2022年03月06日

Robert Glasper『Black Radio III』

Black Radioシリーズの第3弾☆Robert Glasper『Black Radio III』

発表年:2022年
ez的ジャンル:進化形ジャズ
気分は... :気負わず自然体で!

新作アルバムから進化形ジャズの牽引者Robert GlasperBlack Radioシリーズの第3弾『Black Radio III』です。

1978年、テキサス州ヒューストン出身のジャズ・ピアニストRobert Glasperに関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の10枚(Robert Glasper Experiment(RGE)名義や彼の参加ユニットR+R=Nowの作品も含む)。

 『In My Element』(2007年)
 『Double Booked』(2009年)
 『Black Radio』(2012年)
 『Black Radio Recovered: The Remix EP』(2012年) ※リミックスEP
 『Black Radio 2』(2013年)
 『Covered』(2015年)
 Miles Davis & Robert Glasper『Everything's Beautiful』(2016年)
 『ArtScience』(2016年)
 R+R=Now『Collagically Speaking』(2018年)
 『Fuck Yo Feelings』(2019年)

『Fuck Yo Feelings』(2019年)でBlue Noteを離れ、Concord傘下のLoma Vistaと契約したRobert Glasper

映画『The Photograph』(2020年)のサントラ提供を挟んで、『Fuck Yo Feelings』以来のスタジオ・アルバムとしてLoma Vistaからリリースされたのが『Black Radio III』です。

『Black Radio』(2012年)、『Black Radio 2』(2013年)に続く、9年ぶりのシリーズ第3弾となった『Black Radio III』

これまでの2作はRobert Glasper Experiment(RGE)名義でしたが、本作はRobert Glasperのソロ名義です。

本作でも豪華なシンガー/ラッパーがフィーチャリングされています。

Q-TipEsperanza SpaldingBJ The Chicago KidH.E.R.Meshell NdgeocelloLalah HathawayCommonMusiq SoulchildPosdnous(Pos)De La Soul)、Gregory PorterLedisiPJ MortonIndia.ArieJennifer HudsonKiller MikeBig K.R.I.TAmir SulaimanD SmokeTiffanyGoucheYebbaAnt Clemonsという面々です。

レコーディングにはRobert Glasper (key、p、el-p、ds)以下、Derrick Hodge (b、strings)、Chris Dave (ds)という『Black Radio』(2012年)を共に創り上げたRobert Glasper Experiment(RGE)最強メンバー、同じくRGEの同僚Jahi Sundance(turntables)、 R+R=Nowの盟友であるTerrace Martin(sax、syn)、Justin Tyson (ds、key)というメンバーが名を連ねます。

それ以外にもDJ Jazzy Jeff (turntables)、Christian Scott aTunde Adjuah (spoken word)、Isaiah Sharkey(g)、Marlon Williams(g)(元Fishbone)、Burniss Travis II(b)、 Pino Palladino(b)、Thaddaeus Tribbett(b)、Cory Henry(organ)、Bryan-Michael Cox(synths)、Keyon Harrold(tp)、Marcus Strickland(b-cl)等がレコーディングに参加しています。

プロデュースはRobert Glasper自身。
Terrace MartinJahi SundanceBryan-Michael Coxとの共同プロデュース曲もあります。

さすがに『Black Radio』(2012年)リリース時のようなインパクトはありませんが、逆にいえば、ジャズとR&B/Hip-Hopというジャンルの境を意識することなく聴くのが当たり前の時代になったということだと思います。その意味で Glasperの果たした役割の大きさを再確認できます。

気負うことなく自然体のBlack Radioワールドを楽しみましょう。

全曲紹介しときやす。

「In Tune」
Amir Sulaimanをフィーチャー。Glasperのピアノをバックに、Amir Sulaimanがスポークン・ワードが響きます。薄らとKeyon Harroldのトランペットもき聴こえてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=U7s5S4imC5g

「Black Superhero」
Killer Mike, BJ The Chicago Kid,Big K.R.I.Tをフィーチャー。DJ Jazzy JeffChristian Scott aTunde Adjuah参加しています。Glasper、HodgeDaveのトリオ演奏に、DJ Jazzy Jeffのターンテーブルが絡んでくるあたりがBlack Radioらしいですね。BJ The Chicago KidのヴォーカルとKiller Mike、Big K.R.I.Tのラップのバランスもいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=2z8piOggNsw

「Shine」
D Smoke & TiffanyGoucheをフィーチャー。このトラックではGlasperがドラムも担当しています。TiffanyGoucheの女性ヴォーカルに、D Smokeのラップが絡むメロウR&B調の仕上がりです。終盤のKeyon Harroldのミュート・トランペットもいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=v5757BToo0M

「Why We Speak」
Q-Tip & Esperanza Spaldingをフィーチャー。ここでのリズム隊はJustin TysonとBurniss Travis II。Esperanzaのキュート・ヴォーカルが映えるドリーミー・メロウ・チューン。Q-Tipの出番は短いですが、Qちゃんらしいフロウで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=kVdYZARwie0

「Over」
Yebbaをフィーチャー。この曲もリズム隊はJustin TysonとBurniss Travis II。Jahi Sundanceのターンテーブルも加わります。Glasperの美しいピアノをバックに、Yebbaが透明感のあるヴォーカルを聴かせてくれるミディアム・グルーヴです。なかなかキャッチーです。
https://www.youtube.com/watch?v=wgeoQ45zHA4

「Better Than I Imagined」
H.E.R. & Meshell Ndgeocelloをフィーチャー。リズム隊はHodgeとJustin Tysonという組み合わせ。H.E.R.が彼女らしい憂いを帯びたヴォーカルを聴かせてくれます。Ndgeocelloのしみじみとしたスポークン・ワードもいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=3MNiu8ISOPk

「Everybody Wants To Rule the World」
Lalah Hathaway & Commonをフィーチャー。Tears for Fears、1985年の大ヒット曲のカヴァーです。テンポを落とし、Lalah Hathawayの雰囲気のあるヴォーカルが映えるようにしていますが、それでもJustin Tysonの乾いたビートをしっかり効かせているのがいいですね。終盤はCommonがラップで盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=m_lRJ_T5xYg

「Everybody Love」
Musiq Soulchild & Posdnous(Pos)(De La Soul)をフィーチャー。GlasperとJahi Sundanceの共同プロデュース。Musiq Soulchildが素晴らしいヴォーカル・ワークで魅せてくれます。De La Soul好きとしてはPosのラップが聴けるのも嬉しい限りです。
https://www.youtube.com/watch?v=aCf3pWK8Ddg

「It Don't Matter」
Gregory Porter & Ledisiをフィーチャー。ここでのリズム隊はPino PalladinoとDaveという組み合わせ。Gregory Porter & Ledisiという実力派シンガー二人が素晴らしい歌声で魅せてくれるミディアム・バラード。Glasperのメロウ・エレピが映えます。
https://www.youtube.com/watch?v=MYV8664GNgo

「Heaven's Here」
Ant Clemonsをフィーチャー。GlasperとBryan-Michael Coxの共同プロデュース。Ant Clemonsのオートチューン・ヴォーカルが映えるビューティフル・バラード。
https://www.youtube.com/watch?v=xiKszKDEiWQ

「Out of My Hands」
Jennifer Hudsonをフィーチャー。GlasperとTerrace Martinの共同プロデュース。本作では異色の4つ打ちのダンサブル・チューン。Jennifer Hudsonのパワフル・ヴォーカルともに疾走します。
https://www.youtube.com/watch?v=vG_T-N_zFaY

「Forever」
PJ Morton & India.Arieをフィーチャー。二人の素晴らしいヴォーカルに魅せられる感動バラード。終盤にはJustin Tysonが印象的なドラミングを披露してくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=cQN_hlYIYyQ

「Bright Lights」
GlasperとTerrace Martinの共同プロデュース。Ty Dolla $ignがヴォーカル参加。ラストはGlasperのピアノとJustin Tysonのドラムのみのバッキングで、Ty Dolla $ignが祈るような歌声を聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=ZDOZlEtpOok

Robert Glasper関連の過去記事もチェックを!

『In My Element』(2007年)
イン・マイ・エレメント

『Double Booked』(2009年)
Double Booked

Robert Glasper Experiment『Black Radio』(2012年)
ブラック・レディオ

Robert Glasper Experiment『Black Radio Recovered: The Remix EP』(2012年)
Black Radio Recovered: the Remix Ep

Robert Glasper Experiment『Black Radio 2』(2013年)
ブラック・レディオ2

『Covered』(2015年)
カヴァード

Miles Davis & Robert Glasper『Everything's Beautiful』(2016年)
エヴリシングス・ビューティフル

Robert Glasper Experiment『ArtScience』(2016年)
アートサイエンス

R+R=Now『Collagically Speaking』(2018年)
コラージカリー・スピーキング

『Fuck Yo Feelings』(2019年)
ファック・ヨ・フィーリングス
posted by ez at 13:48| Comment(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月04日

Gato Barbieri『Chapter Three: Viva Emiliano Zapata』

シリーズ第三弾はビッグバンド・ラテン・ジャズ☆Gato Barbieri『Chapter Three: Viva Emiliano Zapata』
Chapter Three: Viva Emiliano Zapata - Originals
発表年:1974年
ez的ジャンル:ビッグバンド・ラテン・ジャズ
気分は... :最後は自由が勝利する!

アルゼンチンを代表するジャズ・ミュージシャンGato Barbieri『Chapter Three: Viva Emiliano Zapata 』(1974年)です。

アルゼンチン、サンタフェ州ロサリオ出身のテナー・サックス奏者/コンポーザーGato Barbieri(1932-2016年)に関して、当ブログで紹介した作品は以下の3枚。

 『Fenix』(1971年)
 『Bolivia』(1973年)
 『Chapter One: Latin America』(1973年)

今回紹介する『Chapter Three: Viva Emiliano Zapata 』(1974年)は、南米をテーマにしたChapterシリーズの第三弾アルバムです。

本作ではキューバ出身の名アレンジャーChico O'Farrillを迎えて、ビッグバンドによるラテン・ジャズを展開します。

レコーディングにはGato Barbieri(ts)以下、Randy Brecker(tp、flh)、Bob McCoy(tp、flh)、Victor Paz(tp、flh)、Buddy Morrow(tb)、Alan Raph(btb)、Ray Alonge(frh)、Jim Buffington(frh)、Howard Johnson(tuba、flh、bcl、bs)、Seldon Powell(piccolo、fl、as、bs)、Eddie Martinez(p、el-p)、Paul Metzke(g)、George Davis(g)、Ron Carter(b)、Grady Tate(ds)、Ray Armando(per)、Luis Mangual(per)、Ray Mantilla(per)、Portinho(per)といったミュージシャンが参加しています。

じっくり聴かせる「Milonga Triste」「Cuando Vuelva a Tu Lado」というラテン名曲のカヴァー2曲と、汎ラテン・アメリカ的な味わいのリズミック/パーカッシヴなオリジナル4曲という全6曲構成です。

特に、タイトル曲「Viva Emiliano Zapata」をはじめ、「Lluvia Azul」「El Sublime」「La Padrida」というオリジナル4曲が凄すぎます!さまざまなエッセンスが濃厚に詰め込まれ、しかも抜群に格好良い!

Gatoの情熱的なブロウを聴いていると、人間にとって本当に大切なものは何かを考えさせられます。

全曲紹介しときやす。

「Milonga Triste」
Homero Manzi/Sebastian Piana作。1905年に書かれたミロンガの名曲をカヴァー。寂しげなギターと共に始まる哀愁ラテン・ジャズ。情感たっぷりにむせび泣くGatoのブロウが胸に響きます。何故だが昭和のレトロ感の残る酒場の光景が目に浮かびます。
https://www.youtube.com/watch?v=M5D9nZQoue4

Gli Inquilini「Terra Promessa」、La Gra$A「How We Do」のサンプリング・ソースとなっています。
Gli Inquilini「Terra Promessa」
 https://www.youtube.com/watch?v=jQJkIsUfgPE
La Gra$A「How We Do」
 https://www.youtube.com/watch?v=UtMuV4-bIXE

「Lluvia Azul」
Gato Barbieri作。Chico O'Farrillのアレンジが映えるビッグバンドによるラテン・ジャズ・アンサンブルを楽しめます。ビッグバンドになっても、ChapterシリーズらしいGatoの美学が貫かれた汎ラテン・アメリカ的な味わいがあるのがいいですね。多彩なラテン・リズムを楽しめるのもサイコーです。
https://www.youtube.com/watch?v=6PIW0OudX3A

「El Sublime」
Gato Barbieri作。緩急自在のラテン・リズムによるビッグバンドによるアンサンブルと情熱的なGatoのブロウが見事にマッチした演奏です。重厚なのに軽やかなのが魅力です。
https://www.youtube.com/watch?v=sRHhte8EI0Q

「La Padrida」
Gato Barbieri作。パーカッシヴに疾走するアフロ・キューバン・ジャズ。このダイナミックでエキサイティングなグルーヴィー・サウンドはクラブジャズ好きの人も気に入るのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=vRsxDN2YLQM

「Cuando Vuelva a Tu Lado (What a Difference a Day Makes)」
1934年にメキシカン女性コンポーザーMaría Greverが書いた名曲のカヴァー。1959年のDinah Washingtonによる英語ヴァージョン「What a Difference a Day」のヒットでも有名な曲ですね。ムーディーなバッキングをかき消すようなGatoの情熱的なブロウに魅せられます。
https://www.youtube.com/watch?v=1PrhOidmSsI

「Viva Emiliano Zapata」
Gato Barbieri作。ラストはメキシコ人革命家の名を冠したタイトル曲で締め括ってくれます。アドレナリン・ドバドバのアッパーなラテン・ジャズ・グルーヴは格好良いの一言に尽きます。Gatoの男前ブロウに惚れ惚れしてしまいますね!
https://www.youtube.com/watch?v=CvumxfezosE

Gato Barbieriの他作品もチェックを!

『In Search of the Mystery』(1967年)
In Search of the Mystery (Dig)

『The Third World』(1969年)
第三世界 (日本初CD化、日本独自企画盤、解説付き)

『El Pampero』(1971年)
エル・パンペロ (日本初CD化、日本独自企画盤、解説付き)

『Fenix』(1971年)
フェニックス (日本初CD化、日本独自企画盤、解説付き)

『Last Tango in Paris』(1972年)
Last Tango In Paris: Original MGM Motion Picture Soundtrack

『Bolivia』(1973年)
ボリビア (日本初CD化、日本独自企画盤、解説付き)

『Chapter One: Latin America』(1973年)
Chapter One: Latin America (Dig)

『Under Fire』(1973年)
アンダー・ファイアー (日本初CD化、日本独自企画盤、解説付き)

『Chapter Two: Hasta Siempre』(1973年)
Chapter Two: Hasta Siempre (Dig)

『Yesterdays』(1974年)
イエスタデイズ (日本初CD化、日本独自企画盤、解説付き)

『Chapter Four: Alive in New York』(1975年)
Chapter 4.Live in New York

『El Gato』(1975年)
エル・ガトー (日本初CD化、日本独自企画盤、解説付き)

Gato Barbieri & Dollar Brand『Confluence』(1975年)
コンフルエンス

『Caliente!』(1976年)
Caliente

『Ruby Ruby』(1977年)
Ruby Ruby (Reis) (Rstr) (Dig)

『Tropico』(1978年)
Tropico: Originals (Dig)

『Bahia』(1982年)
Gato Barbieri: Bahia

『Apasionado』(1983年)
Apasionado

『Para Los Amigos』(1984年)
Gato...Para Los Amigos

『Passion And Fire』(1988年)
Passion and Fire
posted by ez at 01:26| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月02日

『今の気分は...Hope for peace』

過去記事から10曲セレクトするシリーズです。
今回はウクライナ侵攻の一刻も早い収束を願い、ピースなトラックを10曲セレクトしました。

全て過去記事で紹介済なので、気に入った曲があれば過去記事もご参照下さい。

Curtis Mayfield「We Got to Have Peace」
https://www.youtube.com/watch?v=jZeKT0UctOQ
From 『Roots』(1971年)


Flora Purim「Search For Peace」
https://www.youtube.com/watch?v=4sXfiRHYVg0
From 『Stories To Tell』(1974年)
Stories To Tell

Dr. John「Peace Brother Peace」
https://www.youtube.com/watch?v=fPcIqqUhVtk
From 『In The Right Place』(1973年)
イン・ザ・ライト・プレイス

The Jones Girls「At Peace With Woman」
https://www.youtube.com/watch?v=sZeB5USMrsM
From 『At Peace With Woman』(1980年)
Jones Girls: At Peace With Woman

The Rance Allen Group「Peace Of Mind」
https://www.youtube.com/watch?v=VTO-mP2F7mw
From 『Say My Friend』(1977年)
セイ・マイ・フレンド

Joe Bataan「Peace, Friendship, Solidarity」
https://www.youtube.com/watch?v=7Q5qzUt086A
From 『Salsoul』(1973年)
SALSOUL +1

Al Johnson「Peaceful」
https://www.youtube.com/watch?v=Ci2KcZe9dtU
From 『Peaceful』(1978年)
ピースフル(紙ジャケット仕様)

Mighty Ryeders「Let There Be Peace」
https://www.youtube.com/watch?v=IQ_HGbGtq3w
From 『Help Us Spread the Message』(1978年)
ヘルプ・アス・スプレッド・ザ・メッセージ(紙ジャケット仕様)

Lonnie Liston Smith & The Cosmic Echoes「Peace & Love」
https://www.youtube.com/watch?v=5jvd_hQ3fso
From 『Reflections Of A Golden Dream』(1976年)
Reflections of a Golden Dream

Jon Lucien「A Prayer for Peace」
https://www.youtube.com/watch?v=L5_gJnvP8ks
From 『Mind's Eye』(1974年)
マインズ・アイ(紙ジャケット仕様)
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