2020年05月03日

Kassa Overall『I Think I'm Good』

ハイブリッドでメランコリックな次世代ジャズ☆Kassa Overall『I Think I'm Good』

発表年:2020年
ez的ジャンル:ハイブリッド&メランコリック系次世代ジャズ
気分は... :無分別の音世界...

新作ジャズからKassa Overall『I Think I'm Good』です。

Kassa OverallはN.Y.を拠点とするジャズ・ミュージシャン、MC、シンガー、プロデューサー、ドラマー。育ったのはシアトルのようですね。

自らを"バックパック・ジャズ"と称するように、ジャズ・ドラマーでありながら、MC、ビートメイクなどジャンル、スタイルに囚われない身軽な音楽活動を信条としているようです。

そんな彼の才能はArto LindsayRoy Hargroveらからも高く評価されています。

これまで女性シンガーTeclaとのユニットToothpaste名義でのToothpaste/Tecla + Kassa『1996』(2012年)、Peter EvansJohn Hebertとの共同名義アルバムPeter Evans, Kassa Overall, John Hebert『Zebulon』(2013年)、さらにはRoy HargroveArto LindsayTheo CrokerCarmen LundyJudi Jacksonらをフィーチャリングした『Go Get Ice Cream And Listen To Jazz』(2019年)といったアルバムをリリースしています。

そんなKassa OverallGilles PetersonBrownswood Recordingsからリリースした最新作が『I Think I'm Good』です。

昨今の次世代ジャズ・ドラマーと同じく、ビートメイカーとしての才を兼ね備えているジャズ・ミュージシャンですね。

前作『Go Get Ice Cream And Listen To Jazz』におけるジャズ×Hip-Hopのハイブリッド・アプローチをさらに推し進めたのが本作『I Think I'm Good』です。

本人曰く、前作『Go Get Ice Cream And Listen To Jazz』A Tribe Called Quest(ATCQ)Nas、本作『I Think I'm Good』Dr. DreSnoop Dogg2Pacなのだとか。実際に聴くと、この喩えはあまりピンと来ませんが・・・

アルバムにはTheo Croker(flh)、Aaron Parks(p、syn)、Vijay Iyer(el-p)、Joel Ross(vibe)、Sullivan Fortner(p)、Carlos Overall(ts)、J Hoard(vo)、Melanie Charles(vo)、Angela Davis(vo)といったアーティストがフィーチャリングされています。

それ以外にBrandee Younger(harp)、BIGYUKI(syn)、Rafiq Bhatia(g)、Stephan Crump(b)、Joe Dyson(ds)、Mike King(syn)、Morgan Guerin(clarinet、sax、ds、b)、Jay Gandhi(bansuri)等のミュージシャンが参加しています。

プロデュースはKassa Overall自身。
「Show Me A Prison」以外はKassaのオリジナルです。

聴く前は、もっと次世代ジャズ・ドラマー、Hip-Hopトラックメイカーの色を強く出している作品をイメージしていましたが、実際聴くと、かなり違った印象でした。

ジャズ・ドラマーという肩書やジャンルの枠に囚われないジャズ、Hip-Hop、R&B、エレクトロニカ等を飲み込んだハイブリッドなサウンドと、メランコリックな音世界を貫徹した構成に少なからず驚かされました。

一応、ジャズ・ミュージシャンという本籍を持ちながらも、一か所に定住せずバックパッカー的な活動をした結果、住所を持たず生きていく(ジャンルを意識せず音楽する)スタイルに行き着いたのでしょうね。

実験的・抽象的で必ずしも聴きやすいアルバムではないし、派手さもないですが、興味を持って聴けば、静かなるインパクトを楽しめると思います。

こういった作品がBrownswoodからリリースというのも興味深いですね。

次世代ミュージシャンらしい無分別の音世界を楽しみましょう。

全曲紹介しときやす。

「Visible Walls」
ジャズ・ドラマー作品にも関わらず、いきなりビートレスのオープニング。浮遊するシンセをバックに、Brandee Youngerの美しいハープ、Jay Gandhiの生命の息吹のようなバンスリー、Kassaの素朴なヴォーカル等が織りなす静寂の音世界が展開されます。
https://www.youtube.com/watch?v=Py_TEyuSwO8

「Please Don't Kill Me」
Joel Ross、Theo Crokerをフィーチャー。ヴァイヴ、フリューゲルホーン、ハープ、ピアノ、シンセ、ベース、ドラム、そしてKassaのヴォーカルによる美しい演奏が転回されます。片隅の小さな美しさといった雰囲気があります。
https://www.youtube.com/watch?v=nx9FX86nK8I

「Find Me」
J Hoardをフィーチャー。エフェクトを駆使した前衛的な新世代ジャズに仕上がっています。ビジュアルとセットで聴きたい音ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=pGiwrT_gxM0

「I Know You See Me」
J Hoard、Melanie Charlesをフィーチャー。BIGYUKIも参加。Kassaのビートメイカー&次世代ジャズ・ドラマーのセンスを感じる1曲。メロトロンの不協和音のような響きも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=zZVx1_BvRZE

「Sleeping On The Train」
ドラム、ピアノ、バンスリーによる1分強の小曲。でも雰囲気が実にいいです。バンスリーの響きに癒されます。
https://www.youtube.com/watch?v=umIlueSIo_A

「Show Me A Prison」
J Hoard & Angela Davisをフィーチャー。60年代に活躍したUSフォーク・シンガーPhil Ochs作品のカヴァーです。意外なセレクトですね。R&B寄りのメランコリックでハイブリッドな音世界を楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=dPUp2_kX-8g

「Halfway House」
ピアノ、ベース、ドラム、メロトロンをバックにKassaが寂しげに歌う哀愁R&B。
https://www.youtube.com/watch?v=9mN6xbgOhTU

「Landline」
Carlos Overall(多分、Kassaの兄弟)をフィーチャー。ドラム、テナー・サックスのによる兄弟セッション。
https://www.youtube.com/watch?v=BSkwW_I_zTc

「Darkness In Mind」
Sullivan Fortnerのピアノをフィーチャー。タイトル通り、心の闇を美しも悲しげな演奏で聴かせます。Kassaのドラムによるアクセントが心の葛藤を表現しているのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=TqygxaZxDdw

「The Best Of Life」
Aaron Parksのピアノ、シンセをフィーチャー。ハイブリッドでダンサブルな哀愁R&B。途中、Kassaがラップも披露してくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=wgXaSVwvaNo

「Got Me A Plan」
シンプルなバックによるR&B調の仕上がり。ローファイ感覚の音作りが今どきなのかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=bP9ygvwJ260

「Was She Happy (For Geri Allen)」
Vijay Iyerをエレピをフィーチャー。本編ラストはドラム、エレピのみの音像的な哀愁サウンドで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=ZZqY2h9sTYI

国内盤CDにはボーナス・トラック「Free Morgan」が追加収録されています。
posted by ez at 02:50| Comment(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする