2022年04月03日

Makaya McCraven『Deciphering The Message』

50〜60年代Blue Note作品の再構築☆Makaya McCraven『Deciphering The Message』

発表年:2021年
ez的ジャンル:ビート・サイエンティスト系今ジャズ
気分は... :科学×芸術!

新作ジャズから、ビート・サイエンティストとの異名を持つMakaya McCravenの最新作『Deciphering The Message』です。

Makaya McCravenは1983年生まれのドラマー/ビートメイカー/プロデューサー。現在はシカゴを拠点としています。

Hip-Hop世代のジャズ・ドラマーとして、今ジャズ好きにはお馴染みのアーティストですね。

そのMakaya McCravenがジャズの名門Blue Noteからリリースした最新作が『Deciphering The Message』です。

本作『Deciphering The Message』は、Blue Noteからのデビュー・アルバムらしく、1950〜60年代のBlue Note作品を再構築したアルバムとなっています。

カヴァーではなく、オリジナル音源を活かした再構築というところが、ドラマー/ビートメイカー/プロデューサーであるMakaya McCravenらしいですね。

レコーディングにはMakaya McCraven(ds、per、g、b、key、syn)以下、Joel Ross(vibe)、De'Sean Jones(ts)、Jeff Parker(g)、Matt Gold(g)、Junius Paul(b)、Marquis Hill(tp)、Greg Ward(as)といったミュージシャンが参加しています。

オリジナルの雰囲気を受け継ぎつつ、今ジャズ的なものにアップデートしているトラックもあれば、オリジナルの一部を切り取って、大胆にリボーンさせているトラックもあります。

その意味では、オリジナルと聴き比べるのが楽しいと思います。

1枚で1950〜60年代のBlue Noteのジャズ・ワールドと、2020年代の感性の今ジャズの両方を楽しめる興味深い1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。
※オリジナルもセットで紹介しておきますので、セットでチェックしてみてください。

「A Slice Of The Top」
Hank Mobleyのリメイク(Hank Mobley作)。オリジナルは『 A Slice Of The Top』(1966年)収録。オリジナルにあるHank MobleyLee Morganらのホーン隊のサウンドを活かしつつ、Makayaが新たなビートを加えることで、現代的なジャズにアップデートさせています。
https://www.youtube.com/watch?v=xT32LyUzrZI

Hank Mobley「A Slice Of The Top」
 https://www.youtube.com/watch?v=RGk_DBUrAjE
『A Slice Of The Top』(1966年)


「Sunset」
Kenny Dorhamのリメイク(Kenny Dorham作)。これもMakayaがビートを再構築することで、コズミックな魅力が加味されます。Kenny DrewのピアノとJeff Parkerのギターが時空を超えて絡むのもいいですね。Junius Paulによる鳥の鳴き声のホイッスルにも不思議なコズミック感があります。
https://www.youtube.com/watch?v=NxgytefuF7o

Kenny Dorham「Sunset」
 https://www.youtube.com/watch?v=t90eudo_Ryk
『Whistle Stop』(1961年)


「When Your Lover Has Gone」
Art Blakey & The Jazz Messengersのリメイク(Einar Aaron Swan作)。オリジナルは『A Night In Tunisia』(1960年)のボーナス・トラックとして聴くことができます。このトラックは再構築に相応しいMakayaのビートメイキングのセンスを感じるサウンドで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=RXkL2Y_Xows

Art Blakey & The Jazz Messengers「When Your Lover Has Gone」
 https://www.youtube.com/watch?v=ZyJ1fEHnNBc
『A Night In Tunisia』(1960年)


「Ecaroh」
Horace Silverのリメイク(Horace Silver作)。オリジナルは『Horace Silver Trio』(1952,53年)収録。オリジナルの雰囲気を受け継ぎつつ、Horace Silverのピアノのループを活かし、よりHip-Hop感覚のジャズで楽しませてくれます。Joel Rossのヴァイヴもいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=B1BdejKKJwk

Horace Silver「Ecaroh」
 https://www.youtube.com/watch?v=Wn3VIgRJT2w
『Horace Silver Trio』(1952,53年)


「Tranquillity」
Bobby Hutchersonのリメイク(Bobby Hutcherson作)。オリジナルは『Components』(1965年)収録。オリジナルはHutchersonのヴァイヴを生かしたバラードでしたが、こここでは激しいビートに置き換えて、今ジャズならではの表情で聴かせます。
https://www.youtube.com/watch?v=cY8VbOQ2Phc

Bobby Hutcherson「Tranquillity」
 https://www.youtube.com/watch?v=njvQG1x8ofM
『Components』(1965年)
コンポーネンツ

「Wail Bait」
Clifford Brownのリメイク(Quincy Jones作)。オリジナルは『Memorial Album』(1953年)収録。オリジナルはアフロ・キューバン調のビートで始まりますが、ここではトライバルなMakayaのビートが際立つ、格好良い1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=t1MFsA9jKuQ

Clifford Brown「Wail Bait」
 https://www.youtube.com/watch?v=DNVpemfZ4dE
『Memorial Album』(1953年)


「Coppin' The Haven」
Dexter Gordonのリメイク(Kenny Drew作)。オリジナルは『One Flight Up』(1964年)収録。これはビートメイカーらしい再構築。オリジナルとは別物のHip-HopジャズへRebornしています。これはかなり格好良い!
https://www.youtube.com/watch?v=3WFKCBd_UC0

Dexter Gordon「Coppin' The Haven」
 https://www.youtube.com/watch?v=MZ6PYUrtH5c
『One Flight Up』(1964年)


「Frank's Tune」
Jack Wilsonのリメイク(Frank Strozier作)。オリジナルは『Easterly Winds』(1967年)収録。Jeff ParkerのギターとMakayaのHip-Hopビートの絡みが絶妙な2021年に相応しいBlue Noteジャズに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=ZyRULVs_MKo

Jack Wilson「Frank's Tune」
 https://www.youtube.com/watch?v=M76r5UQOU6Y
『Easterly Winds』(1967年)


「Autumn In New York」
Kenny Burrellのリメイク(Vernon Duke作)。オリジナルは『Blue Lights, Vol. 1』(1958年)収録。オリジナルはメロウ・ギター・バラードですが、ここではその印象的なギター・ループを生かしたHip-Hop的なメロウ・ジャズで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=_b05lkQ5T4Y

Kenny Burrell「Autumn In New York」
 https://www.youtube.com/watch?v=r1E31yVClW4
Kenny Burrell『Blue Lights, Vol. 1』(1958年)


「Monaco」
Kenny Dorhamのリメイク2曲目(Kenny Dorham作)。オリジナルは『Round About Midnight At The Cafe Bohemia』(1956年)収録。Makayaらしいビートによる再構築を楽しめます。オリジナルではKenny Burrellがギター・ソロを披露しますが、ここではJeff Parkerがソロを披露してくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=BjPVc649yzY

Kenny Dorham「Monaco」
 https://www.youtube.com/watch?v=siM6xWDmoxk
『Round About Midnight At The Cafe Bohemia』(1956年)


「Mr. Jin」
Art Blakey & The Jazz Messengersのリメイク2曲目(Wayne Shorter作)。オリジナルは『Indestructible』(1964年)収録。Art BlakeyとMakayaの時空を超えた共演を楽しみましょう。一方で、ビート1つでこんなにも演奏全体がモダンになることを実感できるトラックでもあります。
https://www.youtube.com/watch?v=wyKKWeiuPXM

Art Blakey & The Jazz Messengers「Mr. Jin」
 https://www.youtube.com/watch?v=S_8sW8dQqyg
『Indestructible』(1964年)


「C.F.D.」
Jack Wilsonのリメイク2曲目(Jack Wilson作)。オリジナルは『Something Personal』(1966年)収録。ここでは印象的なイントロのループを使い、カリンバなどもアクセントも加えて、穏やかなトラックへと変貌させています。
https://www.youtube.com/watch?v=EqUuKkB-Rnc
(AKA “D.F.C.”) [from Something Personal by Jack Wilson]

Jack Wilson「C.F.D.」
 https://www.youtube.com/watch?v=C75ACnvqa2I
『Something Personal』(1966年)


「Black Rhythm Happening」
Eddie Galeのリメイク(Eddie Gale作)。オリジナルは『Black Rhythm Happening』(1969年)収録。オリジナルは本作の中では異色のブラック・スピリチュアル・ジャズですが、ここではコーラス部分をサンプリングし、グルーヴィー・ソウル風に仕上げています。まさにビートメイカー的なセンス全開です。
https://www.youtube.com/watch?v=LSqbCpsq6bg

Eddie Gale「Black Rhythm Happening」
 https://www.youtube.com/watch?v=dFqcZtkcz48
『Black Rhythm Happening』(1969年)


Makaya McCravenの他作品もチェックを!

『Split Decision』(2012年)


『In The Moment』(2015年)


『Highly Rare』(2017年)


『Universal Beings』(2018年)


『Where We Come From (Chicago X London Mixtape) 』(2019年)


Makaya McCraven/Gil Scott-Heron『We're New Again: A Reimagining by Makaya McCraven』(2020年)


『Universal Beings E&F Sides』(2020年)
posted by ez at 04:18| Comment(2) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする