発表年:1978年
ez的ジャンル:ルーツ音楽探求系ジャズ
気分は... :ドルフィンズ初勝利!
コロナ禍で開幕したNFLですが、わがマイアミ・ドルフィンズが第3週にしてようやく今季初勝利!内容的にも良かった試合を生放送のTV中継で観ることができ、スカッとしました。
さて、ルーツ・ミュージックの探求者Ry Cooder、1978年リリースのアルバム『Jazz』です。
1947年カリフォルニア州ロサンゼルス生まれのギタリスト/シンガーRy Cooderの紹介は、テックス・メックス、ハワイアン・ミュージックにアプローチした『Chicken Skin Music』(1976年)に続き2回目となります。
約11年ぶりのRy Cooderの紹介です。
スライド・ギターの名手としても知られ、Taj Mahal、The Rolling Stones等にもレコーディングに参加していたRy Cooder。
『Paradise and Lunch』(1974年)以降はさらに幅広い音楽を探求し、テックス・メックス、ハワイアン、ジャズ、R&B/ソウル等にアプローチしていった。また、80年代に入るとWim Wenders監督作品など映画音楽を積極的に手掛けました。
また、1997年にキューバのベテラン・ミュージシャン達と制作したアルバム『Buena Vista Social Club』は、空前のアフロ・キューバン・ミュージックのブームを巻き起こしました。本作をベースとした映画(Wim Wenders監督『Buena Vista Social Club』)も大ヒットしましたね。
11年前のエントリーでも書きましたが、僕にとってのRy Cooderは作品単位で好き/嫌いがガラッと変わり、なかなか自分自身でも評価が難しいアーテイストです。ただし、流行とは全く無縁のアーティストなので、好きな作品とはずっと付き合える良さはありますね。
Ryの膨大な作品群の中で僕のお気に入りの1枚が本作『Jazz』(1978年)です。
タイトルの通り、ジャズにアプローチした作品ですが、Ry Cooderにしか生み出せない1920〜30年代風のノスタルジックなジャズ・ワールドを楽しめます。
直球勝負のジャズではなく、ジャズと影響し合ったヴォードヴィルや中南米音楽のエッセンスを介して、ジャズの本質を炙り出しているところが、ルーツ・ミュージックの探求者Ry Cooderらしいのでは?
プロデュースはRy CooderとJoseph Byrd、
レコーディングにはDavid Lindley(mandobanjo、mandolin)、Jimmy Adams、Cliff Givens、Tom Collierというコーラス・グループGolden Gate Quartetのメンバー3名、Earl Hines(p)、George Bohano(bs)、Red Callender(tuba)、Chuck Domanico(b)、Harvey Pittel (as、clarinet)、Mark Stevens(ds)、John Rodby (p)、Randy Aldcroft(tb)、Tom Collier(marimba、vibes)等のミュージシャンも参加しています。
好きなアルバムでしたが、1曲単位で聴くというより、全体の流れで聴いてきたことが多かったのですが、今回記事を書くにあたり曲単位に着目して聴くと、以前は気づかなった魅力を再発見できました。
アルバムは大きく4タイプの演奏に分けられます。
まずバハマ出身のギタリストJoseph Spenceのレパートリーであったトラディショナルのカヴァー3曲。ニューオリンズ・ジャズとバハマの繋がりを感じさせます。Joseph Spenceの独自の音楽/ギター・スタイルもRyを刺激したのではないかと思います。
2番目は「The Pearls/Tia Juana」、「The Dream」で聴かれるタンゴ/ハバネラのエッセンス。スペインやメキシコの香りもあります。
3番目はヴォードヴィル・ソングのカヴァー3曲。ノスタルジックだけは片付けられないものを示唆しているように思います。
最後は1920年代に活躍したコルネット奏者Bix Beiderbeckeのカヴァー3曲。不思議なムードを醸し出すサロン・ジャズに魅了されます。
他では聴けない、Ry Cooderならではのジャズ・ワールドをご堪能あれ!
全曲紹介しときやす。
「Big Bad Bill (Is Sweet William Now)」
Milton Ager/Jack Yellen作。1924年に書かれた曲。軽やかなヴォードヴィル調のノスタルジック・サウンドに乗って、Ryが楽しげなヴォーカルを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=jCRCRicNLhQ
「Face to Face That I Shall Meet Him」
バハマ出身のギタリストJoseph Spenceのレパートリーであったトラディショナルのカヴァーその1。多分、元々は讃美歌のような曲だったものを彼独特のギター・スタイルで演奏するのが得意だったようです。本ヴァージョンも、そんなSpenceのスタイルを取り入れた古いブラス・バンド風の演奏に仕上がっています。少し寂しげな感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=2UCeEq67_dY
「The Pearls/Tia Juana」
ジャズ・ピアニスト、Jelly Roll Mortonの楽曲のメドレー。Ryがギター、マンドリン、ティプレ、ハープを多重録音しています。ニューオリンズ・ジャズにカリブ、スペイン、メキシコのエッセンスが加わったRyならではのジャズを楽しめます。個人的にはRy Cooderを知る以前からこの曲には馴染みがありました。いつも聴いていた夜のラジオ番組のエンディング・テーマだったのですが・・・番組名が思い出せずモヤモヤしています。
https://www.youtube.com/watch?v=FsTIKp_8_ME
「The Dream」
Jack the Bear/Jess Pickett作。20〜30年代ジャズをリアルに演奏してきたピアニストEarl Hinesをゲストに迎えています。タンゴ/ハバネラのエッセンスやマリンバのアクセントも加わったラグタイム調の演奏ですが、Ryの南部テイスト・ギターが加わるジャズっぽくなくなるのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=fd7p5_YkbLA
「Happy Meeting in Glory」
バハマ出身のギタリストJoseph Spenceのレパートリーであったトラディショナルのカヴァーその2。ジャズと讃美歌とバハマ音楽が融合したノスタルジックなブラス・バンド・ジャズに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=CiQOk3tKZ2I
「In a Mist」
1920年代に活躍したコルネット奏者Bix Beiderbeckeのカヴァー1曲目。ギター、サックス、クラリネット、ヴァイヴの音色が不思議な雰囲気を醸し出すサロン・ジャズに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=OGL_2J2WWxk
「Flashes」
1920年代に活躍したコルネット奏者Bix Beiderbeckeのカヴァー2曲目。Ryのギターのみのしっとりとした演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=3l5Ubp-PKlk
「Davenport Blues」
1920年代に活躍したコルネット奏者Bix Beiderbeckeのカヴァー3曲目。「In a Mist」と同タイプのサロン・ジャズですが、こちらの方がリラックスしたムードです。
https://www.youtube.com/watch?v=Ji56b_3yZ18
「Shine」
Cecil Mack/Ford Dabney作。1924年に書かれたヴォードヴィル・ソングのカヴァー。Golden Gate Quartetのメンバーが参加し、コーラスを務めます。ヴォードヴィルの魅力を小粋に伝えてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=sJH94A88OPg
「Nobody」
ヴォードヴィルの世界で人種の壁を乗り越えて活躍した偉大な黒人アーテイストBert Williamsの作品をカヴァー。バハマ出身であったBert Williamsに合わせて、バハマ・テイストのフォーキー・ジャズといった雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=Yp3_CidSd1U
「We Shall Be Happy」
バハマ出身のギタリストJoseph Spenceのレパートリーであったトラディショナルのカヴァーその3。ニューオリンズとバハマのジャズな繋がりを感じる演奏は本作ならではの味わいがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=q6McngQR56c
Ry Cooderの他の初期作品もチェックを!
『Ry Cooder』(1970年)
『Into the Purple Valley』(1972年)
『Boomer's Story』(1972年)
『Paradise and Lunch』(1974年)
『Chicken Skin Music』(1976年)
『Show Time』(1977年)
『Bop Till You Drop』(1979年)
『Borderline』(1980年)
『The Slide Area』(1982年)