発表年:1980年
ez的ジャンル:Todd Rundgren系ポップ・ロック
気分は... :擬くアート!
今回は今回は根強い人気を誇るロック・アーティストTodd Rundgren率いるUtopiaの『Deface The Music』(1980年)です。
これまで当ブログで紹介したTodd Rundgren作品は以下の11枚。
Nazz
『Nazz』(1968年)
『Nazz Nazz』
『Nazz III』(1970年)
Todd Rundgren
『Runt:The Ballad Of Todd Rundgren』(1971年)
『Something/Anything』(1972年)
『Faithful』(1976年)
『Hermit Of Mink Hollow』(1977年)
『Healing』(1981年)
『The Ever Popular Tortured Artist Effect』(1983年)
『Nearly Human』(1989年)
Utopia
『Swing to the Right』(1982年)
プログレ路線でスタートしたUtopiaですが、1980年代に入りポップ路線へ大きく舵を切ります。グループ最大のヒット・シングル「Set me free」(USチャート第31位)を含む『Adventures in Utopia』(1980年)に続いてリリースされたのは本作『Deface The Music』(1980年)です。
本作はジャケにも反映されているように、The Beatlesへのオマージュ・アルバムです。楽曲は全てThe Beatlesの楽曲を擬いています。単純にThe Beatlesソングのパクりで片付けられないところが本作の魅力です。
以前の記事で僕は本作のことを"パロディ・アルバム"と書いてしまいましたが、今回の記事を書くにあたって、その部分を訂正しました。"パロディ・アルバム"と評すると、The Beatlesを真似て面白がっているだけの中身の薄いアルバムのように受け取られると感じたからです。
ここ数年、「擬(もどき)」という言葉が、僕の中で1つの重要ワードになっています。そのきっかけは敬愛する松岡正剛氏の著作『擬 MODOKI』でした。
松岡正剛 著『擬 MODOKI』(2017年)
本作『Deface The Music』と「擬(もどき)」を関連づければ、The Beatlesを敬意を持って擬くことで、単なるコピーでは見えてこないThe Beatlesの音世界の本質に迫っているのが本作『Deface The Music』だと思います。「擬(もどき)」は立派なアートなのです。
本作におけるメンバーはTodd Rundgren(g、vo)、Roger Powell(key、vo)、John Wilcox(ds、vo)、Kasim Sulton(b、vo)という4名。
プロデュースはTodd RundgrenとUtopia。
単純に音を楽しむのもいいですが、この曲はどのBeatlesソングが元ネタか?どこがBeatlesらしさなのかという点もアレコレ想起しながら聴くのは一番楽しめると思います。
全曲紹介しときやす。
「I Just Want to Touch You」
邦題「抱きしめたいぜ」。英語版Wikiで元ネタとして示されているのが「I Want to Hold Your Hand」と「Please Please Me」。邦題も「I Want to Hold Your Hand」を意識したものですね。初期Beatlesのヒット・シングルのエッセンスを強調したオープニング。個人的には「I Should Have Known Better」や「Not A Second Time」あたりも想起します。
https://www.youtube.com/watch?v=HaYFzXyChUk
「Crystal Ball」
邦題「キャント・バイ・ミー・クリスタル・ボール」。英語版Wikiで元ネタとして示されているのが「Can't Buy Me Love」と「She's A Woman」。初期Beatlesをガレージロックっぽくした雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=KOz3_ULEwso
「Where Does the World Go to Hide」
邦題「泣きたいダンス」。英語版Wikiで元ネタとして示されているのがPeter and Gordon「A World Without Love」と「You've Got to Hide Your Love Away」。一方、邦題は「I'm Happy Just Dance With You(すてきなダンス)」を意識したもの。このトラックが一番元ネタを特定しづらいかも?
https://www.youtube.com/watch?v=YJAwHxydZVU
「Silly Boy」
邦題「アクト・シリィリィ」。英語版Wikiで元ネタとして示されているのが「I'm a Loser」と「I'll Cry Instead」。一方、邦題は「Act Naturally」を意識したもの。個人的には「I'll Cry Instead」と「Act Naturally」の合わせ技という気がします。
https://www.youtube.com/watch?v=XY84phZzgj4
「Alone」
邦題「ホワイル・マイ・ロンリネス・ジェントリー・ウィープ」。英語版Wikiで元ネタとして示されているのが「And I Love Her」。一方、邦題は「While My Guitar Gently Weeps」を意識したもの。でもコレは「While My Guitar Gently Weeps」ではない気が・・・。個人的には「And I Love Her」に加えて、「I'll Be Back」あたりのエッセンスも感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=7QDBxGk3hD0
「That's Not Right」
邦題「エイト・デイズ・ア・ウィーク・イズ・ノット・ライト」。これは英語版Wikiも邦題も「Eight Days a Week」元ネタで一致。モロに似ている訳ではないけど、エッセンスを見事に掴んでいるという点にToddのBeatles愛を感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=04Xb6-UtoHs
「Take It Home」
邦題「ドライヴ・マイ・カー・トゥ・ホーム」。英語版Wikiで元ネタとして示されているのが「Day Tripper」。一方、邦題は「Drive My Car」を意識したもの。これはどちらもアリという気がします。でも、このトラックはフツーにTodd Rundgrenっぽいですね(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=jOXKQds8YhE
「Hoi Poloi」
邦題「ユア・マザー・シュッド・ノウ・ザ・ホイ・ポリィ」。英語版Wikiで元ネタとして示されているのが「Penny Lane」。一方、邦題は「Your Mother Should Know」を意識したもの。どちらもアルバム『Magical Mystery Tour』(1967年)収録曲であり、この頃のPaul McCartneyのポップ・センスを目指したトラックといえます。
https://www.youtube.com/watch?v=dG2fqo9Ifpo
「Life Goes On」
邦題「エリナー・リクビーはどこへ」。これは英語版Wikiも邦題も「Eleanor Rigby」元ネタで一致。ただし、シンセの代わりにストリングスを用いている分、雰囲気は似ていても質感はかなり異なります。
https://www.youtube.com/watch?v=UHTIBanmkww
「Feel Too Good」
邦題「フィクシング・ア・ホール・イズ・ゲティング・ベター」。これも英語版Wikiも邦題も「Getting Better」、「Fixing a Hole」元ネタで一致。「With a Little Help from My Friends」、「Lucy in the Sky with Diamonds」、「She's Leaving Home」あたりも含めて、この1曲に『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』の音世界を凝縮させた感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=r4ad9uHTfQE
「Always Late」
邦題「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー・イズ・オールウェイズ・レイト」。英語版Wikiで元ネタとして示されているのが「Martha My Dear」と「Yellow Submarine」。一方、邦題は「Maxwell's Silver Hammer」を意識したもの。また、「Lady Madonna」を元ネタに指摘するリソースもあります。確かに、アクセントで「Yellow Submarine」のエッセンスを取り入れている気がしますが、それ以外の元ネタとされる3曲はピンと来ません。「Martha My Dear」大好きの僕ですが、この曲に「Martha My Dear」らしさは全く感じません。それより、この曲を聴いているとBilly Joel「Movin' Out」を想起するのは僕だけでしょうか?
https://www.youtube.com/watch?v=jVD9pOhjhwY
「All Smiles」
邦題「ミッシェルの微笑み」。英語版Wikiも邦題も「Michelle」元ネタで一致。英語版Wikiでは「I Will」も示されていますが、「I Will」大好きの僕は賛同しかねます。
https://www.youtube.com/watch?v=kUBK0u8Y6X4
「Everybody Else Is Wrong」
邦題「エヴリバディ・フィールズ・フォーエヴァー」。英語版Wikiも邦題も「Strawberry Fields Forever」元ネタで一致。英語版Wikiでは「I Am the Walrus」も示されています。個人的には「Baby, You're a Rich Man」あたりも少し入っている気がします。いずれにしても『Magical Mystery Tour』的なサイケ・ワールドを再現しています。
https://www.youtube.com/watch?v=__npIDX9aGs
Todd Rundgren関連作品の過去記事もご参照下さい。
Nazz『Nazz』(1968年)
Nazz『Nazz Nazz』
Nazz『Nazz III』(1970年)
Todd Rundgren『Runt:The Ballad Of Todd Rundgren』(1971年)
Todd Rundgren『Something/Anything』(1972年)
Todd Rundgren『Faithful』(1976年)
Todd Rundgren『Hermit Of Mink Hollow』(1977年)
Todd Rundgren『Healing』(1981年)
Utopia『Swing to the Right』(1982年)
Todd Rundgren『The Ever Popular Tortured Artist Effect』(1983年)
Todd Rundgren『Nearly Human』(1989年)