴ。粗削りなEW&Fといった感じのキャッチーさがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=RiiA6nbpbKc
「Be My Love」
Sharon Sylvers作。Charmaineのリード・ヴォーカルが映えるラブリーなメロウ・グルーヴ。フリーソウル好きの人が気に入る1曲なのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=D0PPDlWp7XY
「Love Over Mind」
Dana Marshall作。メロウ・バラードですが、この曲に関しては、大人のグループになろうと少し背伸びしている感じの青臭さがありますね。
https://www.youtube.com/watch?v=IyIg-q6-KJo
「What's It All About」
Shirley Sylvers作。大人のポップ・ソウル感がいいですね。このタイトル、メロディから有名なBurt Bacharach/Hal David作品「Alfie」をイメージするのは僕だけでしょうか?
https://www.youtube.com/watch?v=KyRQ7xmnnzQ
Boogie Down Productions「Drug Dealer」、スチャダラパー「ドゥビドゥWhat?」のサンプリング・ソースとなっています。
Boogie Down Productions「Drug Dealer」
https://www.youtube.com/watch?v=R1mURlYs-2Y
「TCB」
Sharon Sylvers/Shirley Sylvers作。ラストはヤング・グループらしい初々しさの残るファンキーなポップ・ソウルで締め括ってくれます。Ugly Duckling「Lay It on Ya」のサンプリング・ソースとなっています。
https://www.youtube.com/watch?v=zh0bCpEi_BA
The Sylversの他作品もチェックを!
『The Sylvers』(1972年)
『The Sylvers II』(1973年)
Foster Sylvers『Foster Sylvers』(1973年)
『Showcase/New Horizons』(1975/1977年) ※2in1CD
『Concept』(1981年)