2022年05月08日

Jazzanova『Strata Records (The Sound Of Detroit Reimagined By Jazzanova)』

Strata Recordsのカヴァー集☆Jazzanova『Strata Records (The Sound Of Detroit Reimagined By Jazzanova)』

発表年:2022年
ez的ジャンル:ベルリン産モダン・ジャズ
気分は... :賢者は歴史に学ぶ!

新作からベルリンのプロデューサー/DJユニットJazzanovaの新作です。

ベルリンを拠点に世界のクラブジャズ/クロスオーヴァーを牽引してきたプロデューサー/DJユニットJazzanovaについて、当ブログで紹介したのは以下の3枚。

 『In Between』(2002年)
 『Of All The Things』(2008年)
 『The Pool』(2018年)

本作はタイトルの通り、ジャズ好きにはお馴染みのUSジャズ・レーベルStrata Recordsの作品をJazzanova流に再解釈したカヴァー集です。

Strata Recordsは、ジャズ・ピアニストKenny Coxによりデトロイトで設立されたインディペンデント・ジャズ・レーベル。1969年から1975年までの僅か6年の活動期間でしたが、その作品群が再評価を高めています。

また、世界屈指のレコード・ディガーとして知られるDJコンビKon & Amirの一人、DJ AmirStrata Records音源の再発に特化したレーベル180 Proofを2012年に立ち上げ、お蔵入りになっていた未発表音源などをリリースしたことも話題になりました。

そして、DJ AmirJazzanovaの出会いがきっかけとなり、本プロジェクトがスタートしました。

Jazzanovaの純然たる新作と呼ぶよりも、Jazzanovaメンバーを中心としたStrata Records再解釈プロジェクトと位置づけた方が適切かもしれません。

プロデュースはAxel ReinemerStefan LeiseringStefan UlrichというJazzanovaメンバー3名。

レコーディングにはStefan Ulrich(tb)、Stefan Leisering(per、electronics)、Christoph Adams(key)、Sebastian Borkowski(sax、fl)、Paul Kleber(b)、David Lemaitre(g、vo)、Jan Burkamp(ds)、Florian Menzel(tp)、そして約半数のトラックでヴォーカルをとるSean Haefeliが参加しています

オリジナルを知らない人でも、オリジナルと聴き比べながら聴くと、Strata Recordsというレーベルの魅力と、Jazzanova流の再解釈の魅力がわかり、2倍楽しめると思います。

バンド・サウンドとDJ感覚を絶妙にミックスさせたJazzanova流のStrataワールドを楽しみましょう。

全曲紹介しときやす。

「Introduction & Lost My Love」
DJ Amirによるイントロダクションに続き、オープニングはStrataの創設者Kenny Coxのカヴァーが飾ります。オリジナル音源が収録されたアルバム『Clap Clap! The Joyful Noise』はお蔵入りになっていましたが、2012年に180 Proofからリリースされています。オリジナルはメロウなインストでしたが、ここではオリジナルのメロウ・サウンドを受け継ぎつつ、Sean Haefeliのヴォーカルをフィーチャーすることで、よりキャッチーに聴くことができます。DJ Amirは本トラックを聴いて、Roberta Flack「Feel Like Makin' Love」Cannonball Adderley & Nancy Wilson「Save Your Love For Me」を思い起こすようですが、まさにそんな雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=yxxyKtjIGUk

Kenny Cox「Lost My Love」
 https://www.youtube.com/watch?v=Gs_q_gwbEUY
『Clap Clap! The Joyful Noise』(2012年)


「Creative Musicians」
The Lyman Woodard Organizationのカヴァー。オリジナルはピストル・ジャケで有名な『Saturday Night Special』(1975年)収録。グルーヴィーなジャズ・トラックとして人気のオリジナルよりも、軽やかなダンス・トラックに仕上げているのがJazzanovaらしいのでは?Sean Haefeliのヴォーカルをフィーチャー。
https://www.youtube.com/watch?v=WdzInbyMxJY

The Lyman Woodard Organization「Creative Musicians」
 https://www.youtube.com/watch?v=-PHN-Rv9Dgs
『Saturday Night Special』(1975年)


「Joy Road」
このトラックもThe Lyman Woodard Organizationのカヴァー。オリジナルは『Saturday Night Special』(1975年)収録。深淵でコズミックな魅力を持ったインストであったオリジナルの雰囲気を、2022年仕様にアップデートしている感じがいいですね。Sean Haefeliのヴォーカルをフィーチャー。
https://www.youtube.com/watch?v=UEM1NLXzebU

The Lyman Woodard Organization『Saturday Night Special』(1975年)


「Face at My Window」
サックス奏者Sam Sandersのカヴァー。オリジナルは2013年に180 Proofからリリースされた未発表音源『Mirror, Mirror』収録。女性ヴォーカルとメロトロンが印象的なオリジナルに対して、Sean Haefeliのヴォーカルをフィーチャーした本トラックは少し雰囲気が異なります。ゆったりした雰囲気に聴こえますが、BPMはオリジナルよりも速くなっているのだとか。
https://www.youtube.com/watch?v=Vc6XFCMkMhs

Sam Sanders「Face at My Window」
 https://www.youtube.com/watch?v=Jf27uniecxs
『Mirror, Mirror』(2013年)


「Root in 7-4 Plus」
シカゴ出身の伝説のサックス奏者Maulawiのカヴァー。オリジナルは『Maulawi』(1974年)収録。オリジナルは僕好みのスピリチュアル・ジャズでしたが、ここではSean Haefeliのヴォーカルをフィーチャーし、スピリチュアルのみならずフュージョン・テイストも取り入れたトラックに仕上げています。
https://www.youtube.com/watch?v=tyBOqgQDokc

Maulawi「Root in 7-4 Plus」
 https://www.youtube.com/watch?v=Skb9Gf9F3vY
『Maulawi』(1974年)


「Inside Ourselves」
レア・グルーヴ好きにはお馴染みのサックス奏者Larry Nozeroも参加していたグループSphereのカヴァー・オリジナルは『Inside Ourselves』(1974年)収録。オリジナルはアヴァンギャルドな雰囲気も漂いますが、それを複雑なリズムを取り入れつつ、ダンサブルに仕上げてしまうのはJazzanovaらしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=OUbiXzrpZSA

Sphere「Inside Ourselves」
 https://www.youtube.com/watch?v=fGkAQRUUCFI
『Inside Ourselves』(1974年)


「Beyond the Dream」
再びKenny Coxのカヴァー。オリジナルは『Clap Clap! The Joyful Noise』収録。オリジナルは女性ヴォーカルをフィーチャーし、ミステリアスなイントロとエキサイティングな本編のコントラストが印象的な13分超の大作でした。本ヴァージョンはSean Haefeliのヴォーカルをフィーチャーし、オリジナルのミステリアスなエッセンスを活かしたトラックに仕上げています。
https://www.youtube.com/watch?v=quVGmvEHxYg

Kenny Cox「Beyond the Dream」
 https://www.youtube.com/watch?v=dPaQ8FtN8uQ
『Clap Clap! The Joyful Noise』(2012年)


「Saturday Night Special」
The Lyman Woodard Organizationのカヴァー3曲目。オリジナルは『Saturday Night Special』収録。オリジナルは格好良いローファイ・ジャズ・ファンクですが、ここではオリジナルにデトロイト・ハウス/テクノのエッセンスを加えてクールなダンス・トラックに仕上げています。
https://www.youtube.com/watch?v=usmEFmas52Q

The Lyman Woodard Organization「Saturday Night Special」
 https://www.youtube.com/watch?v=zKlBSplFHxo
『Saturday Night Special』(1975年)


「Orotunds」
Maulawi(Maulawi Nururdin)のカヴァー2曲目。オリジナルは2014年に180 Proofからリリースされた未発表音源『Orotunds』収録。ソウルフル&パワフル&エキサイティングなオリジナルのエナジーをそのまま受け継いだアッパー・チューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=dMR4uf7Gc0U

Maulawi Nururdin「Orotunds」
https://www.youtube.com/watch?v=9GCe1n4ZP0M
『Orotunds』(2014年)


「Scorpio’s Child」
ジャズ・ドラマーBert Myrickのカヴァー。オリジナルは『Live'n Well』(1974年)収録。オリジナルは1965年録音ですが、McCoy Tynerを思わせるKenny Coxのピアノが印象的です。本トラックでもChristoph Adamsが素晴らしいピアノを聴かせてくれますが、それ以上に素晴らしいホーン・アンサンブルにグッときます。
https://www.youtube.com/watch?v=azOyV2c8EwQ

Bert Myrick「Scorpio’s Child」
 https://www.youtube.com/watch?v=ECwuRMVQotA
『Live'n Well』(1974年)


「Loser」
本編ラストはSam Sandersのカヴァーで締め括ってくれます。オリジナルは『Mirror, Mirror』収録。ブルージーなBurt Bacharach作品といった雰囲気のオリジナルに対して、本ヴァージョンはSean Haefeliのヴォーカルをフィーチャーし、少し異なる非日常的な雰囲気でカヴァーしています。
https://www.youtube.com/watch?v=7kRWYxecIos

Sam Sanders「Loser」
 https://www.youtube.com/watch?v=21ngSUpT3bk
『Mirror, Mirror』(2013年)


国内盤ボーナス・トラックとして、「Creative Musicians (Waajeed Remix) 」「Creative Musicians (Henrik Schwarz Remix) 」の2曲が追加収録されています。フロア仕様のリミックスで楽しませてくれます。

Jazzanova関連の過去記事もご参照ください。

『In Between』(2002年)
イン・ビトゥイーン・デラックス・エディション

『Of All The Things』(2008年)
Of All the Things

『The Pool』(2018年)
The Pool

Thief『Sunchild』(2006年)
Sunchild

Alex Barck『Reunion』(2013年)
リユニオン
posted by ez at 01:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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