発表年:2022年
ez的ジャンル:UKブラック・オルタナティヴ・ロック
気分は... :ダーク・エナジー・・・
新作からUKブラック・オルタナティヴ・ロック作品、Wu-Lu『Loggerhead』です。
Wu-Lu(本名:Miles Romans Hopcraft)はサウス・ロンドンを拠点に活動するヴォーカリスト/マルチ・インストゥルメンタリスト/プロデューサー。
彼の父親はアフロビート/ダブ・バンドSoothsayersのメンバーであり、90年代からUK音楽シーンで活躍するトランペット奏者Robin Hopcraft。
また、兄のBen Romans-Hopcraftもこれまで2枚のアルバムをリリースしているグループChildhoodのメンバーとして活動しています。
EP「GINGA」(2015年)でデビューし、その後もシングル・リリースでその評価を高めていました。「GINGA」には、Stones Throw所属のL.A.を拠点とするプロデューサー/ビートメイカー/シンガー・ソングライターMndsgnも参加しています。
また、プロデューサーとして、サウス・ロンドンから登場したネオソウルの新星のデビュー・アルバムEgo Ella May『So Far』(2019年)、UKジャマイカン女性シンガーの4thアルバムZara McFarlane『Songs Of An Unknown Tongue』(2020年)といった当ブログでも紹介した作品を手掛けています。
そんな期待のアーティストが満を持してリリースする1stアルバムが本作『Loggerhead』です。
アルバムにはAsha、Amon、Lex Amor、Lea Senのヴォーカル/ラップがフィーチャリングされています。
彼の友人であるUKのエクスペリメンタル・ロック・バンドBlack MidiのメンバーやEgo Ella May、兄Ben Romans-Hopcraft等も参加しています。
アルバム全体はダークなブラック・オルタナティヴ・ロック×Hip-Hopという印象です。クラブミュージックやレゲエ/ダブのエッセンスも取り入れたトラックもあり、こうしたサウンド感覚が新世代UKブラック・オルタナティヴ・ロックなのかもしれませんね。
ジャンルをあまり気にせず、サウス・ロンドンのダーク・エナジーを楽しむ1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Take Stage」
ロンドンのジャズ・カルテットSpeakers Corner QuartetのメンバーRaven Bushのストリングスが印象的なオープニング。ちなみにSpeakers Corner QuartetにはWu-Luの盟友Kwake Bassも参加しています。また、Demae Wodu、Ego Ella Mayがバック・コーラスで参加しています。哀愁モードのプロローグといった雰囲気です。美しいダウナー感が今のUKらしいのでは?
「Night Pill」
ロンドンのロック・デュオSorryのメンバーAshaをフィーチャー。生演奏によるロック×Hip-Hopなサウンドをバックに、AshaとWu-Luがラップ調ヴォーカルを乗せていきます。午前3時に集まってスケートボードを楽しむ様子を表現したのだとか。どこまでもダークトーンなのがいいですね。
「Facts」
Amonをフィーチャー。Black MidiのギタリストMatt Kelvin参加。ジャングルの影響を感じるパルス感のあるリズムと超低温ヴォーカルの組み合わせが印象的です。終盤のノイジーなギターが雰囲気を盛り上げてくれます。
「Scrambled Tricks」
引き続きBlack MidiのギタリストMatt Kelvin参加。ベースの効いたヘヴィなロック・サウンドとラップ調ヴォーカルが醸し出す不気味なダーク・ワールドが魅力です。
https://www.youtube.com/watch?v=6YaQd2IKWmg
「South」
Lex Amorをフィーチャー。2021年に先行してシングル・リリースされていました。♪サウス・ロンドンはすっかり変わってしまった♪と地元を嘆くトラック。フォーキー、ロック、Hip-Hop、レゲエ/ラガが渾然一体となったカオス的面白さを満喫できます。
https://www.youtube.com/watch?v=ibE56gf0G4w
「Calo Paste」
Lea Senをフィーチャー。Raven Bush、Mica Leviがストリングスで参加しています。美しくも切ない悲哀に満ちた1曲に仕上がっています。
「Slightly」
Ego Ella Mayがバック・コーラスで参加。R&B×ポストパンクな雰囲気が面白い1曲に仕上がっています。
「Blame」
Black MidiのギタリストMatt Kelvin参加。新世代オルタナティヴ・ラップ・ロックとでも呼びたくなるトラックですが、クラブミュージック的なエッセンスも感じるところが新世代なのでしょうね。
「Ten」
Black MidiのギタリストMatt Kelvin参加。このトラックはダブのエッセンスを強調しています。このあたりは父Robin Hopcraftの影響なのかもしれませんね。
「Blame/Ten」
https://www.youtube.com/watch?v=G-i5i4mJKcI
「Road Trip」
静かにスタートしますが、一気に加速しドライヴ感のある展開に・・・。シンプルな編成ながらも迫力のあるサウンドにグッときます。スクラッチ風のエフェクトも効果的です。
「Times」
Black MidiのドラマーMorgan Simpson参加。2021年に先行してシングル・リリースされていたトラック。ロックとしてのキャッチーな格好良さとしてはコレが一番かも?
https://www.youtube.com/watch?v=BgAAQupQTW4
「Broken Homes」
兄Ben Romans-Hopcraftがアレンジで参加。タイトルの通り、家庭崩壊の恐怖を淡々と歌うダーク・トラック。冷めた口調のヴォーカルには達観したパワーが宿っているようにさえ感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=UX5-ctxWzGg
「Enemies」
国内盤ボーナス・トラック。オルタナティヴ・ロック×ダブの組み合わせが魅力のトラック。個人的にはダブのエッセンスを強調したサウンドは好きなので嬉しいボートラ。
今週末はNHK BSで深夜に「岩合光昭の世界ネコ歩き」の一挙放送!
TV番組のなかで一番心が安らぎます。