2021年08月24日

Salinas『Paz Amor E... Samba』

爽快コーラスによるブラジリアン・ポップ☆Salinas『Paz Amor E... Samba』

発表年:1972年
ez的ジャンル:ブラジリアン・ポップ/ソフトロック
気分は... :愛と平和のサンバ!

今回は70年代ブラジリアン・ポップ/ソフトロック、Salinas『Paz Amor E... Samba』(1972年)です。

Salinasは男女コーラス・グループ。
詳細なプロフィールは不明ですが、ピアニスト/アレンジャー/プロデューサーであるDaniel Salinas絡みのグループのようです。

そんなSalinasによるブラジリアン・ポップ/ソフトロック作品が『Paz Amor E... Samba』(1972年)です。

サンバ/ボサノヴァ的な楽しみ方とブラジリアン・ソフトロック的な楽しみ方ができるのがいいですね。古いサンバ・カンサォンをモダンに聴かせてくれるのがいいですね。

ソフトロック調の「Jangada」「A Saudade Mata A Gente」、モダン・サンバ「Tenha Fe Que Amanha Um Lindo Dia Vai Nascer」、軽快に疾走するメロウ・サンバ「Morte Do Amor」、軽快なサンバ「Implorar」、哀愁のサンバ・カンサォン「Cabelos Brancos」あたりがおススメです。

華やかな愛と平和のサンバをぜひ!

全曲紹介しときやす。

「Tenha Fe Que Amanha Um Lindo Dia Vai Nascer」
ブラジルのサンバ・ユニットOs Originais Do Sambaのカヴァー(Jorge Ben作)。オリジナルは『Exportacao』(1971年)に収録されています。軽快なクイーカと快活な男女ヴォーカルが印象的なモダン・サンバは僕好み!当ブログではPilots On Dopeのカヴァーも紹介済みです。
https://www.youtube.com/watch?v=JW_xre4z5W0

「Segredo」
Herivelto Martins/Marino Pinto作。オルガンの音色が印象的なボッサ・バラードで聴かせてくれます。当ブログではJoao Gilbertoのカヴァーも紹介済みです。
https://www.youtube.com/watch?v=67qmrIvzVqA

「Morte Do Amor」
Antonio Carlos & Jocafiのカヴァー(Alberto Santos Pinheiro/Antonio Carlos & Jocafi作)。オリジナルは当ブログでも紹介した『Mudei De Ideia』(1971年)収録。軽快に疾走するメロウ・サンバは実にキャッチーです。
https://www.youtube.com/watch?v=MrS7xU8Y3lo

「Mangueira, Minha Querida Madrinha (Tengo Tengo)」
Zuzuca作。1936年に書かれたサンバ作品のカヴァー。1972年のカーニヴァルのヒット曲だったそうです。正にカーニヴァル・モードの仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=UB9vIvkxJsI

「Jangada」
Herve Cordovil/Vicente Leporace作。1914年に書かれたサンバ・カンサォンをカヴァー。ここではソフトロック調の絶品メロウ・チューンで聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=S4Ku-dOVmKE

「Ilu Aye (Terra Da Vida)」
Cabana/Norival Reis作。この曲も1972年のカーニヴァルのヒット曲だったそうです。Walter Wanderley調のグルーヴィーなオルガン・ジャズ・サンバのインスト。
https://www.youtube.com/watch?v=kmXbi4_pzlY

「Deus Me Perdoe」
Humberto Teixeira/Lauro Maia作。軽快なオルガン・ボッサで始まり、そのままメロウ・ジャズ・サンバへと展開していきます。
https://www.youtube.com/watch?v=Cmtkl6NlRYI

「Cabelos Brancos」
Herivelto Martins/Marino Pinto作。「Segredo」と同じコンビの作品。哀愁のサンバ・カンサォンはLuiz Bonfaの名曲「Manha de Carnaval」あたりの雰囲気にも通じます。
https://www.youtube.com/watch?v=Wxa4LXer5RQ

「Moca Branca Da Favela」
Jorge Costa作。サンバとボサノヴァが交錯するリズム・チェンジが面白い演奏です。全体としてはソフトロック調です。
https://www.youtube.com/watch?v=uo-8iTFHvaM

「Implorar」
Germano Augusto/Joao Gaspar/Kid Pepe作。1935年のカーニヴァルのヒット曲なのだとか。軽快なサンバのリズムと男女ヴォーカル、グルーヴィー・オルガンが一体化した雰囲気がいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=ZeuLnhLpUK4

「A Saudade Mata A Gente」
Antonio Almeida/Joao De Barro作。1907年に書かれた古いサンバ・カンサォンをカヴァー。ビートの効いた洗練されたソフトロックで聴かせてくれます。当ブログではJoyceのカヴァーも紹介済みです。
https://www.youtube.com/watch?v=FL0xJqkjOM0

「Martim Cerere」
Gibi/Ze Catimba作。ラストはアッパーなサンバ・チューンで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=3d2T0G1u6TA

Daniel Salinas『Atlantis』(1973年)
posted by ez at 04:54| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年08月22日

XL Middleton & Delmar Xavier VII『XL Middleton / Delmar Xavier VII』

西海岸モダン・ファンク☆XL Middleton & Delmar Xavier VII『XL Middleton / Delmar Xavier VII』
xl middleton & delmar xavier vii.jpg
発表年:2021年
ez的ジャンル:西海岸モダン・ファンク
気分は...:2回目ワクチン接種 完了!

昨日、2回目の新型コロナワクチン接種を完了。
副反応を覚悟していますが、今のところフツーにブログ書ける状態です。

新作から西海岸モダン・ファンクXL Middleton & Delmar Xavier VII『XL Middleton / Delmar Xavier VII』です。

XL Middleton(本名:Matthew Hudgins)はカリフォルニア州パサディナ出身のモダン・ファンカー。
2000年代初頭から25枚以上のアルバムをリリースしています。

最新作は新鋭Delmar Xavier VIIとの共同名義によるアルバム。

プロデュースはXL Middleton
「L.A. Holiday」のみDelmar Xavier VIIも共同プロデューサーとしてクレジットされています。

基本的にはモダン・ファンク+ラップという作りですが、80年代ファンク/ブラコン愛に溢れたトラックが本作の魅力です。僕もそこに惹かれて本作を購入しました。

僕のお気に入りは「L.A. Holiday」「Gardener」「Player Piano」「626 Since It Was 818」「Too Late」あたり。

メロウな「Lament For The Angels」「Fire (Storm)」「Perfect Time To Come Over」もいい雰囲気です。

ラップに抵抗がある方も、それほど気にならずに聴ける、80年代ファンク/ブラコン好きの方にも聴いて欲しい1枚です。

全曲紹介しときやす。

「タイロン橋本 (Interlude)」
日本人ミュージシャン、タイロン橋本の名を冠したオープニング。

「Lament For The Angels」
メロウ・ファンクに乗ってラップする西海岸モダン・ファンクらしいトラック。

「Player Piano」
ラップを織り交ぜたキャッチーなモダン・ファンク。もっと長尺で聴きたい!

「626 Since It Was 818」
BlkwestとMoniqueaをフィーチャー。Moniqueaの女性ヴォーカルがいい感じのキャッチーなメロウG-Funkに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=zzRHxGPASpo

「L.A. Noir」
ベースラインにグッとくる格好良いトラック。ラジオのジングル風の作りがいい感じ。

「Gardener」
Dialtoneをフィーチャー。80年代ブラコンへのリスペクトを感じるメロウなモダン・ファンク。僕好みの1曲に仕上がっています。

「Only Luv (Interlude)」
メロウなインタールード。

「Strange Dance」
Young Sauをフィーチャー。コレも80年代ファンク愛を感じるヘヴィ・モダン・ファンク。

「Fire (Storm)」
メロウ・ソウル・トラックに乗ってラップするサマー・モードHip-Hop。シティ・ソウル的な雰囲気もあっていいですね。

「Perfect Time To Come Over」
AOR調のメロウ・トラックにラップを乗せたサンセット・モードの仕上がり。過ぎ行く夏といった雰囲気です。

「L.A. Holiday」
K-DeeとZackey Force Funkをフィーチャー。本作を象徴するキャッチーなモダン・ファンク。80年代ファンクを2021年仕様にアップデートした感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=7Ryrc7ZnwLU

「Too Late」
ラストは80年代ブラコン調トラックで締め括ってくれます。キャッチーな女性コーラスもグッド!

XL Middletonの他作品もチェックを!

『Music 4 A Drunken Evening』(2004年)


『100 Proof Music: The Alcothology』(2006年)


『Drunken Evening Pt. 2: The Refill』(2006年)


『Barliament Drunkadelic』(2007年)


『Middle Class Blues』(2009年)


XL Middleton & Young Sau『There Goes The Neighborhood』(2010年)


『The Hedonistic Album』(2012年)


『Bright Lights Palm Trees』(2012年)


『From the Vaults Vol. 2』(2014年)


『G-Funk Vibes』(2015年)


『Tap Water』(2015年)


XL Middleton + Eddy Funkster『XL Middleton + Eddy Funkster』(2016年)


『All Day We Smash』(2016年)


『2 Minutes Till Midnight』(2019年)
posted by ez at 01:28| Comment(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年08月21日

Ann Nesby『I'm Here For You』

Jam & Lewisプロデュースの初ソロ☆Ann Nesby『I'm Here For You』

発表年:1996年
ez的ジャンル:Perspective系コンテンポラリー・ゴスペル
気分は... :この歌声が世界を救う!

今回はコンテンポラリー・ゴスペル作品からAnn Nesby『I'm Here For You』(1996年)です。

Ann Nesbyは1955年シカゴ生まれの女性シンガー。

Jam & Lewis(Jimmy Jam/Terry Lewis)が1991年に旗揚げしたPerspective Record第一弾アーティストとなったコンテンポラリー・ゴスペル・グループSounds of Blacknessのリード・シンガーとして活躍します。

Sounds of Blacknessのメンバーとして、『The Evolution Of Gospel』(1991年)、『The Night Before Christmas: A Musical Fantasy』(1992年)、『Africa to America: The Journey of the Drum』(1994年)といったアルバムに参加しています。

そして、Sounds of Blacknessから独立し、同じPerspective RecordからJam & Lewisプロデュースでリリースしたソロ第一弾アルバムが本作『I'm Here For You』(1996年)です。

Sounds of Blackness同様、Jam & Lewis印の洗練されたコンテンポラリー・ゴスペルで楽しませてくれます。

アルバムにはSounds of Blacknessの同僚であったJames "Big Jim" Wright、当ブログでも紹介した姉妹R&BグループPerriMint ConditionStokley Williams、今や人気ドラマーとなったChris Dave、それ以外にFreddie Washington(b)、Ricky Lawson(ds)、Paul Jackson Jr.(g)、Paulinho Da Costa(per)、Gerald Albright(sax)等のミュージシャンが参加しています。

また、Jam & Lewis以外にJoseph PowellJames "Big Jim" WrightSteve "Silk" Hurleyがプロデュースを手掛けています。

Jam & Lewisらしいセンスのコンテンポラリー・ゴスペルを楽しむのであれば、
「Thrill Me」「In The Spirit」「This Weekend」あたりがおススメ。

感動ゴスペルであれば、「I'm Still Wearing Your Name」「(What A) Lovely Evening」「Lord How I Need You」がいいですね。アーバンなタイトル曲「I'm Here For You」もムーディーでいいですよ!

Steve "Silk" Hurleyプロデュースの「Hold On」「I'll Be Your Everything」Joseph Powellプロデュースの「Let The Rain Fall」も好きです。

Jam & Lewis好き、Sounds of Blackness好き、コンテンポラリー・ゴスペル好きの方はぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「Let The Rain Fall」
このオープニングはJoseph Powellプロデュース。Ann Nesbyらしい圧倒的なヴォーカルとCraig Mack「Get Down」ネタのビートを効かせたトラックの組み合わせがコンテンポラリー・ゴスペルらしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=bHJpLDM4L7Q

「I'm Still Wearing Your Name」
感動的なゴスペル・バラード。コロナ禍の今、こういったバラードを聴くと心に沁みますね。姉妹R&BグループPerriがバック・コーラスを務めます。
https://www.youtube.com/watch?v=K80wqgjUuNc

「If You Love Me」
さり気ないですが、Jam & Lewisらしいセンスの効いたトラックに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=C4gSf9989vY

「The Invitation」
インタールード的な小曲。

「(What A) Lovely Evening」
コンテンポラリー・ゴスペルならではの感動が込み上げてくる1曲。Annのヴォーカルが聴く者を優しく包み込み、明日への希望へ導いてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=EkoccEwnHoE

「I'll Do Anything For You」
オーセンティックなバラードをAnnが丁寧に歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=DtuRcISogrw

「String Interlude」
ストリングスによるインタールード。

「Thrill Me」
Jam & Lewis好きには間違いのない1曲。洗練されたR&Bグルーヴ仕様のコンテンポラリー・ゴスペルに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=TbPAVHpw6io

「Hold On」
シングルにもなった楽曲。 人気ハウス・プロデューサーSteve "Silk" Hurleyプロデュースということで、フロア仕様のダンス・チューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=JUJxtfK391U

「In The Spirit」
Annのパワフル・ヴォーカルの魅力を存分に満喫できる、Jam & Lewisらしいダンサブル・チューン。これも大好き!Taana Gardner「Heartbeat」をサンプリング。
https://www.youtube.com/watch?v=CLMccNZT1cY

「This Weekend」
シングルにもなった楽曲。ヴィンテージ・ソウルのレトロな味わいを残した仕上がり。Annのヴォーカルが際立っていい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=2Kg0kc-VmRQ

「Can I Get A Witness」
Jam & Lewisプロデュースらしからぬハウス・チューン?と思いきや、しっかりSteve "Silk" Hurleyが共同プロデュースにクレジットされていました。

「I'm Here For You」
タイトル曲はPaul Jackson Jr.、Freddie Washington、Ricky Lawson、Paulinho Da Costa、Gerald Albrightといった名うてのミュージシャン達がバックを務める感動バラード。ムーディーなGerald Albrightのサックスがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=01JU7CDhMek

「I'll Be Your Everything」
Steve "Silk" Hurleyプロデュース。Jam & Lewisプロデュース曲とは異なるダンサブル・サウンドで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=pNCsTYo4A7U

「Let Old Memories Be」
James "Big Jim" Wrightも共同プロデュースしています。ヴィンテージ感のあるゴスペル・バラード。Perriがバック・コーラスを務めます。
https://www.youtube.com/watch?v=yuk7IpCXWrY

「Lord How I Need You」
コンテンポラリー・ゴスペルらしいヴォーカル・ワークのバラードが感動のフィナーレを飾ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=DKfOIdNsw_4

Ann Nesbyの他作品もチェックを!

『Put It on Paper』(2002年)


『Make Me Better』(2003年)


『In the Spirit』(2006年)


『This Is Love』(2007年)


『The Lula Lee Project』(2009年)


『Living My Life』(2014年)
posted by ez at 03:05| Comment(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年08月20日

Eric Clapton『No Reason To Cry』

The Band、Dylanらとも共演☆Eric Clapton『No Reason To Cry』

発表年:1976年
ez的ジャンル:レイドバック系ロック
気分は... :派手さはなくとも良い!

久々にレジェンド・ギタリストEric Claptonの紹介です。
セレクトしたのは『No Reason To Cry』(1976年)です。

これまで当ブログで紹介したClapton<のソロ・アルバムは以下の3枚(発売順)。

 『461 Ocean Boulevard』(1974年)
 『There's One In Every Crowd』(1975年)
 『Another Ticket』(1981年)

約11年ぶりのClaptonの紹介です。
数日前に60年代、70年代Claptonを収めた4時間以上のドキュメンタリーを観ていたら、70年代のClapton作品が聴きたくなりました。

本作『No Reason To Cry』(1976年)は、ライヴ・アルバム『E. C. Was Here』(1975年)に続くアルバムであり、スタジオ作としては『There's One In Every Crowd』(1975年)に次ぐ作品となります。

YardbirdsJohn Mayall's Bluesbreakers,CreamBlind FaithDerek & The Dominosと常にバンドで悩み続けてきたClaptonが、『461 Ocean Boulevard』以降組んだ自身のバンドで、ようやくバンドを楽しめるようになった様子が、先のドキュメンタリーに収められていました。

そんな自身のバンドの絶頂を示したのが本作『No Reason To Cry』(1976年)です。

本作におけるバンド・メンバーは、Eric Clapton(vo、g)、George Terry(g)、Jamie Oldaker(ds)、Dick Sims(key) 、Carl Radle(b)、Yvonne Elliman(vo)、Marcy Levy(vo)。『There's One In Every Crowd』から続く息の合った面々です。

レコーディングはThe BandShangri-la Studios等で行われ、The BandRick Danko/Garth Hudson/Richard Manuel/Robbie Robertson//Levon Helm)、Bob DylanThe Rolling StonesRon WoodGeorgie FameBilly PrestonJesse Ed Davis等の多彩なゲストも参加しています。

特にThe Bandとの共演は、Claptonが長らく望んでいたものであり、それが遂に実現しました。先のドキュメンタリーでもCream解散後、Claptonが一人でThe Bandメンバーに会いに行き、本当はThe Bandへの加入を懇願しようと思っていたが、実際には話を切り出せずに帰ってきたエピソードが挿入されていました。

プロデュースはRob FraboniEric ClaptonCarl Radle

UKアルバム・チャート第8位、USアルバム・チャート第15位でしたが、ロック・スターEric Claptonの作品としては特筆するほどのチャート・アクションではありませんでした。そのため、豪華ゲストを呼んできたわりには地味な作品との見方も強く、必ずしも評価の高いClapton作品ではないかもしれません。

しかし、そうしたロック・スターの呪縛から解放されることこそが、この時期のClaptonが望んだことであり、トップランナーのプレッシャーを受けることなく、普段着で自分がやりたい音楽を演奏するClaptonが先のドキュメンタリーでも強調されていました。豪華ゲストとの共演も、彼らを大げさに扱うのではなく、Claptonのバンドに遊びに来た仲間の一人として扱っているのが本作の良さであるとドキュメンタリーで説明され、妙に納得してしまいました。

僕もロック少年だった頃は、CreamDerek & The Dominosと同じ尺度で、70年代ソロ作を聴いていました。そのため、『461 Ocean Boulevard』(1974年)は許容範囲でしたが、『There's One In Every Crowd』(1975年)、『No Reason To Cry』(1976年)には物足りなさを感じていました。

しかしながら、現在は『There's One In Every Crowd』『No Reason To Cry』も心地好く聴くことができます。

まぁ、各曲の詳しい解説はClaptonマニアの方々にお任せして、リラックスして本作を聴きたいと思います。

ジャケも夏らしくていいですね。

全曲紹介しときやす。

「Beautiful Thing」
Rick Danko/Richard Manuel作。The Bandとの共演らしいレイドバックした仕上がり。女性コーラス隊によるゴスペル調コーラスもいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=rtoIIRy1GoA

The Bandのみのデモ・トラックが『A Musical History』(2005年)にリリースされています。

「Carnival」
Eric Clapton作。アルバムからの2ndシングル。スワンピーなファンキー・ロックはフリーソウル的な聴き方もできるのでは?エキサイティングな疾走感があっていいですね。ここでもソウルフルな女性コーラス隊が活躍します。
https://www.youtube.com/watch?v=2iWdxhqRxfc

「Sign Language」
Bob Dylan作。Bob Dylanとの共演もファンには嬉しい顔合わせですね。レイドバックしたサウンドをバックに、Bob Dylanのクセのあるヴォーカル・スタイルにClaptonが何とか合わせようとしているのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=jKCTC7sogL4

「County Jail Blues」
Alfred Fields作。B.B. Kingも演奏したブルース作品をカヴァー。昔は何とも思いませんでしたが、今聴くと実に格好良いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=snsTlS-mcqA

「All Our Past Times」
Eric Clapton/Rick Danko作。これもClaptonのThe Bandへの憧れを感じる音ですね。また、所々次作『Slowhand』(1977年)の名バラード「Wonderful Tonight」を感じさせるのも興味深いです。
https://www.youtube.com/watch?v=rPoaevqhasI

「Hello Old Friend」
Eric Clapton作。アルバムからの1stシングル。USシングル・チャート第24位となっています。Claptonのシンガー/ソングライターとしての成長を感じる1曲ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=1LTPRub6vKE

「Double Trouble」
Otis Rush作。ブルース名曲をカヴァー。こういうディープなブルース演奏を普段着でできるようになったことこそが、この時期のClaptonの魅力かもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=zRbzgiCJUPU

「Innocent Times」
Eric Clapton/Marcy Levy作。ここでは後にShakespears Sisterでも活躍するMarcy Levy(Marcella Detroit)がヴォーカルをとります。バンド・メンバーにリード・ヴォーカルを任せるあたりに、いかにClaptonがこのバンドを大切にしているかが分かるのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=Q8JGWkix2Ck

「Hungry」
Marcy Levy/Dicky Simms作。ソングライティングも含めて、この時期のバンドの充実ぶりが窺えます。Derek & The Dominos的なエッセンスも感じられるのも魅力です。
https://www.youtube.com/watch?v=3Cb_XypHkBA

「Black Summer Rain」
Eric Clapton作。本編ラストは素敵なバラードで締め括ってくれます。先に挙げた名バラード「Wonderful Tonight」とセットで聴きたくなります。
https://www.youtube.com/watch?v=m4lB90-RzSQ

「Last Night」
CDボーナス・トラック。偉大なブルース・マンLittle Walterのカヴァー。ディープなブルースをClaptonが望むようにカヴァーしているのがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=AiUe9VnWy9Q

Eric Claptonの70年代から80年代初めの他作品もチェックを!

『Eric Clapton』(1970年)


Derek & The Dominos『Layla and Other Assorted Love Songs』(1970年)


『Eric Clapton's Rainbow Concert』(1973年)


『461 Ocean Boulevard』(1974年)


『There's One In Every Crowd』(1975年)


『E.C. Was Here』(1975年)


『Slowhand』(1977年)


『Backless』(1978年)


『Just One Night』(1980年)


『Another Ticket』(1981年)
posted by ez at 01:13| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年08月19日

Femi Kuti『Africa For Africa』

Fela Kutiの長男、その遺志を継ぐアフロビート☆Femi Kuti『Africa For Africa』

発表年:2010年
ez的ジャンル:Fela Kuti継承者アフロビート
気分は... :アフロビートDNA!

今回はアフロビートの創始者Fela Kutiの長男、Femi Kuti『Africa For Africa』(2010年)です。

Femi KutiFela Kutiの長男として、1962年UKのロンドンで生まれました。

ちなみに以前に当ブログで紹介したSeun Kutiは、Fela Kutiの一番下の息子です。

1979年に父Fela KutiのバンドAfrica 70のメンバーとなり、その発展形であるEgypt 80ではバンド・リーダーを務めていた時期もありました。

1986年には自身のバンドPositive Forceを結成し、1989年には初の自身のリーダー作『No Cause for Alarm?』をリリースしています。

1997年のFela Kutiの死去以降は、アフロビートの継承者としての注目度も高まり、そのDNAを受け継いだあアルバムをリリースし続けています。

今年には息子Made Kutiの作品とのカップリングによる2枚組CDFemi Kuti & Made Kuti『Legacy +』をリリースしています。

本作『Africa For Africa』(2010年)は、前作『Day by Day』(2008年)から2年ぶりのアルバムとなりますが、それまでのアフロビートをアップデートさせようとするアプローチではなく、原点回帰で父Fela Kuti譲りのアグレッシヴな直球アフロビートを聴かせてくれたことで高評価を得たアルバムです。レコーディングもナイジェリアで行われました。

ジャケの雰囲気も父Fela Kutiのアルバム・ジャケを彷彿させるものであり、Femi Kutiの本作に賭ける意欲が伝わってきます。

プロデュースはデビュー当時からFemi Kuti作品に関わってきたフランス人プロデューサー/エンジニアのSodi

Fela Kutiの遺志を継ぐ"闘うアフロビート"を展開しつつ、格好良いダンスミュージックとしてのアフロビートのエッセンスをうまく強調できている点がいいですね。

アフロビートの格好良さをダイレクトに満喫できるという意味では、普段アフロビートを聴かない人の入門アルバムとしても最適だと思います。

アフロビートの継承者による王道アフロビートをぜひ!

全曲紹介しときやす。

「Dem Bobo」
重厚なホーン・サウンドが牽引するオープニング。ゆったりした中にも力強さが漲っているのがいいですね。70年代Fela Kutiアルバムにタイムスリップした感覚になります。
https://www.youtube.com/watch?v=GirD-VXGk5k

「Nobody Beg You」
パワー全開のアグレッシヴで扇動的なアフロビートで突っ走ります。これぞアフロビートの継承者ですね。みんなが求めているアフロビートです!
https://www.youtube.com/watch?v=oLdk1nLdJNs

「Politics In Africa」
タイトルからしてFela Kuti直系のアフロビートですね。軽快なサウンドに乗って、Femi Kutiが鋭いメッセージを突き刺します。キーボードの音色がケバケバしくなく洗練されている点のみが2010年仕様の部分かもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=iCx5XrXCsIo

本作には未収録ですが、アフロ・トライバル・ハウス好きの方はTimmy Regisfordがリミックスした12"も要チェックです。

「Bad Government」
コレもFela Kutiを継承するタイトルですね。厚みのあるホーン・アンサンブル、扇動的なオルガン、躍動するビート、ストレートに政府を批判する歌詞すべてがFela Kuti譲りです。
https://www.youtube.com/watch?v=dmSnu9Wkejo

「Can't Buy Me」
アッパーかつパワフルに疾走する漆黒のアフロビート。思い切り巻き舌で叫ぶFemi Kutiのヴォーカルもいいですね。思わず拳を突き上げて、一緒に♪Can't Buy Me♪Ctan't Buy Me♪Can't Buy Me♪と叫んでしまいます。
https://www.youtube.com/watch?v=ai3qV039-Xw

「Africa For Africa」
タイトル曲はレゲエ調。Fela Kuti×Bob Marleyの遺志を受け継ぐいったところでしょうか。ホーン隊はしっかりアフロ・ファンクしています。
https://www.youtube.com/watch?v=QMrdPevAsmQ

「Make We Remember」
グルーヴィーなオルガンと共に始まる黒人リーダー賛歌。父Fela Kutiをはじめ、マルコムX、キング牧師、ネルソン・マンデラなどの名も登場します。
https://www.youtube.com/watch?v=upX7GQsm8b8

「Obasanjo Don Play You Wayo」
素晴らしいホーン・アンサンブルが印象的です。友に、兄弟に、姉妹に、父に、母に、娘に、妻に呼びかけます。
https://www.youtube.com/watch?v=jbfP4LQLioc

「Boys Dey Hungry For Town」
軽快に疾走するアフロビート。ベースが牽引する原点回帰らしいグルーヴを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=XngStem4QpA

「Now You See」
個人的にはアルバムで一番のお気に入り。ダンスミュージックとしてスリリングで格好良いアフロビートを満喫できます。
https://www.youtube.com/watch?v=aqu6iTNdkNU

「No Blame Them」
少しテンポを落としたグルーヴでヴォーカルがより際立つ演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=wDKrrGYu0QI

「Yeparipa」
キャッチーなコーラスが印象的なトラック。アフリカの窮状を切々と訴えます。
https://www.youtube.com/watch?v=JZXOo17N1zw

「E No Good」
「Now You See」と並ぶ僕のお気に入り。扇動的でアッパーなアフロビートはスリリングな魅力に溢れています。
https://www.youtube.com/watch?v=pXcO52WXkCQ

「It Don't Mean」
ラストも軽快なアフロビートで締め括ってくれます。ダンスミュージックとしての格好良さがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=YUVT33FQ5nk

Femi Kutiの他作品もチェックを!

『Femi Kuti』(1995年)


『Shoki Shoki』(1998年)


『Shoki Remixed』(2000年)


『Fight to Win』(2001年)


『Africa Shrine』(2004年)


『Day by Day』(2008年)


『No Place for My Dream』(2013年)


『One People One World』(2018年)


Femi Kuti & Made Kuti『Legacy +』(2021年)
posted by ez at 07:38| Comment(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする