2020年09月30日

Kruder & Dorfmeister『G-Stoned』

ウィーンのジャジー・ダウンテンポ・デュオ☆Kruder & Dorfmeister『G-Stoned』

発表年:1993年
ez的ジャンル:ウィーン産ジャジー・ダウンテンポ/トリップホップ
気分は... :『Bookends』よく聴いたなぁ・・・

今回はウィーン産ジャジー・ダウンテンポ、Kruder & Dorfmeister『G-Stoned』(1993年)です。

Kruder & Dorfmeisterは、Peter KruderRichard Dorfmeisterというオーストラリア、ウィーン出身の2人が結成したユニット。

本作『G-Stoned』(1993年)は彼らのデビューEPとなります。

彼らは『Conversions: A K&D Selection』(1996年)、『DJ-Kicks: Kruder & Dorfmeister』(1996年)等の DJミックス・アルバムもリリースしています。

Richard Dorfmeisterは、Rupert HuberとのユニットToscaや、Roland AppelChristian PrommerというTruby TrioおよびFauna Flashのメンバー2人と組んだユニットVoom : Voomとしても作品をリリースしています。

一方、Peter Kruderはソロ・プロジェクトPeace Orchestra名義でも作品をリリースしています。

本作といえば、Simon & Garfunkel『Bookends』(1968年)を模したジャケが印象的ですよね。僕も音以前にこのジャケで手元に欲しいと思っていた作品です。

Simon & Garfunkel『Bookends』(1968年)


当ブログではSimon & Garfunkel(S&G)を取り上げたことは一度もありませんが、学生の頃はかなり聴いていました。特に『Bookends』は好きなアルバムでしたね。

そのため、本作のジャケを目にしたとき、かなり興奮した記憶があります。まぁ、Simon & GarfunkelKruder & Dorfmeisterとではリスナー層が全く異なるのでS&Gの良さを力説したところでピンと来ないかもしれませんが・・・

そんなジャケ先行のイメージも強い本作ですが、内容的にも当時としては斬新なジャズ・ブレイク/ダウンテンポとしてシーンに大きなインパクトを残した1枚です。

特にジャズとトリップ・ホップを新結合させたあたりに彼らのセンスの良さを感じます。

人気トラック「High Noon」をはじめ、今聴いてもまったく飽きのこない全4トラックです。

静かなる音の新結合(イノベーション)をご堪能あれ!

全曲紹介しときやす。

「Definition」
フルート、ピアノ、ヴァイヴの音色が心地好いジャズ・ブレイク。クラブジャズの登場を予感させるブレイクビーツですね。
https://www.youtube.com/watch?v=_Ora8MYUieo

「Deep Shit (Pt. 1 and 2)」
Lafayette Afro Rock Band「Azeta」ネタのムーグ・ベースの不気味な響きは印象的なジャジー・トリップ・ホップ。Akido「Awade (We Have Come)」、Herbie Hancock「You'll Know When You Get There」、Skull Snaps「It's a New Day」のサンプリングも散りばめられています。トリップ・ホップをジャズの切り口から提示したトラックに静かなる衝撃を感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=Sd0rdkVoH80

「High Noon」
本作の中でも特に人気の高いトラックですね。ブルース・ハープの音色が印象的なジャジー・ダウンテンポ。クラブジャズを先取りしたような彼らのセンスに脱帽です。The Doobie Brothers「Here to Love You」のドラム、Elvis Presley「Blue Moon」のヴォーカル、Giorgio Moroder「Too Hot to Handle」のサウンド・エフェクトといったネタも散りばめられています。
https://www.youtube.com/watch?v=OTZOqeDtb10

「Original Bedroom Rockers」
Bob James「Nautilus」、Bill Withers「Kissing My Love」をサンプリングしたベッドルーム・ダウンテンポ。官能系トリップ・ホップとでも形容したくなります。
https://www.youtube.com/watch?v=PLNCKAIkYn8

ご興味がある方はToscaVoom : VoomPeace Orchestraのアルバムもチェックを!

Tosca『Opera』(1997年)


Tosca『Suzuki』(2000年)


Tosca『Dehli9』(2003年)


Tosca『J.A.C.』(2005年)


Tosca『No Hassle』(2009年)


Tosca『Odeon』(2013年)


Tosca『Outta Here』(2014年)


Tosca『Going Going Going』(2017年)


Voom : Voom『Peng Peng』(2006年)


Peace Orchestra『Peace Orchestra』(1999年)
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2020年09月29日

Van McCoy『Soul Improvisations』

「The Hustle」とは異なるスウィート・ソウルな1枚☆Van McCoy『Soul Improvisations』

発表年:1972年
ez的ジャンル:名プロデューサー/ソングライター系スウィート・ソウル
気分は... :反観合一・・・

今回はディスコ・クラシック「The Hustle」の大ヒットで知られるソウル・アーティストVan McCoy『Soul Improvisations』(1972年)です。

Van McCoy(1940-1979年)はワシントンD.C.生まれのソウル・シンガー/プロデューサー/ソングライター。

1950年代からドゥーワップ・グループでレコーディングを経験し、60年代にはソングライター/プロデューサーとして活躍するようなります。また、自身の名義によるシングルもコンスタントにリリースしています。

1975年にはUSチャート第1位となったディスコ・クラシック「The Hustle」の大ヒットで、音楽シーンにその名を轟かせました。時期を同じくしてプロデューサーとしての手腕も発揮し、当ブログでも紹介したFaith Hope & CharityMelba Mooreのプロデュースをはじめ、David RuffinGladys Knight & the PipsAretha FranklinThelma HoustonStacy LattisawZulema等のアーテイストの作品を手掛けています。

1979年に心臓発作による急逝(享年39歳)。

どうしても大ヒットした「The Hustle」のイメージでディスコ・アーティストのイメージが強いVan McCoyですが、元々は60年代ソウル作品のソングライティング/プロデュースで実績を積んできた人です。

その意味で今回紹介する『Soul Improvisations』(1972年)はスウィート・ソウルなVan McCoyを楽しめる1枚です。

本作は1972年にBuddah Recordsから全12曲入りでリリースされたものです。「The Hustle」の大ヒットに便乗したBuddahが1975年に『From Disco to Love』のタイトルで再リリースしますが、こちらは収録曲が9曲に減っています。

プロデュース/ソングライティングはVan McCoyJoe Cobb

Van McCoy(vo、p、el-p)以下、Gordon Edwards(b)、Jimmy Johnson(ds)、David Spinozza(g)、Vinnie Bell(g、sitar)、Frank Owens(org、p、el-p)、Ralph MacDonald(congas)等のミュージシャンが参加しています。

アルバム全編を通して、曲作りの良さが目立ちます。ヴォーカルもサウンドもやり過ぎない感じが僕好みです。

シングルにもなった「I'm In Love With You Baby」「Let Me Down Easy」、グッド・ヴァイヴに溢れた「So Many Mountains」、エヴァーグリーンな魅力がある「I Would Love To Love You」、ファンキー・ソウル・グルーヴ「I Get Lovin' On My Mind」、60年代テイストの「Don't Hang Me Up」、ディスコ前夜のファンキー・グルーヴ「Soul Improvisations Part 1&2」あたりが僕のおススメです。

スウィート・ソウルなVan McCoyを満喫しましょう。

全曲紹介しときやす。

「I'm In Love With You Baby」
シングルにもなったオープニング。60年代テイストを残したファルセット・ヴォーカルが似合うミディアム・ソウル・バラード。
https://www.youtube.com/watch?v=eyr-8oSgDL4

「Don't Hang Me Up」
これも60年代テイストのダンサブル・チューン。ポップでグルーヴィーな感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=4M-P_l-m-uI

「Let Me Down Easy」
シングルにもなったスウィート・バラード。曲作りの良さとマイルドなヴォーカルと素敵な甘味ワールドを生み出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=6mKduINcMsY

Dennis Brown、Derrick Harriottといったレゲエ・アーティストがカヴァーしています。
Dennis Brown「Let Me Down Easy」
 https://www.youtube.com/watch?v=AbIFxcWkMy8
Derrick Harriott「Let Me Down Easy」
 https://www.youtube.com/watch?v=Qs7Fnr0c1Ng

「Just In Case」
この曲もプロデューサー/ソングライターとしての才を感じる素敵なソウル・バラードに仕上がっています。やり過ぎない塩梅がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=QnL6iphcSHc

「Now That You're Gone」
甘酸っぱいムードにグッとくるソウル・バラード。ジェントルな語り口のヴォーカルがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=PNtooGhgmXw

「Soul Improvisations Part 1」
ファンキーに躍動するストリングス入りのインスト。ディスコ前夜のファンキー・グルーヴといった雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=WoxuHQQc8Ec

「Don't Rock The Boat」
効果音入りのビューティフル・バラードですが、逆に効果音が邪魔かも?
https://www.youtube.com/watch?v=58v_GhLG0Ps

「So Many Mountains」
この曲大好き!グッド・ヴァイヴに溢れたミディアム・グルーヴ。キャッチーなコーラスも含めてシングル向きの1曲という気がします。
https://www.youtube.com/watch?v=ldIvhGAUgJE

「I Would Love To Love You」
ソングライティングの巧みさが冴えるミディアム・ソウル。初めて聴くのに懐かしく感じるエヴァーグリーンな魅力があります。
https://www.youtube.com/watch?v=a0uLnxq38fE

「I Get Lovin' On My Mind」
ファンキー・オルガンとホーン・サウンドが印象的なソウル・グルーヴ。ポジティブな雰囲気がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=OAmqJZedusE

「He Who Hath Ears To Hear (Let Him Hear)」
ドラマのエンディング・テーマのようなストリングス入りの感動バラード。クラシックのエッセンスも感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=kf7z6FchGr0

「Soul Improvisations Part 2」
ラストは「Soul Improvisations」のパート2で締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=-fUysKsPV_A

Van McCoyの多作品もチェックを!

Van McCoy & The Soul City Symphony『Disco Baby』(1975年)


『The Disco Kid』(1975年)


『Rhythms of the World』(1976年)


『The Real McCoy』(1976年)


『Ultimate Collection with bonus』(1999年) ※日本限定ベスト盤
posted by ez at 05:26| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月28日

Steve Miller Band『Children Of The Future』

サイケでブルースなデビュー・アルバム☆Steve Miller Band『Children Of The Future』

発表年:1968年
ez的ジャンル:サイケデリック・ロック/ブルース・ロック
気分は... :サイケ?ブルース?

今回はSteve Miller Bandのデビュー・アルバム『Children Of The Future』(1968年)です。

リーダーSteve Millerを中心にサンフランシスコで結成されたロック・グループSteve Miller Bandの紹介は、2ndアルバム『Sailor』(1968年)に続き2回目となります。

コロナ禍でCDショップに全く行っていない影響もあって、この半年間、久々にロックを聴く機会が増えています。家のCD棚からしばらく聴いていなかったアルバムたちを引っ張り出し、懐かしさと以前は気づかなかった新たな発見を楽しんでいます。

本作Steve Miller Band『Children Of The Future』(1968年)もそんな1枚です。

1967年6月のモントレー・ポップ・フェスティバルへの出演で注目を浴び、
Capitolとの契約に成功し、デビューのチャンスを得たSteve Miller Band

本作はロンドン録音ですが、まだ何の実績もない新人アーテイストをロンドンへ送り込むあたりにレコード会社の期待を感じます。

プロデュースはGlyn Johns

本作におけるメンバーはSteve Miller(g、vo、harmonica)、Boz Scaggs(g、vo)、Lonnie Turner(b、back vo)、Jim Peterman(org、mellotron、back vo)、Tim Davis(ds、back vo)。

また、次作からバンドに参加するBen Sidranも1曲レコーディングに参加しています。

オリジナルLPのA面がサイケデリック・ロック、B面がブルース・ロックというように両面でかなり違った表情を見せるアルバムです。

サイケなA面がこの時代らしいのかもしれませんが、個人的にはブルース・ロックなB面の方が好きです。

Boz Scaggs作の「Steppin' Stone」「Baby's Callin' Me Home」、ブルース・ロックにサイケなエッセンスも加わった「Roll With It」、R&Bテイストのグルーヴィー・ロック「Junior Saw It Happen」The Beatlesの影響が強いサイケ・チューン「Children of the Future」あたりが僕のおススメです。

サイケでブルースなデビュー・アルバムをお楽しみください。

全曲紹介しときやす。

「Children of the Future」
Steve Miller作。タイトル曲はサイケデリックなストレンジ・ポップ。The Beatles『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』、『Magical Mystery Tour』の影響を強く感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=YQCog4hqS8A

「Pushed Me to It」
Steve Miller作。40秒に満たない小曲ですが、なかなかキャッチー&ポップなサイケ・ロックに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=YF7MRal3xPA

「You've Got the Power」
Steve Miller作。こちらも1分に満たない小曲。「Pushed Me to It」とセットで1曲といった感じですね。オルガンの音色が効いたグルーヴィー・ロックはもっと長尺で聴きたいです。
https://www.youtube.com/watch?v=DoNIdcnXwiY

「In My First Mind」
Steve Miller/Jim Peterman作。打って変わって7分半の長尺。スケールの大きなサイケ・ロックは60年代後半らしいムードにどっぷり浸ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=LCkA8Evrj-0

「The Beauty of Time Is That It's Snowing (Psychedelic B.B.)」
Steve Miller作。ある意味このバンドらしいサイケ×ブルースなサイケ・チューン。ミサのようなコーラスワークも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=akZvjhs-HzU

ここまでがオリジナルLPのA面。

「Baby's Callin' Me Home」
Boz Scaggs作。Ben Sidranがハープシコードで参加。60年代後半らしい雰囲気のアコースティック・ブルースです。
https://www.youtube.com/watch?v=9cK--Mt5iKE

Abner Burnett、S. S. Foolsがカヴァーしています。
Abner Burnett「Baby's Callin' Me Home」
 https://www.youtube.com/watch?v=FCyX6o4Gr20
S. S. Fools「Baby's Callin' Me Home」
 https://www.youtube.com/watch?v=BMIvwe1Mizc

「Steppin' Stone」
Boz Scaggs作。本来のバンドの姿に近いドライヴ感のあるブルース・ロック。アルバムで一番のお気に入り。
https://www.youtube.com/watch?v=rtX89g1beUg

「Roll With It」
Steve Miller作。基本はグルーヴィーなブルース・ロックですが、ヴォーカルワーク、サイケなエッセンスも加わり、この時代ならではの1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=-omYFB3qL7o

「Junior Saw It Happen」
The Disciples、1966年のシングルB面曲をカヴァー(Jim Pulte作)。R&Bテイストのグルーヴィー・ロックはなかなか格好良いです。
https://www.youtube.com/watch?v=vmkUaskSjaQ

「Fanny Mae」
Buster Brown、1960年のシングル曲をカヴァー(Buster Brown作)。Steveのハーモニカも効かせたオーソドックスなブルース・ロックで聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=NsXntdGtrA0

Mad Kap feat. Daddy Freddy「Phuck What Ya Heard (Thoughts on the Indoe From Joe)」がサンプリングしています。
Mad Kap feat. Daddy Freddy「Phuck What Ya Heard (Thoughts on the Indoe From Joe)」
 https://www.youtube.com/watch?v=PnLpyV74ON8

「Key to the Highway」
Derek & The Dominosヴァージョンでお馴染みのブルース・スタンダードをカヴァー。オリジナルはブルース・ピアニストCharlie Segar。Derek & The Dominosのイメージが強い曲なので、それと比較すると地味な印象ですが、逆にシブさがあっていいかも?
https://www.youtube.com/watch?v=41Y3IGO3MpE

Steve Miller Bandの他作品もチェックを!

『Sailor』(1968年)


『Brave New World』(1969年)


『Your Saving Grace』(1969年)


『Number 5』(1970年)


『Rock Love』(1971年)


『Recall the Beginning ... A Journey From Eden』(1972年)


『The Joker』(1973年)


『Fly Like an Eagle』(1976年)


『Book of Dreams』(1977年)


『Circle of Love』(1981年)


『Abracadabra』(1982年)


『Italian X Rays』(1984年)


『Living in the 20th Century』(1986年)
posted by ez at 02:25| Comment(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月27日

Flavia K『Janelas Imprevisiveis』

ブラジリアン・ネオソウルの新星☆Flavia K『Janelas Imprevisiveis』
flavia k janelas imprevisiveis.jpg
発表年:2020年
ez的ジャンル:ブラジリアン・ネオソウル
気分は... :グルテン・フリー・・・

今回はブラジリアン・ネオソウルの新星のデビュー・アルバムFlavia K『Janelas Imprevisiveis』です。

2019年サブスクとしてリリースされ、最近になり日本で世界初CD化が実現しました。

Flavia Kは1996年サンパウロ州サン・カエターノ・ド・スル生まれの女性シンガー/ピアニスト/コンポーザー。

幼い頃からジャズ、ソウル、ファンク、ボサノヴァに親しみ、クラシック・ピアノとジャズ・ピアノを学んでいました。

18歳となった2014年にEd Motta等をゲストに迎えた4曲入りEP「Tudo o que Soul」をリリースしています。

そして2019年に入念な準備を経てデビュー・アルバムとなる本作『Janelas Imprevisiveis』をリリースしています。

日本では、鎌倉の人気カフェ、ヴィヴモン・ディモンシュのオーナー兼マスター堀内隆志氏がコンパイルしたコンピ・アルバム『鎌倉のカフェから〜café vivement Dimanche 25th Anniversary』(2019年)に本作収録の「Sem Gluten」がセレクトされたことで注目されるようになり、その流れで『Janelas Imprevisiveis』のCD化が実現しました。

プロデュースはサンパウロのHip-Hopシーンで活動するベーシストJulio Mossil

楽曲はすべてFlavia Kのオリジナル(共作含む)。多くの曲で彼女の母Anete Kが作詞を担当しています。

アルバムには大ベテランRoberto Menescal(g)をはじめ、Marcellus Meirelles(g)、Slim Rimografia(rap)といったアーティストがフィーチャリングされています。

それ以外にVander Carneiro(ds)、Sidiel Vieira(b)、Leandro Cabral(p)等のミュージシャンがレコーディングに参加しています。Leandro Cabralは自身のピアノ・トリオ作品もリリースしているジャズ・ピアニストです。

2000年代前半のネオフィリーあたりに通じるジャジー・ソウルとブラジリアン・メロウ・ジャズ、MPBあたりがナチュラルに融合している雰囲気のアルバムです。

前述のコンピ『鎌倉のカフェから〜』収録の「Sem Gluten」Roberto Menescalをフィーチャーした「Cancao do Sol」、Marcellus Meirellesをフィーチャーした「Se Pa Tum Dere」、Slim Rimografiaをフィーチャーしたハイパー&メロウHip-Hop「Atelier do Silencio」、ブラジリアン・ネオソウルな「Plural」、Leandro Cabralのトリオとの共演「Janelas Imprevisiveis」あたりが僕のおススメです。

ネオソウルという部分をあまり気にしないで、ブラジルの新星女性アーティストとして楽しめばいいと思います。

全曲紹介しときやす。

「Neon」
ブラジル人アーティストらしい雰囲気のジャジー・ポップがオープニング。ミュート・トランペットのアクセントがいい感じのミディアムです。
https://www.youtube.com/watch?v=eeyA6KKgjeQ

「Sem Gluten」
前述のコンピ『鎌倉のカフェから〜』に収録されていた楽曲。タイトルは「グルテン・フリー」という意味。若い女性アーティストらしいですね。ブラジリアン・ネオソウルの雰囲気を楽しめるジャジー・ソウルです。
https://www.youtube.com/watch?v=JCjtKhfVVSw

「Janelas Imprevisiveis」
タイトル曲はLeandro Cabralのトリオとの共演によるメロウ・ミディアム。メロウ・エレピの心地好い響きが、初々しいFlavia Kのヴォーカルを引き立てます。
https://www.youtube.com/watch?v=SPksY_FbX90

「Cancao do Sol」
レジェンド・ボサノヴァ・ギタリストRoberto Menescalをフィーチャー。ボサノヴァではありませんが、ブラジリアン・メロウ好きならば大満足の素敵なアコースティック・メロウに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=U8Nj7ghLovA

「Contramao」
このトラックもLeandro Cabralのピアノ・トリオとの共演。ここではFlavia Kがエレピを弾いています。ジャズ・フィーリングのミディアム・バラードをしっとりと歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=eTdns1DAP8s

「Se Pa Tum Dere」
Marcellus Meirellesをフィーチャー。Flavia Kの素晴らしい多重録音コーラスとMarcellus Meirellesの絶品ギターが織り成すビューティフル・トラック。2分に満たないトラックですが、もっと長い尺で聴きたいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=KWm5iSB1eBU

「Tom」
ブラジリアン・ネオソウルなメロウ・ミディアム。2000年代前半のネオフィリーあたりと一緒に聴いてもフィットするのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=wZtwWlZevYI

「Plural」
このトラックもネオソウルなメロウ・ミディアム・グルーヴ。Flavia Kのヴォーカルもバッキングも肩の力が抜けている感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=TbIc5mgRY3c

「Atelier do Silencio」
20年のキャリアを誇るブラジルのHip-HopアーテイストSlim Rimografiaをフィーチャー。メロウでハイパーなHip-Hopトラックはかなり刺激的です。Flavia Kらしくはないのかもしれませんが・・・
https://www.youtube.com/watch?v=rYTY84sxHmo

「Atras do Vidro」
ラストはメロウなジャジー・ソウルで締め括ってくれます。ロッキンなギターがいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=mlO2SQSS0Q0

『鎌倉のカフェから〜café vivement Dimanche 25th Anniversary』(2019年)
posted by ez at 01:37| Comment(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月26日

Ry Cooder『Jazz』

ジャズを探求した異色作☆Ry Cooder『Jazz』

発表年:1978年
ez的ジャンル:ルーツ音楽探求系ジャズ
気分は... :ドルフィンズ初勝利!

コロナ禍で開幕したNFLですが、わがマイアミ・ドルフィンズが第3週にしてようやく今季初勝利!内容的にも良かった試合を生放送のTV中継で観ることができ、スカッとしました。

さて、ルーツ・ミュージックの探求者Ry Cooder、1978年リリースのアルバム『Jazz』です。

1947年カリフォルニア州ロサンゼルス生まれのギタリスト/シンガーRy Cooderの紹介は、テックス・メックス、ハワイアン・ミュージックにアプローチした『Chicken Skin Music』(1976年)に続き2回目となります。

約11年ぶりのRy Cooderの紹介です。

スライド・ギターの名手としても知られ、Taj MahalThe Rolling Stones等にもレコーディングに参加していたRy Cooder

『Paradise and Lunch』(1974年)以降はさらに幅広い音楽を探求し、テックス・メックス、ハワイアン、ジャズ、R&B/ソウル等にアプローチしていった。また、80年代に入るとWim Wenders監督作品など映画音楽を積極的に手掛けました。

また、1997年にキューバのベテラン・ミュージシャン達と制作したアルバム『Buena Vista Social Club』は、空前のアフロ・キューバン・ミュージックのブームを巻き起こしました。本作をベースとした映画(Wim Wenders監督『Buena Vista Social Club』)も大ヒットしましたね。

11年前のエントリーでも書きましたが、僕にとってのRy Cooderは作品単位で好き/嫌いがガラッと変わり、なかなか自分自身でも評価が難しいアーテイストです。ただし、流行とは全く無縁のアーティストなので、好きな作品とはずっと付き合える良さはありますね。

Ryの膨大な作品群の中で僕のお気に入りの1枚が本作『Jazz』(1978年)です。

タイトルの通り、ジャズにアプローチした作品ですが、Ry Cooderにしか生み出せない1920〜30年代風のノスタルジックなジャズ・ワールドを楽しめます。
直球勝負のジャズではなく、ジャズと影響し合ったヴォードヴィルや中南米音楽のエッセンスを介して、ジャズの本質を炙り出しているところが、ルーツ・ミュージックの探求者Ry Cooderらしいのでは?

プロデュースはRy CooderJoseph Byrd

レコーディングにはDavid Lindley(mandobanjo、mandolin)、Jimmy AdamsCliff GivensTom Collierというコーラス・グループGolden Gate Quartetのメンバー3名、Earl Hines(p)、George Bohano(bs)、Red Callender(tuba)、Chuck Domanico(b)、Harvey Pittel (as、clarinet)、Mark Stevens(ds)、John Rodby (p)、Randy Aldcroft(tb)、Tom Collier(marimba、vibes)等のミュージシャンも参加しています。

好きなアルバムでしたが、1曲単位で聴くというより、全体の流れで聴いてきたことが多かったのですが、今回記事を書くにあたり曲単位に着目して聴くと、以前は気づかなった魅力を再発見できました。

アルバムは大きく4タイプの演奏に分けられます。

まずバハマ出身のギタリストJoseph Spenceのレパートリーであったトラディショナルのカヴァー3曲。ニューオリンズ・ジャズとバハマの繋がりを感じさせます。Joseph Spenceの独自の音楽/ギター・スタイルもRyを刺激したのではないかと思います。

2番目は「The Pearls/Tia Juana」「The Dream」で聴かれるタンゴ/ハバネラのエッセンス。スペインやメキシコの香りもあります。

3番目はヴォードヴィル・ソングのカヴァー3曲。ノスタルジックだけは片付けられないものを示唆しているように思います。

最後は1920年代に活躍したコルネット奏者Bix Beiderbeckeのカヴァー3曲。不思議なムードを醸し出すサロン・ジャズに魅了されます。

他では聴けない、Ry Cooderならではのジャズ・ワールドをご堪能あれ!

全曲紹介しときやす。

「Big Bad Bill (Is Sweet William Now)」
Milton Ager/Jack Yellen作。1924年に書かれた曲。軽やかなヴォードヴィル調のノスタルジック・サウンドに乗って、Ryが楽しげなヴォーカルを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=jCRCRicNLhQ

「Face to Face That I Shall Meet Him」
バハマ出身のギタリストJoseph Spenceのレパートリーであったトラディショナルのカヴァーその1。多分、元々は讃美歌のような曲だったものを彼独特のギター・スタイルで演奏するのが得意だったようです。本ヴァージョンも、そんなSpenceのスタイルを取り入れた古いブラス・バンド風の演奏に仕上がっています。少し寂しげな感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=2UCeEq67_dY

「The Pearls/Tia Juana」
ジャズ・ピアニスト、Jelly Roll Mortonの楽曲のメドレー。Ryがギター、マンドリン、ティプレ、ハープを多重録音しています。ニューオリンズ・ジャズにカリブ、スペイン、メキシコのエッセンスが加わったRyならではのジャズを楽しめます。個人的にはRy Cooderを知る以前からこの曲には馴染みがありました。いつも聴いていた夜のラジオ番組のエンディング・テーマだったのですが・・・番組名が思い出せずモヤモヤしています。
https://www.youtube.com/watch?v=FsTIKp_8_ME

「The Dream」
Jack the Bear/Jess Pickett作。20〜30年代ジャズをリアルに演奏してきたピアニストEarl Hinesをゲストに迎えています。タンゴ/ハバネラのエッセンスやマリンバのアクセントも加わったラグタイム調の演奏ですが、Ryの南部テイスト・ギターが加わるジャズっぽくなくなるのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=fd7p5_YkbLA

「Happy Meeting in Glory」
バハマ出身のギタリストJoseph Spenceのレパートリーであったトラディショナルのカヴァーその2。ジャズと讃美歌とバハマ音楽が融合したノスタルジックなブラス・バンド・ジャズに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=CiQOk3tKZ2I

「In a Mist」
1920年代に活躍したコルネット奏者Bix Beiderbeckeのカヴァー1曲目。ギター、サックス、クラリネット、ヴァイヴの音色が不思議な雰囲気を醸し出すサロン・ジャズに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=OGL_2J2WWxk

「Flashes」
1920年代に活躍したコルネット奏者Bix Beiderbeckeのカヴァー2曲目。Ryのギターのみのしっとりとした演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=3l5Ubp-PKlk

「Davenport Blues」
1920年代に活躍したコルネット奏者Bix Beiderbeckeのカヴァー3曲目。「In a Mist」と同タイプのサロン・ジャズですが、こちらの方がリラックスしたムードです。
https://www.youtube.com/watch?v=Ji56b_3yZ18

「Shine」
Cecil Mack/Ford Dabney作。1924年に書かれたヴォードヴィル・ソングのカヴァー。Golden Gate Quartetのメンバーが参加し、コーラスを務めます。ヴォードヴィルの魅力を小粋に伝えてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=sJH94A88OPg

「Nobody」
ヴォードヴィルの世界で人種の壁を乗り越えて活躍した偉大な黒人アーテイストBert Williamsの作品をカヴァー。バハマ出身であったBert Williamsに合わせて、バハマ・テイストのフォーキー・ジャズといった雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=Yp3_CidSd1U

「We Shall Be Happy」
バハマ出身のギタリストJoseph Spenceのレパートリーであったトラディショナルのカヴァーその3。ニューオリンズとバハマのジャズな繋がりを感じる演奏は本作ならではの味わいがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=q6McngQR56c

Ry Cooderの他の初期作品もチェックを!

『Ry Cooder』(1970年)


『Into the Purple Valley』(1972年)


『Boomer's Story』(1972年)


『Paradise and Lunch』(1974年)


『Chicken Skin Music』(1976年)


『Show Time』(1977年)


『Bop Till You Drop』(1979年)


『Borderline』(1980年)


『The Slide Area』(1982年)
posted by ez at 18:50| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする