2023年11月19日

Loraine James『Gentle Confrontation』

幽玄なエレクトロニック・ワールド☆Loraine James『Gentle Confrontation』

発表年:2023年
ez的ジャンル:新世代UKエレクトロニック・ミュージック
気分は... :穏やかな対立!

UKエレクトロニック・ミュージックの新世代アーティストLoraine Jamesの最新作『Gentle Confrontation』です。

1995年生まれ、ロンドン育ちの女性アーティストLoraine Jamesの紹介は、『Reflection』(2021年)に続き2回目となります。

前回紹介した『Reflection』(2021年)は『ezが選ぶ2021年の10枚』にセレクトしたほどのお気に入りでした。

『Reflection』(2021年)に続いてリリースしたのは、Phantom Limbからリリースされた『Building Something Beautiful For Me』(2022年)。同アルバムはN.Y.出身の黒人コンポーザー/ピアニスト/ヴォーカリストで近年再評価されているアーティストJulius Eastman(1940-90年)へのオマージュ作品でした。その意味ではHyperdubからリリースされているアルバムとは分けて位置づけた方がいいかもしれませんね。。

最新作『Gentle Confrontation』は、『For You And I』(2019年)、『Reflection』(2021年)と同じく、Kode9(Steve Goodman)主宰のHyperdubからのリリースです。

よりハイブリッドに進化した新世代UKエレクトロニック・ミュージックが展開されます。独自の幽玄なポップ感覚が増したのも印象的です。

プロデュースはLoraine James自身。

アルバムにはUS女性SSWのKeiyaARiTchieCorey Mastrangelo、スペイン人女性SSWのMarina Herlop『Reflection』にも参加していた女性シンガーEden Samara、西ロンドンの女性シンガーGeorge RileyContour、日本のインストゥルメンタル・バンドMouse On The Keysといったアーティストがフィーチャリングされています。

また、Lusine「Ask You」Dntel「Anywhere Anyone」Telefon Tel Aviv「Fahrenheit Fair Enough」といった彼女が影響を受けたアーティストの音源をサンプリングしているのも本作の特徴かもしれません。

個人的にはRiTchieのラップをフィーチャーした「Deja Vu」『For You And I』(2019年)収録の「Glitch Bitch」のセルフ・オマージュ「Glitch The System (Glitch Bitch 2)」Black MidiのドラマーMorgan Simpsonが参加した「I DM U」Eden Samaraをフィーチャーし、幽玄な美学を感じる「Try For Me」
アンビエント感覚のUKドリル「Tired Of Me」George Rileyをフィーチャーしたジャジー・ソウル×エレクトロニックな「Speechless」、完成度の高いエレクトリック・ポップ「Disjointed (Feeling Like A Kid Again)」あたりがお気に入り。

進化するLoraine Jamesの幽玄美を楽しみましょう!

全曲紹介しときやす。

「Gentle Confrontation」
幽玄なストリングスと共に始まるタイトル・トラックがオープニング。幽玄なストリングスとグリッチしたミニマル・ビートが交錯した退廃的な音世界が印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=BNoQnQntdKs

「2003」
Lusine「Ask You」をサンプリング。7歳の時に父と生き別れとなり、傷ついた心を歌ったもの。滲み出てくるような幽玄エレクトリック・サウンドと淡々と歌い上げるLoraineの組み合わせが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=6gikGLeq6mc

「Let U Go」
US女性SSWのKeiyaAをフィーチャー。Loraine Jamesらしいビート、音色を楽しめるエレクトリック・ソウルに仕上がっています。KeiyaAが手掛けたヴォーカル・プロダクションもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=pOo75AA8Lz4

「Deja Vu」
RiTchieのラップをフィーチャー。アンビエントな雰囲気ながらもLoraine Jamesならではのハイブリッド感覚を存分に楽しめるトラック。かなりのお気に入り!
https://www.youtube.com/watch?v=1W4U_J2Heyc

「Prelude Of Tired Of Me」
タイトルにあるように「Tired Of Me」のプレリュード。後述する「Tired Of Me」とセットで聴くといいのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=lEC2RFeupQc

「Glitch The System (Glitch Bitch 2)」
サブ・タイトルから想像できるように『For You And I』(2019年)収録「Glitch Bitch」のセルフ・オマージュ。「Glitch Bitch」からさらに磨きのかかったグリッチにLoraine Jamesの進化を感じましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=DuwE8C_di4E

「Glitch Bitch」と聴き比べるのも楽しいのでは?
「Glitch Bitch」(From 『For You And I』)
https://www.youtube.com/watch?v=fidiO-g2gok

「I DM U」
Black MidiのドラマーMorgan Simpsonが参加。新世代UKエレクトロニック・ミュージックに生ドラムが加わることでサウンド全体のダイナミズムが増しています。
https://www.youtube.com/watch?v=hoHx4G4FCHQ

「One Way Ticket To The Midwest (Emo)」
Corey Mastrangeloのギターをフィーチャー。何処となくフォーキーなエレクトロ・ワールドで和ませてくれる箸休めのようなトラック。
https://www.youtube.com/watch?v=0NYA-8E1pxI

「Cards With The Grandparents」
認知症を患う祖父について歌ったもの。祖父とのかけがえのない時間の大切さが伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=vBITQW3kIwc

「While They Were Singing」
スペイン人女性SSWのMarina Herlopをフィーチャー。『Reflection』(2021年)収録の「Running Like That」をサンプリングしています。グリッチを駆使した彼女らしい新世代UKエレクトロニック・ミュージックを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=uMkYMCfyTBs

「Try For Me」
『Reflection』にも参加していた女性シンガーEden Samaraをフィーチャー。無機質なビートながらも幽玄な美学を感じる僕好みのトラック。
https://www.youtube.com/watch?v=buozyAVy4fo

「Tired Of Me」
Loraine Jamesらしいアンビエント感覚のUKドリルといった雰囲気の仕上がりです。『Reflection』が好きだった人であれば気に入るトラックだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=kxJGBIV9LmM

「Speechless」
西ロンドンの女性シンガーGeorge Rileyをフィーチャー。ジャジー・ソウルを感じる仕上がりです。Sadeが新世代UKエレクトロニック・ミュージックにアプローチするとこんな感じになるのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=CANbof4_MDs

「Disjointed (Feeling Like A Kid Again)」
このトラックも大好き!Loraine Jamesの美学が詰まった完成度の高いエレクトリック・ポップに仕上がっています。余韻に浸りたくなります。
https://www.youtube.com/watch?v=OPpTJZrarPU

「I'm Trying To Love Myself」
Dntel「Anywhere Anyone」をサンプリング。グリッチも駆使しつつ、本作らしい幽玄な雰囲気を持つ実験的トラック。こういうのも嫌いじゃありません。
https://www.youtube.com/watch?v=4KgQZJrCMng

「Saying Goodbye」
Contourをフィーチャー。Telefon Tel Aviv「Fahrenheit Fair Enough」をサンプリング。このトラックも幽玄モードの哀愁トラックに仕上がっています。引き算の美学ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=t2aKOdR-iR8

「Scepticism with Joy」
ラストは日本のインストゥルメンタル・バンドMouse On The Keysをフィーチャー。派手さはありませんが、エレクトロニック×生音ならではのトータルな質感がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=jEjJxD4CbEU

Loraine Jamesの他作品もチェックを!

『For You And I』(2019年)


『Reflection』(2021年)


『Building Something Beautiful For Me』(2022年)
posted by ez at 01:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする