発表年:1965年
ez的ジャンル:初期Stones
気分は... :チェス・スタジオの魔法 !
最近は"久々の●●、◆◆年ぶりのエントリー"パターンが多いのですが、今回は9年ぶりにThe Rolling Stonesです。
数日前に『The Rolling Stones Rock and Roll Circus』(1968年)の映像を久々に観る機会があり、Stonesサウンドを耳にしたくなりました。
セレクトしたのは『12 X 5』(1964年)です。
これまで本ブログで紹介してきたStones作品は以下の10枚(発売年順)。
『The Rolling Stones, Now!』(1965年)
『December's Children (And Everybody's)』(1965年)
『Aftermath』(1966年)
『Between the Buttons』(1967年)
『Beggars Banquet』(1968年)
『Let It Bleed』(1969年)
『Sticky Fingers』(1971年)
『Exile on Main St.』(1972年)
『Black And Blue』(1976年)
『Emotional Rescue』(1980年)
本作『12 X 5』(1964年)は『England's Newest Hit Makers』(1964年)に続くUSでの第2弾アルバムです。
ご存じのとおり、初期Stones作品はUKとUSと大きく異なり、その関係を把握するのがややこしいのですが、本作のベースとなっているのがStonesにとって初のUSレコーディングとなった1964年6月のシカゴ、チェス・スタジオでのセッションです。ブルース、R&Bの名門チェス・レコードの本拠地チェス・スタジオはStonesメンバーにとっての聖地であり、そこでのレコーディングは彼らの悲願でした。
そのチェス・スタジオでのレコーディングのうち、5曲はUKでEP「Five by Five」としてリリースされ、それとは別に「It's All Over Now」、がUSでシングル・リリースされました。
この6曲にロンドン・レコーディングの6曲を加えてアルバム仕様にし、USでリリースされたのが本作『12 X 5』です。
Mick Jagger(vo、harmonica、per)、Keith Richards(g、back vo)、Brian Jones(g、harmonica、tambourine、maracas、 organ、back vo)、Charlie Watts(ds)、Bill Wyman(b、per、back vo)というメンバー5人以外にIan Stewart(p、org)が参加しています。プロデュースはAndrew Loog Oldham。
アルバムはUSアルバム・チャート第3位となっています。
やはり注目すべきはチェス・スタジオでの6曲ですね。ブルース、R&Bの本場で刺激を受けたメンバーの興奮・喜びがそのまま音に反映されているのでは?
人気曲「Time Is on My Side」、チェス・スタジオでの6曲以外であれば、「Grown Up Wrong」、「Susie Q」の2曲がおススメです。
チェス・スタジオの魔法が生み出した初期Stonesの傑作を楽しみましょう。
全曲紹介しときやす。
「Around and Around」
EP「Five by Five」収録曲。Chuck Berryのカヴァーがオープニング。1958年に大ヒットしたロックンロール・クラシック「Johnny B. Goode」のシングルB面だった曲です(Chuck Berry作)。Chuck Berryらしい黒さと軽さが同居するロックンロールにチェス・スタジオで演奏する喜びが溢れています。
Ian Stewartのブギウギ・ピアノもいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=W3sr9Z89HyQ
「Confessin' the Blues」
EP「Five by Five」収録曲。Jay McShann/Walter Brown作のブルース・クラシックをカヴァー。聖地チェス・スタジオでスロー・ブルースを堂々と演奏する若きStones!想像するだけでも興奮してきますね。
https://www.youtube.com/watch?v=qVf6BhlHUjQ
「Empty Heart」
EP「Five by Five」収録曲。Nanker Phelge名義によるグループのオリジナル。個人的にはコレが一番のお気に入り!チェス・スタジオの魔法がオリジナル曲もレベル・アップさせたようです!R&B志向のバンドとしての方向性が明示されているように思います。
https://www.youtube.com/watch?v=he_ISefSQeo
「Time Is on My Side」
Norman Meade(Jerry Ragovoy)作品のカヴァー。オリジナルは1963年のジャズ・トロンボーン奏者Kai Windingによるインスト。Jimmy Normanによる歌詞をつけて女性ソウル・シンガーIrma ThomasとStonesが共に1964年にカヴァーしています。シングルにもなり、USチャート第6位のヒットとなっています。お馴染みの人気曲ですね。ゴスペル調のオルガンと共に始まるソウル・フィーリングに溢れたバラードです。ただし、アルバム全体で考えると、後述するチェス・スタジオ録音のThe second versionの方がハマる気がします。
https://www.youtube.com/watch?v=7jStGLgQkSw
本作収録のロンドン・レコーディングのUSシングル・ヴァージョン(The first version)とは別に1964年12月にチェス・スタジオでレコーディングし直したThe second versionがあります。オルガンのみのイントロがThe first version、ギターがフィーチャーされたイントロがThe second versionです。The second versionはUKでの2ndアルバム『The Rolling Stones No. 2』(1965年)に収録されています。
「Time Is on My Side」(The second version)
https://www.youtube.com/watch?v=JforKK52WIw
「Good Times, Bad Times」
Mick Jagger/Keith Richards作。オリジナルのフォーキー・ブルース。悪くはないですが、チェス・スタジオでのセッションと比較するとかなり少しぎこちなく青い感じがしますね。
https://www.youtube.com/watch?v=rhzA5YA32wg
「It's All Over Now」
The Valentinos (The Womack Brothers)、1964年のシングル・ヒットをカヴァー(Bobby Womack/Shirley Womack作)。シングルとしてUKチャート第1位(Stones初のUK No.1)、USチャート第26位となっています。こういうR&Bヒットを自分たちらしいスタイルで聴かせてしまうあたりもチェス・スタジオ・セッションの成果だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=jOcCrvzqVnk
「2120 South Michigan Avenue」
EP「Five by Five」収録曲。Nanker Phelge名義によるオリジナルのインスト。タイトルはチェス・レコード本社住所、サウス・ミシガン・アベニュー2120番地、すなわちStonesメンバーにとっての聖地を冠したものです。チェス・スタジオで演奏する喜びから生まれた副産物といったところでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=KXQYDfLxVtk
「Under the Boardwalk」
The Drifters、1964年のUSチャートNo.1ヒット「渚のボードウォーク」をカヴァー(Arthur Resnick/Kenny Young作)。お馴染みのヒット曲のカヴァーですが、正直Stonesにはフィットしていない気もします。Mickのヴォーカルも少しお行儀が良すぎますよね(笑)。
https://www.youtube.com/watch?v=MC_XZbjPMSM
本曲に関して、当ブログではSteve Parks、Solo、Tom Tom Clubのカヴァーも紹介済みです。
「Congratulations」
Mick Jagger/Keith Richards作。オリジナルのカントリー・ソウル。派手さはありませんが、若きMickとKeithがこんなシブい曲を作るところがStonesらしさかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=A0OoeFnh3VA
「Grown Up Wrong」
Mick Jagger/Keith Richards作。Stonesらしい悪ガキさが反映されたR&B調のオリジナル。こういうの好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=zteVEgjYTus
「If You Need Me」
EP「Five by Five」収録曲。オリジナルはWilson Pickett(Robert Bateman/Wilson Pickett作)ですが、Solomon BurkeのR&Bヒットで知られる楽曲をカヴァー。チェス・スタジオ・セッションの成果が窺えるStonesらしい味わいのソウル・バラードに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=038NVTEaWuk
「Susie Q」
Dale Hawkinsが1957年にリリースしたロカビリーのカヴァー(Eleanor Broadwater/Stan Lewis/Dale Hawkins作)。Creedence Clearwater Revivalによるカヴァー・ヒットでも知られる曲です。Charlieのドラミングが冴えわたるStones流ロックンロールに仕上がっています。この曲もチェス・スタジオ・セッションで聴いてみたかった!
https://www.youtube.com/watch?v=XN8J0NMALy4
The Rolling Stonesの過去記事もご査収ください。
『The Rolling Stones, Now!』(1965年)
『December's Children (And Everybody's)』(1965年)
『Aftermath』(1966年)
『Between the Buttons』(1967年)
『Beggars Banquet』(1968年)
『Let It Bleed』(1969年)
『Sticky Fingers』(1971年)
『Exile on Main St.』(1972年)
『Black And Blue』(1976年)
『Emotional Rescue』(1980年)