発表年:2022年
ez的ジャンル:UK新世代アフロ・ジャズ・ユニット
気分は... :メロウなアフロ・ジャズ!
新作からUKの新世代アフロ・ジャズ・ユニットKokorokoのデビュー・アルバム『Could We Be More』です。
Kokorokoは、リーダーのSheila Maurice-Greyを中心にロンドンで結成されたアフロ・ジャズ・ユニット。
Kokorokoが注目されるきっかけとなったのは、2018年にGilles PetersonのBrownswood Recordingsからリリースされたコンピ・アルバム『We Out Here』でした。
Kokoroko「Abusey Junction」(From 『We Out Here』)
https://www.youtube.com/watch?v=tSv04ylc6To
同アルバムにはKokoroko以外にも、Ezra Collective、Moses Boyd、Maisha、Theon Cross、Nubya Garcia、Shabaka Hutchings、Joe Armon-Jones、Triforceというロンドンの新世代ジャズ・シーンを牽引するアーティストたちのトラックが収録されていました。
その後、「Kokoroko」(2019年)、「Carry Me Home/Baba Ayoola」(2020年)といったEP/シングルのリリースを経て、満を持してリリースされるデビュー・アルバムが本作『Could We Be More』です。
本作におけるメンバーはSheila Maurice-Grey(tp、vo)、Cassie Kinoshi(sax、vo)、Richie Seivwright(tb、vo)、Duane Atherley(b)、Tobi Adenaike(g)、Yohan Kebede(key)、Onome Edgeworth(per)、Ayo Salawu(ds)という8名。
メンバーのうちCassie Kinoshiは、当ブログでも紹介したロンドンのジャズ・アンサンブルSEED Ensembleのリーダーです。リーダーSheila Maurice-GreyもSEED Ensembleのメンバーです。また、この二人はジャズ・ユニットNerijaのメンバーでもあります。
プロデュースはMiles Clinton James。
楽曲はすべてKokorokoのオリジナル。
アフロビートの文脈で紹介されることも多いKokorokoですが、本作を一通り聴いた印象は、アフロ・ジャズのエッセンスを取り入れたメロウ・ジャズ/アイランド・ジャズというものです。僕もアフロビート的エッセンスがもう少し強調されている音をイメージしていたので、正直事前イメージとは異なる音でした。
前述の『We Out Here』収録の「Abusey Junction」を聴けば、その兆候を感じ取ることができますが、アルバム全編でこの路線とは思いませんでした。
アフロ・ジャズでこんなにメロウな気分になれることは新鮮な驚きです。
「Tojo」、「Age Of Ascent」、「Dide O」、「Those Good Times」、「Something's Going On」あたりは、フツーにメロウなサマー・ミュージックとして楽しめます。
僕のなかで今年一番サプライズだった1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Tojo」
アフロ・ジャズのエッセンスを取り入れながらも、アイランド・ジャズのようなゆったりと寛いだ雰囲気でバカンス・モードへ誘ってくれるオープニング。これは意表を突かれました。
https://www.youtube.com/watch?v=TK63lmmvJx0
「Blue Robe (Pt.I)」
アフリカン・リズムによるインタールード的な小曲。
https://www.youtube.com/watch?v=sJGqjUjCd70
「Ewa Inu」
コンテンポラリー・ジャズ×アフロ・ジャズな組み合わせがグッド!アフロ・リズムと伸びやかなホーン・サウンドの組み合わせには、他のUK新世代ジャズにはない開放感な心地好さを感じます。さり気ないメロウ・ギターもいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=dDs4x6YtAIU
「Age Of Ascent」
サンセット・モードのロマンティック・アフロ・ジャズとでも称したくなる素敵なバラード。このユニットの素晴らしいホーン・アンサンブルを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=YOqVYvNfw6w
「Dide O」
ヴォーカル入りのアイランド・ジャズ。アフロ・ジャズということを意識せずに楽しめます。聴いていると、都会の喧噪を忘れ、穏やかな気持ちになってきます。ハイライフなギターがいいアクセントになっていますね。
https://www.youtube.com/watch?v=I8kKP9VCRJk
「Soul Searching」
リズミックに疾走しますが、それでもメロウ&ソフトリーな雰囲気なのがこのユニットらしいのかもしれませんね。ジャズ作品らしくないサウンドの余韻も印象的なトラックです。
https://www.youtube.com/watch?v=tF0lL5N6vTs
「We Give Thanks」
ダンサブルなハイライフ・グルーヴ。ハイライフらしい開放的なギターの響きが心地好いです。派手さはありませんがトーキング・ドラムによるアクセントもいいですね。不穏なオルガンだけがアフロビート調なのも面白いです。
https://www.youtube.com/watch?v=YUD9fxr6qTw
「Those Good Times」
AriwaのUKラヴァーズあたりと一緒に聴きたくなるようなヴォーカル入りのメロウ・チューン。メロウなサマー・ソウルとしても楽しめるはずです。
https://www.youtube.com/watch?v=df_UBceDFj8
「Reprise」
ジャズとは別のベクトルを感じるインタールード。
https://www.youtube.com/watch?v=TsAZvd7RBCQ
「War Dance」
UKアフロ・ファンクらしいグルーヴを楽しめる演奏です。スペイシーなアクセントも印象的です。UK新世代アフロ・ジャズ/ファンクがお好きな人であれば間違いのないトラックなのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=gOA4seglB9k
「Interlude」
メロウな小曲。トラックメイカーっぽいのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=0mppA5WtGLA
「Home」
ギター、ベース、コーラスのみの演奏です。メロウ・ギターと優しいコーラスに癒されます。まさにアット・ホームな温もりがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=xrpyIPNhPgo
「Something's Going On」
メロウ・ソウル×サマー・フュージョン×アフロ・ジャズの絶妙なクロスオーヴァーで楽しませてくれます。フリーソウル的な魅力もあるトラックです。
https://www.youtube.com/watch?v=KXUv2rYo1eY
「Outro」
ヴォーカル&ハンドクラップによる「Something's Going On」のアウトロ。ラブ&ピースな雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=B-BRWfvNHAE
「Blue Robe (Pt.II)」
ラストはアフリカン・リズムで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=P9lf40u9U_0
ご興味がある方は、SEED EnsembleやNerija
SEED Ensemble『Driftglass』(2019年)
Nerija『Blume』(2019年)