発表年:2020年
ez的ジャンル:ブラジリアン・ジャズ・ギタリスト
気分は... :余白のクリエイティビティ・・・
今回はブラジル人ジャズ・ギタリストChico Pinheiroの10年ぶりのソロ・アルバム『City Of Dreams』です。
Chico Pinheiroは1975年ブラジル、サンパウロ生まれのギタリスト/コンポーザー。
1996年に渡米し、バークリー音楽院で本格的にジャズを学び、その後プロとしてキャリアを歩みます。
これまで『Meia Noite Meio Dia』(2003年)、『Chico Pinheiro』(2005年)、『There's a Storm Inside』(2010年)といったソロ・アルバムやAnthony Wilsonとの共演アルバム『Nova』(2008年)、Antonio Loureiro、Sergio Santosとの共演アルバム『Triz』(2012年)といった作品をリリースしています。2017年からは拠点をサンパウロからN.Y.に移して活動しています。
本作『City Of Dreams』は、『There's a Storm Inside』(2010年)以来10年ぶりのソロ・アルバムとなります。
レコーディング・メンバーはChico Pinheiro(g、vo)、Tiago Costa(p、key)、Bruno Migotto(b)、Edu Ribeiro(d)、Chris Potter(ts)。
人気のUSジャズ・サックス奏者Chris Potter以外はChicoと同じサンパウロ出身のミュージシャン達です。Maria Rita好きの僕としては、Maria Rita作品でお馴染みのTiago Costaの参加が目を引きます。
本作への布石となったのがChico Pinheiroが参加したThe Reunion ProjectのアルバムThe Reunion Project『Varanda』(2017年)です。同作にはTiago Costa、Bruno Migotto、Edu Ribeiroも参加しており、サンパウロ出身の4人のミュージシャンが結束が本作へと導いたと言えるでしょう。
アルバムはブラジル音楽とUSジャズのスペクトラムの間に位置する演奏で構成されています。
楽曲はすべてChico Pinheiroのオリジナルです。
ブラジル色の強い「Encantando」、「Estrada Real」の2曲が僕のお気に入りです。
それ以外に素晴らしいアンサンブルを楽しめるタイトル曲「City Of Dreams」、Chicoのギタリストとしての魅力を満喫できる「Up In The Air」、Wayne Shorterへ捧げた「Invisible Lights」、ボッサ・フィーリングを取り入れた「Vila Madalena」あたりもおススメです。
ブラジル人ギタリストならではの感性を楽しめるジャズ作品です。
全曲紹介しときやす。
「City Of Dreams」
4名のブラジル人ミュージシャンの素晴らしいアンサンブルを楽しめるオープニング。中盤のChicoのギター、Tiagoのピアノによる静かなデュオを挟んで再び4人の生への躍動に満ちたアンサンブルを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=KHYxknX1NEo
「Interlude」
タイトルの通り、インタールド的なChicoのギター、Tiagoのピアノのデュオ演奏。
「Long Story Short」
Chris Potterが参加した演奏はUSジャズな雰囲気です。N.Y.ジャズ・シーンでも活躍するジャズ・ギタリストたしいChico PinheiroとChris Potterがソロで盛り上げてくれます。
「Estrada Real」
100%ブラジル音楽なミステリアスでトラディショナルな演奏です。Baden Powellの流れを汲むブラジル人ギタリストらしいギター・プレイとスキャットを聴かせてくれます。
「Gesture」
ギター、ピアノ、ベースによるトリオ演奏。静かなる音楽モードの清らかな演奏で、聴く者の心を浄化してくれます。
「Invisible Lights」
Wayne Shorterへ捧げた1曲なのだとか。Bruno Migottoはエレクトリック・ベースをプレイしています。USジャズ・テイストのアンサンブルで楽しませてくれます。
「Encantando」
僕の一番のお気に入り。ミナス派のエッセンスを感じるブラジル・モード全開のスキャット入りの演奏です。Chris Potterのサックスもいいアクセントになっています。
「Theme」
元々映画音楽として書かれた曲なのだとか。1曲の中にドラマを感じるシネマチックな演奏です。何とも言えない哀愁が漂います。
「Vila Madalena」
ボッサ・フィーリングを取り入れたメロウな演奏です。とは言ってもモロにボサノヴァではなく、演奏全体はUSジャズ的な雰囲気に仕上がっています。
「Farol」
ギター、ピアノのみのデュオ演奏。透明感のあるクラシカルな雰囲気のアンサンブルで魅せてくれます。
「Up In The Air」
ラストは明日への希望を意識した素晴らしい演奏で締め括ってくれます。Chicoのギタリストとしての才がよく分かる演奏だと思います。
Chico Pinheiroの他作品もチェックを!
『Meia Noite Meio Dia』(2003年)
『Chico Pinheiro』(2005年)
Chico Pinheiro & Anthony Wilson『Nova』(2008年)
『There's a Storm Inside』(2010年)
Antonio Loureiro/Chico Pinheiro/Sergio Santos 『Triz』(2012年)
The Reunion Project『Varanda』(2017年)