発表年:2022年
ez的ジャンル:UK次世代ジャズ・コンピ
気分は... :第二弾でよりマニアックに!
今回は新作アルバムから話題のコンピ作品Various『Blue Note Re:imagined II』です。
本作はUKのDrccaとUSのBlue Noteがタッグを組み、UK新世代ジャズを中心とした新鋭アーティスト達が、Blue Noteに残されたジャズ名曲をカヴァーする企画作品Various『Blue Note Re:Imagined』(2020年)の続編です。
Various『Blue Note Re:Imagined』(2020年)
今回はYazz Ahmed、Conor Albert、Parthenope、Swindle、Nubiyan Twist、Ego Ella May、Oscar Jerome & Oscar #Worldpeace、Daniel Casimir feat. Ria Moran、Theon Cross、Maya Delilah、Kay Young、Venna & Marco、Reuben James、Binker Golding、Cherise、Franc Moodyといったミュージシャンが参加しています。
さらに国内盤ボーナス・トラックでは日本人アーティストBIGYUKIが参加しています。
第一弾よりも参加アーティストが小粒になった印象を受けますが、その分、先入観なしに楽しめるのではないかと思います。
また、選曲も前回以上にマニアックなものが多く、年代も幅広くなっています。Donald Byrd作品から4曲、Wayne Shorter作品から2曲、Norah Jones作品から2曲、Mizell兄弟によるスカイハイ・プロダクション作品が3曲といった偏りがあるのも逆に面白いと思います。
第一弾と同じくオリジナルと聴き比べるのも楽しいですが、オリジナルを知らずとも、またジャズ・ファンで無くとも南ロンドン新世代ジャズを中心とした今のUK音楽シーンの面白さが凝縮されたナイス・コンピに仕上がっています。
全曲紹介しときやす。
※最初にオリジナル作品として示しているのは、元になっているであろうBlue Note作品です。
Yazz Ahmed「It」
オリジナルはChick Corea『Is』(1969年)収録(Chick Corea作)。UKの女性トランペッターYazz Ahmedが主役。Chick Corea作品のレコーディングにも参加したTim Garland(ss、bc)も参加しています。オリジナルは30秒程度のピアノとピッコロのみの演奏による小曲ですが、ここでは5分超の美しくダイナミックなアンサンブルを聴かせてくれます。主役Yazzのトランペット/フリューゲル・ホーンに加えて、Tim Garlandのバス・クラリネットが存在感あります。Noel Langly/Yazz Ahmedプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=BFkHFqvQt8U
Chick Corea「It」
https://www.youtube.com/shorts/JUeiV-_0UU8
Chick Corea『Is』(1969年)
Conor Albert「You Make Me Feel So Good」
オリジナルはBobbi Humphrey『Fancy Dancer』(1975年)収録(Larry Mizell/Fonce Mizell作)。フリーソウル・クラシックにもなっている人気曲ですね。UKの新鋭ピアニストConor Albertが主役。ピアノのみならず全ての演奏を一人でこなすマルチ・インストゥルメンタリスト であることを示してくれます。 Mizell兄弟によるスカイハイ・サウンドが印象的なオリジナルの雰囲気をそのまま受け継いだ爽快ジャジー・メロウな演奏です。
Conor Albertプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=87DrYkaAehE
Bobbi Humphrey「You Make Me Feel So Good」
https://www.youtube.com/watch?v=mAFotx4YSeQ
Bobbi Humphrey『Fancy Dancer』(1975年)
Parthenope「Don't Know Why」
オリジナルはNorah Jones『Come Away With Me』(2002年)収録(Jesse Harris作)。グラミーで最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀女性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス賞を受賞したスタンダードと呼べる名曲ですね。本当のオリジナルは作者Jesse Harrisのアルバム『Jesse Harris and the Ferdinandos』(1999年)に収録されたヴァージョン。ここではリーズ出身の女性サックス奏者Parthenope Wald-Hardingがヴォーカルも披露してくれます。この曲の持つ素晴らしい「温もり」を改めて実感させてくれるハートウォーミングな仕上がりです。
Owen Eastwoodプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=Ak5VnkDQBus
Norah Jones「Don't Know Why」
https://www.youtube.com/watch?v=tO4dxvguQDk
Norah Jones『Come Away With Me』(2002年)
Swindle「Miss Kane」
オリジナルはDonald Byrd『Street Lady』(1973年)収録(Larry Mizell作)。UKグライム/ダブステップ・シーンから登場してきた人気アーティストSwindleが手掛けています。当ブログでもSwindle作品を紹介しようかなぁ、と思っていたのでグッド・タイミングでした。最近はYoung Gun Silver Foxの活動でも知られるShawn Lee(ds、per)も参加しています。Swindleがこのリズミックなファンキー・チューンをセレクトする気持ちがよく分かります。ストリングスも配し、Swindle流のスカイハイ・サウンド再構築で楽しませてくれます。Swindleプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=I2lHpLOlifM
Donald Byrd「Miss Kane」
https://www.youtube.com/watch?v=KjH_uFMssOE
Donald Byrd『Street Lady』(1973年)
Nubiyan Twist「Through The Noise (Chant No.2)」
オリジナルはDonald Byrd『A New Perspective』(1963年)収録の「Chant」(Duke Pearson作)。当ブログでも紹介したUKジャズ・コレクティヴNubiyan Twistによる演奏です。彼らが「Chant」をセレクトしたのは意外でしたが、Nubiyan Twistらしいスリリングに疾走するグルーヴィーなアフロ・ジャズに変貌させてくれています。グループのリーダーTom Excellのプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=m6SYcL6Eclk
Donald Byrd「Chant」
https://www.youtube.com/watch?v=CrqeuVhPg_A
Donald Byrd『A New Perspective』(1963年)
Ego Ella May「Morning Side Of Love」
オリジナルはChico Hamilton『Peregrinations』(1975年)収録(Chico Hamilton作)。サウス・ロンドンから登場したネオソウルの新星Ego Ella Mayをフィーチャー。Ego Ella Mayのコケティッシュなヴォーカルが引き立つ、幻想的な仕上がりがいい感じです。Ego Ella May/Eunプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=_7uV6AlSF7A
Chico Hamilton「Morning Side Of Love」
https://www.youtube.com/watch?v=VN9i1RSERWU
Chico Hamilton『Peregrinations』(1975年)
Oscar Jerome & Oscar #Worldpeace「(Why You So) Green With Envy」
オリジナルはGrant Green『Green Street』(1961年)収録(Grant Green作)。当ブログでも紹介したUK新世代アフロ・ジャズ・ユニットKokorokoやJoe Armon-Jones等の作品に参加するギタリストOscar JeromeとラッパーOscar #Worldpeaceという二人が主役。オリジナルからの変貌という意味では、このトラックが一番振り幅が大きいかもしれません。ジャズ×Hip-Hopな今ジャズを楽しめる内容です。Oscar Jeromeプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=5Ih-zqMK7Cw
Grant Green「(Why You So) Green With Envy」
https://www.youtube.com/watch?v=XHxBIIZX_mY
Grant Green『Green Street』(1961年)
Daniel Casimir feat. Ria Moran「Lost」
オリジナルはWayne Shorter『The Soothsayer』(1979年)収録(Wayne Shorter作)。主役のDaniel CasimirはBlue Lab Beats、Ashley Henry、Nubya Garcia等の作品にも参加しているベーシスト。オリジナルはインストですが、ここではRia Moranの女性ヴォーカルをフィーチャーしています。オリジナルの雰囲気とは少し異なる幻想的なメロウ・チューンですが、今ジャズらしさもあってフィットします。Daniel Casimirプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=ks1XfaHBu3w
Wayne Shorter「Lost」
https://www.youtube.com/watch?v=fnf-veWTZZ0
Wayne Shorter『The Soothsayer』(1979年) ※録音は1965年
Theon Cross「Epistrophy」
オリジナルはThelonious Monk 『Genius Of Modern Music』(1951年)収録(Kenny Clarke/Thelonious Monk作)。当ブログでは『Monk's Music』(1957年)収録ヴァージョンを紹介済みです。主役のTheon CrossはShabaka Hutchings率いるSons Of Kemetメンバーであり、当ブログでも紹介したソロ・アルバム『Fyah』も素晴らしい作品でした。個性派ミュージシャンのTheon Crossが、超個性派のモンク作品をセレクトするのは納得です。最初の一音からTheon Crossらしいチューバの響きで楽しませてくれます。Theon Crossワールド全開の素晴らしいUKジャズ・ワールドです。Theon Cross/Emre Ramazanogluプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=qO2UZtXaJNY
Thelonious Monk「Epistrophy」
https://www.youtube.com/watch?v=QkkKtCiZusA
Thelonious Monk『Genius Of Modern Music』(1951年)
Maya Delilah「Harvest Moon」
オリジナルはCassandra Wilson『New Moon Daughter』(1995年)収録(Neil Young作)。本当のオリジナルはNeil Young『Harvest Moon』(1992年)収録。女性シンガー・ソングライターMaya Delilahが主役ですが、本当のオリジナルであるNeil Youngヴァージョンを手本にしているような仕上がりです。まぁ、Cassandraヴァージョンに寄せていくのはハードル高いですからね(笑)。Stephen Barnesプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=6moD8cTsP1Y
Cassandra Wilson「Harvest Moon」
https://www.youtube.com/watch?v=YHbcwby7igA
Cassandra Wilson『New Moon Daughter』(1995年)
Kay Young「Feel Like Making Love」
オリジナルはMarlena Shaw『Who Is This Bitch, Anyway?』(1975年)収録(Eugene Mcdaniels作)。本当のオリジナルはRoberta Flack『Feel Like Makin' Love』(1975年)収録。
主役のKay YoungはUKの女性ラッパー/シンガー。Marlena Shawヴァージョンの雰囲気を受け継いだネオソウル調の仕上がりです。Kay Youngプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=cmaBfn7U3fA
Marlena Shaw「Feel Like Makin' Love」
https://www.youtube.com/watch?v=RK326HjaNTA
Marlena Shaw『Who Is This Bitch, Anyway?』(1975年)
本曲「Feel Like Makin' Love」について、当ブログではD'Angelo、Meta Roos & Nippe Sylwens Band、Ricardo Marrero & The Group、B.E.F.、Roy Ayers Ubiquity、Ely Bruna、Jeffrey Osborne、Bob Jamesのカヴァーも紹介済みです。
Venna & Marco「Where Are We Going?」
オリジナルはDonald Byrd『Black Byrd』(1972年)収録(Edward Larry Gordon/Larry Mizell作)。
Venna & Marcoはサックス奏者Malik Vennerとサックス奏者&マルチ奏者Marco Bernardisによるユニット。オリジナルが大好きなので、この曲をセレクトした時点で勝ち!と思っていたのですが、意外にもオリジナルの雰囲気とは異なるスムーズ・ジャズ調の今ジャズに仕上がっています。終盤のエレクトリックな雰囲気がいい感じ。Venna & Marcoプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=rUyMVCjob2A
Donald Byrd「Where Are We Going?」
https://www.youtube.com/watch?v=-6CEryWus_A
Donald Byrd『Black Byrd』(1972年)
Reuben James「Infant Eyes」
オリジナルはWayne Shorter『Speak No Evil』(1964年)収録(Wayne Shorter作)。主役のReuben Jamesは幅広いジャンルのレコーディングに参加するピアニスト/シンガー。ここでは彼のピアノに加えてヴォーカルにも注目です。何の予備知識もなく聴くと女性ヴォーカルと間違えるかもしれません。美しく幻想的なジャズ・ワールドに吸い込まれていきます。Reuben Jamesプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=E9TUKtUhanc
Wayne Shorter「Infant Eyes」
https://www.youtube.com/watch?v=CYg_3pQN-LU
Wayne Shorter『Speak No Evil』(1964年)
Binker Golding「Fort Worth」
オリジナルはJoe Lovano『From the Soul』(1992年)収録(Joe Lovano作)。今回の選曲で一番意外だったのがコレ。数あるBlue Note作品からこの1枚を選ぶのって余程思い入れあるのでは?主役のBinker Goldingは、Binker & MosesやMoses Boyd Exodusといった
UK新世代ジャズを代表するドラマーMoses Boyd絡みの活動でも知られるサックス奏者です。アルバムの中でも最もエキサイティングな演奏かもしれません。Binker Goldingのプレイを存分に楽しめます。この演奏を聴くとこの選曲が正解であったと納得してしまいます。Binker Goldingプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=A3IU7qEGGYk
Joe Lovano「Fort Worth」
https://www.youtube.com/watch?v=NlRw0nPD3pk
Joe Lovano『From the Soul』(1992年)
Cherise「Sunrise」
オリジナルはNorah Jones『Feels Like Home』(2004年)収録(Lee Alexander/Norah Jones作)。主役のUK女性R&BシンガーCheriseは、Nubiyan Twist『Freedom Fables』(2021年)、『Brockwell Mixtape』(2022年)という当ブログで最近紹介した作品でもフィーチャリングされています。胸に込み上げてくるソウルフル&ビューティフルな仕上がりには、オリジナルとは異なる感動があります。Tobie Trippプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=FLufTsceuNE
Norah Jones「Sunrise」
https://www.youtube.com/watch?v=fd02pGJx0s0
Norah Jones『Feels Like Home』(2004年)
Franc Moody「Cristo Redentor」
オリジナルはDonald Byrd『A New Perspective』(1963年)収録(Duke Pearson作)。Franc MoodyはNed FrancとJon Moodyを中心としたNu Funkバンド。オリジナルのゴスペル調コーラスの雰囲気は残しつつ、エレクトロ&ダンサブルなサウンドで楽しませてくれます。Franc Moodyプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=Zvt4LE8hGr4
Donald Byrd「Cristo Redentor」
https://www.youtube.com/watch?v=tg3CBBkSss4
Donald Byrd『A New Perspective』(1963年)
BIGYUKI「The Creators」
国内盤ボーナス・トラック。日本が誇るキーボード奏者BIGYUKIです。オリジナルはBobby Hutcherson『Now!』(1970年)収録(Herbie Lewis作)。オリジナルのトライバル&コズミックな雰囲気を発展させた演奏で楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=BDT1hkCDPaY
Bobby Hutcherson「The Creators」
https://www.youtube.com/watch?v=sYEVsBFf_vM
Bobby Hutcherson『Now!』(1970年)
未聴の方は第一弾『Blue Note Re:Imagined』(2020年)もぜひチェックを!
Various『Blue Note Re:Imagined』(2020年)