発表年:2021年
ez的ジャンル:ブラジル人SSW
気分は... :人新世の危機をどう乗り切るか?
ブラジルもの新作からCesar Lacerda『Nacoes, Homens ou Leoes』です。
Cesar Lacerdaは、ブラジル・ミナス出身のシンガー・ソングライター。
これまで『Porque da voz』(2013年)、『Paralelos & Infinitos』(2015年)、Romulo Froes & César Lacerda『O meu nome e qualquer um』(2016年)、『tudo tudo tudo tudo』(2017年)といったアルバムをリリースされています。
最新作『Nacoes, Homens ou Leoes』はバンド・サウンドの中心の従来作品と比べて、プログラミンを大胆に取り入れ、エレクトリックなエッセンスを強調しているのが特徴です。
アルバムはAto I: Nacoes(第一幕『国』)、Ato II: Homens(第二幕『人間』)、Ato III: Leoes(第三幕『ライオン』)という三部構成になっています。
収録曲の中に「Antropoceno(人新世)」というタイトルのトラックがあることに象徴されるように、地球環境に対する危機感が大きなテーマとなっています。
ノーベル科学賞受賞者パウル・クルッツェンによって提唱された「人新世(Anthropocene:アントロポセン)」とは、地質学的に見て、地球は人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆い尽くした新たな年代に突入したことを意味するものです。
ベストセラー書籍となった、斎藤幸平著『人新世の「資本論」』も大きなインパクトを残したのではないでしょうか。僕も昨年同書を読み、かなり考えさせられました。
話を本作に戻すと、地球環境に対する危機感をテーマとしながらも、モダンなMPBサウンドを楽しむことができます。
プロデュースはCesar Lacerda自身とFabio Pinczowski。
多様なシンガーがフィーチャリングされているのもアルバムを魅力的なものにしています。
また、ブラジル音楽ファンにはお馴染みのベテラン作詞家Ronaldo Bastosとの共作も2曲含まれます。
地球の未来のために、自分達の足下を見つめ直しながら、モダンなMPBワールドを楽しみましょう。
全曲紹介しときやす。
Ato I: Nacoes(第一幕『国』)
「O Sol Que Tudo Sente」
妹Malvina Lacerdaをフィーチャー。Cesar Lacerda/Ronaldo Bastos作。躍動感があるモダンなMPBを楽しめるオープニング。ブラジル人らしいメロディとエレクトリックなエッセンスがうまくフィットしています。このオープニングを聴けば、本作が買いであることがわかるはずです。
https://www.youtube.com/watch?v=K5XknZcIKZw
「Parque Das Nacoes」
アンゴラ出身の女性シンガーAline Frazaoをフィーチャー。Cesar Lacerda/Luca Argel作。流浪の民がテーマとなっています。純粋に男女デュエットによる哀愁メロウとしても楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=1UZ6p-Ia1So
「Me Diz Por Que Brigamos」
Cesar Lacerda作。メロウなラブソングのようにも聴こえますが、第一幕のテーマである国家につながる深い意味が込められています。
https://www.youtube.com/watch?v=y9qZk3WKFK4
「Parece Pouco」
ブラジル人女性シンガーXenia Francaをフィーチャー。Cesar Lacerda/Luca Argel作。リラックスしたレゲエ・チューンを男女デュエットで聴かせてくれます。ブラジリアン・レゲエって独特の味わいがあっていいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Vo7udev2ZfA
Ato II: Homens(第二幕『人間』)
「Quem Vai Sonhar O Sonho」
妹Malvina Lacerdaを再びフィーチャー。Cesar Lacerda作。Cesarがラップ調の囁きで地球環境への危機を訴えます。コズミックなエレクトロ・サウンドが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=hMINwYGA9RY
「Antropoceno」
Cesar Lacerda作。前述のように人新世をタイトルに冠したトラック。哀愁サウンドをバックに♪地球は最後のサインを出している♪と警鐘を鳴らします。
https://www.youtube.com/watch?v=I0Nfnfe5Ap4
「Mudar A Vida」
Cesar Lacerda/Ronaldo Bastos作。Bastosによる♪人生を変えたくなった♪詩人みたいに、徹底的に♪という歌詞が印象的です。その歌詞がサウンド溶け込んでいく美しい音世界は、青く美しい地球本来の姿のように思えてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=4ucb0h2dF5c
「O Que Eu Nao Fiz」
Dandara Modesto/Filipe Cattoをフィーチャー。Cesar Lacerda/Romulo Froes作。♪僕は何をしなかったのか。そして、何をしなければならないのか♪という歌詞に考えさせられます。ヴォーカルをわざと歪ませて耳障りを悪くさせているのは手が込んでいます。
https://www.youtube.com/watch?v=OGbjMsle9bc
Ato III: Leoes(第三幕『ライオン』)
「Se Hoje O Mundo Acabar」
Cesar Lacerda作。美しいバラード。♪世界が終わってしまっても、人生の最後に僕らの愛は残る♪と愛のチカラを説きます。
https://www.youtube.com/watch?v=M81h_YvEv8Y
「Desejos De Um Leao」
Marcelo Jeneciをフィーチャー。Cesar Lacerda/Uiu Lopes作。寓話を題材としているようですが、リオのオルタナ・ポップ第三世代アーティスト好きの人も気に入りそうなドリーミーナエレクトリック・ポップに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=83FbjqLqa6Q
「Amanha」
USミュージシャンBen Lamar Gayをフィーチャー。Cesar Lacerda/Luca Argel作。♪明日があるために、明日はあるだろう♪と未来への希望を綴ってアルバムは幕を閉じます。
https://www.youtube.com/watch?v=PtZG96EU0p4
Cesar Lacerdaの他作品もチェックを!
xd
『Porque da voz』(2013年)

『Paralelos & Infinitos』(2015年)
Romulo Froes & César Lacerda『O meu nome e qualquer um』(2016年)
『tudo tudo tudo tudo』(2017年)