2021年05月23日

Sons Of Kemet『Black To The Future』

Shabaka Hutchings率いるユニットの4枚目☆Sons Of Kemet『Black To The Future』

発表年:2021年
ez的ジャンル:次世代UKジャズ/アフロ・ジャズ
気分は... :寛容であれ!

新作から注目のUKジャズ作品Sons Of Kemet『Black To The Future』です。

次世代UKジャズを牽引する最重要ミュージシャンの一人、Shabaka Hutchings率いるSons Of Kemetの紹介は、3rdアルバム『Your Queen Is A Reptile』(2018年)に続き2回目となります。

ここ数年の僕の音楽ライフにかなりの影響を与えているShabaka HutchingsおよびSons Of Kemet

年末恒例の『ezが選ぶ●●年の10枚』でも、3年連続で彼ら絡みの作品をセレクトしています。

『ezが選ぶ2018年の10枚』
Sons Of Kemet『Your Queen Is A Reptile』(2018年)
Your Queen Is A Reptile

『ezが選ぶ2019年の10枚』
Theon Cross『Fyah』(2019年)
ファイア

『ezが選ぶ2020年の10枚』
Shabaka And The Ancestors『We Are Sent Here By History』(2020年)
ウィー・アー・セント・ヒア・バイ・ヒストリー

そんな流れでSons Of Kemetの新作への期待は高まるばかりでした。

前作『Your Queen Is A Reptile』(2018年)に続く4thアルバムとなる本作『Black To The Future』におけるSons Of Kemetのメンバーは、Shabaka Hutchings(ts、woodwinds)、Theon Cross(tuba)、Tom Skinner(ds)、Eddie Wakili-Hick(ds)という4名。

サックス、チューバ、ツイン・ドラムという編成は変わりませんが、ドラマーの一人がSeb RochfordからEddie Wakili-Hickに交代しています。

アルバムにはLV & Joshua Idehen名義等の作品リリースで知られ、前作も参加していたJoshua Idehen(vo)、アシッド・ジャズ期から活躍しているサックス奏者Steve Williamson(ts)、フィラデルフィア出身の詩人、ビジュアルアーティストであり、フリージャズ・バンドIrreversible Entanglementsでも活動するアーティストCamae Ayewaの変名Moor Mother(vo)、シカゴを拠点にDamon Locks Black Monument EnsembleJake Wark Quartetといったユニットで活動するコンポーザー/クラリネット奏者/シンガーAngel Bat Dawid(vo)、UKラッパーKojey Radical(vo)、ロンドンの人気グライムMC D Double E(vo)、SEED Ensembleのリーダー兼KokorokoNerijaのメンバーであるCassie Kinoshi(as)、メンバーTheon Crossの兄弟Nathaniel Cross(tb)、UKジャズの注目バンEzra CollectiveIfe Ogunjobi(tp)、USサックス奏者Kebbi Williams(ts)といったミュージシャンが参加しています。

本作『Black To The Future』の背景には、アメリカでのBlack Lives Matter運動への共感がある模様です。

また、Shabaka Hutchingsは本作でフルート音楽の掘り下げを試みています。具体的にはカリブ海のマルティニーク島出身のフルート奏者Max Cillaやブラジルの鬼才ミュージシャンであるHermeto Pascoalを意識したようです。

正直、僕の音楽嗜好でいえば、アッパーで扇動的な演奏が多かった前作『Your Queen Is A Reptile』がほうが好みですが、本作ならではのアンサンブルの面白さを楽しみたいと思います。

社会メッセージとジャズをバランスさせた本作のパワーを感じましょう。

全曲紹介しときやす。

「Field Negus」
Joshua Idehenのポエトリー・リーディングをフィーチャー。今も奴隷時代のように差別的な扱いを受ける黒人の過酷な立場をJoshuaが訴えます。Steve Williamson(sax)も参加し、不条理な現状を哀愁のジャズ・サウンドで表現します。
https://www.youtube.com/watch?v=ELXDbxKjx48

「Pick Up Your Burning Cross」
Moor MotherとAngel Bat Dawidのヴォーカルをフィーチャー。前作からの流れを汲むアッパーでパワフルなアフロ・ジャズですが、本作ならではのフルートの音色も聴こえてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=IpK1a1RqfFA

「Think Of Home」
カリブや中央アフリカを意識した本作らしい開放的で海と空と大地を感じるアンサンブルを楽しめます。さらにダビーな音響感も本作独特のものかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=A5_-BEVYZ9Y

「Hustle」
Kojey Radicalをフィーチャー。黒人の歴史をアフロ・ジャズと重ね、ダークで不穏な雰囲気を醸し出します。
https://www.youtube.com/watch?v=PUNRnXXPylM

「For The Culture」
D Double Eをフィーチャー。さらにはSEED EnsembleのCassie Kinoshi(as)、Theon Crossの兄弟、Nathaniel Cross(tb)、Ezra CollectiveのIfe Ogunjobi(tp)も参加し、ホーン・アンサンブルの重層感を楽しめる演奏です。本作らしいフルートの音色によるアクセントも効いています。
https://www.youtube.com/watch?v=8T5SGoQnMg4

「To Never Forget The Source」
ゆったりとしたリズムと哀愁サックスが印象的な演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=1UGtH3t-QKg

「In Remembrance Of Those Fallen」
ミステリアスな雰囲気を醸し出す演奏です。多彩な木管楽器の音色によるアクセントも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=Emeclwix8Ig

「Let The Circle Be Unbroken」
メンバー4人のアンサンブルを楽しめる演奏です。穏やかな雰囲気から徐々にマッドな感じになるのがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=-hjxrchhT5c

「Envision Yourself Levitating」
Kebbi Williams(ts)が参加。テンポを落としたリズムのなかでホーン・アンサンブルによる表情の変化を味わうのがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=1B8rN291JwA

「Throughout The Madness, Stay Strong」
Shabakaがサックス、クラリネット、フルートで楽しませてくれます。アッパーなのに扇動的ではないのが前作との違いかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=fH4baTgOALo

「Black」
ラストは再びJoshua Idehenをフィーチャー。Black Lives Matterへの共感をダイレクトに反映したJoshuaのポエトリー・リーディングをShabakaらの演奏が際立たせます。
https://www.youtube.com/watch?v=d6CADUV0QB0

Sons Of Kemetの他作品もチェックを!

『Burn』(2013年)
BURN

『Lest We Forget What We Came Here to Do』(2015年)
LEST WE FORGET

『Your Queen Is A Reptile』(2018年)
Your Queen Is A Reptile
posted by ez at 02:34| Comment(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする