発表年:2023年
ez的ジャンル:オルタナティヴ系UK男性R&Bシンガー
気分は... :超越性の追求・・・
UK期待の男性R&BシンガーSamphaの最新アルバム『Lahai』です。
1988年南ロンドン生まれ、アフリカ西部のシエラレオネにルーツを持つ男性R&Bシンガー/プロデューサーSampha(Sampha Sisay)の紹介は、デビュー・アルバム『Process』(2017年)に続き2回目となります。
デビュー・アルバム『Process』(2017年)がUK最高峰の音楽賞であるマーキュリー賞を受賞するなど高い評価を受けましたが、それから約6年ぶりの2ndアルバムとなるのが本作『Lahai』です。
『Process』は内省的な悲しみが滲み出た作品でしたが、本作『Lahai』は人生の喜びを求める美しい音世界の1枚に仕上がっています。Sampha本人は「超越性」を追求したアルバムと本作を評しているようです。
ちなみにタイトルの「Lahai」とは、Sampha自身のミドルネームであると同時に、彼の祖父の名前でもあります。そのタイトルには、自分がどこから来たのかを見つめると同時に、自分たちの将来のことを考えるという意味が込められているようです。
Samphaに加え、Hip-Hopユニット=CoN+KwAkE=、Shabaka Hutchingsらとのトリオ1000 Kings、Samphaもフィーチャリングされたデビュー・アルバム『Further Out Than the Edge』(2023年)をリリースしたばかりのジャズ・カルテットSpeakers Corner Quartetなどのメンバーとして知られるドラマーKwake Bass(Giles Kwakeulati King-Ashong)、バルセロナ出身でトロピカルなポップ・ダンスが得意なアーティストEl Guincho、ロンドンの売れっ子エンジニアRiccardo Damian、若きUSシンガー・ソングライター/プロデューサーTeo Halmロンドンの気鋭のプロデューサーKwes.がプロデューサーとして起用されています。
レコーディングにはSampha(vo、p、el-p、syn、ds prog)以下、Owen Pallett(strings arr)、Fame's Skopja Studio Orchestra(strings)、Kwake Bass(ds、spoken word)、El Guincho(b、prog、bongo)、Teo Halm(b、ds)、Ricky Damian(drum machines)、KokorokoのSheila Maurice-Grey(tp、spoken word)、Yaeji(back vo)、Lea Sen(back vo)、フレンチ女性デュオIbeyi(back vo)、Ben Reed(b。g、vibe、back vo)、Fabiana Palladino(back vo)、Georgia Duncan(back vo)、Katie Duncan(back vo)、Laura Groves(back vo、el-p、vibe)、Mansur Brown(back vo、g)、David Wrench(prog)、Ben Walker(back vo)、Jonathan Geyevu(back vo)、Pauli the PSM(back vo)、Yussef Dayes(ds)といったミュージシャンが参加しています。
アルバムはUK R&Bアルバム・チャート第1位、同アルバム・チャート第21位となっています。
必ずしも聴きやすい作品ではありませんが、脆さと紙一重の美しさを感じるオルタナティヴR&Bに惹かれてしまいます。個人的にはUkならではのリズミックなビートを取り入れたトラックが増えたのが嬉しいですね。
Samphaによる超越性の追求をご自身の耳で確認してみてください。
全曲紹介しときやす。
「Stereo Colour Cloud (Shaman's Dream)」
Sampha/Kwake Bass/Riccardo Damianプロデュース。軽快な鍵盤の音色とドラムンベース調のリズムが印象的なダンサブル・サウンドで従来のSamphaのイメージを覆します。
https://www.youtube.com/watch?v=Lr4CnXFxxDo
「Spirit 2.0」
Sampha/El Guincho/Riccardo Damianプロデュース。アルバムからの1stシングルにもなりました。韓国系US女性シンガーYaejiがバック・コーラスで参加。オーケストレーションとエレクトロニカの組み合わせがグッドなトラック。フューチャリスティックな崇高さを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=ogYC-8hs870
「Dancing Circles」
Sampha/El Guincho/Riccardo Damianプロデュース。アタックの強いピアノをバックに、Samphaが言葉を紡いでいくトラック。
https://www.youtube.com/watch?v=UhE5io7Nyk4
「Suspended」
Samphaプロデュース。ピアノをバックに美しいヴォーカルワークで魅せてくれるトラック。中盤以降リズムが強調されるので二段階で楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=3SlvAyvmEE8
「Satellite Business」
Samphaプロデュース。SamphaがロンドンとN.Y,で開催したイベントの名称を冠したインタールード的なトラック。美しいピアノと電子パルスの組み合わせが本作らしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=9GGhNO7udcQ
「Jonathan L Seagull」
Sampha/El Guinchoプロデュース。Richard Bachのベストセラー小説『かもめのジョナサン』(Jonathan Livingston Seagull)に因んだタイトル。その小説と同じく聴く者を精神世界へと誘うビューティフル・トラックに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=BaINE5KIQOo
「Inclination Compass (Tenderness)」
Sampha/El Guincho/Teo Halmプロデュース。ピアノをバックに真摯に歌い上げるバラード。
https://www.youtube.com/watch?v=z-lHazkvDEg
「Only」
Sampha/El Guinchoプロデュース。アルバムからの2ndシングル。ローファイHip-Hop的なビートが印象的なトラック。Samphaの節回しがいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=1YPtbploIyU
「Time Piece」
Samphaプロデュース。フレンチ女性デュオIbeyi参加の短いインタールード。
https://www.youtube.com/watch?v=6zEv88hIE2I
「Can't Go Back」
Sampha/Kwes./El Guinchoプロデュース。このトラックにもIbeyiが参加しています。美しいピアノ、繰り返される♪Can't Go Back♪のフレーズ、Samphaのヴォーカルの組み合わせが印象的です。本作らしく中盤からドラムンベース調のリズムが加わるのがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Gd0r5ZZIj8U
「Evidence」
Sampha/El Guinchoプロデュース。父親になったSamphaが娘に「君が証拠だ」と語りかける感動トラック。
https://www.youtube.com/watch?v=Q3PqRMW1NKU
「Wave Therapy」
Samphaプロデュース。美しいストリングスによるインタールード。
https://www.youtube.com/watch?v=NHI_rzRLo14
「What If You Hypnotise Me?」
Samphaプロデュース。美しいピアノのリフレインに途中から電子パルスのようなリズムが加わったサウンドをバックに、Samphaが自らに問いかけるセラピー的なトラック。最後にLea Senの天使のようなヴォーカルが優しく包み込んでくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=WKum5xfFlbM
「Rose Tint」
Sampha/El Guincho/Riccardo Damianプロデュース。本編ラストはテレパシーによる交信で幸福感を確認し合っているようなチルアウト・トラックで締めくくってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=HoU3Tq6hgts
国内盤には以下の2曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。
「Re-Entry」
Sampha/El Guinchoプロデュース。哲学者ウィリアム・バレットの声のコラージュで始まりますが、全体的にはSamphaならではのビューティフル・ポップに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=R1ADzwpCfQ4
「Sensory Nectar」
Sampha/El Guinchoプロデュース。エクスペリメンタルな幽玄ネオソウル。なかなか興味深いトラックです。
https://www.youtube.com/watch?v=LLCHTfd2ZHI
未聴の方は、デビュー・アルバム『Process』(2017年)もチェックを!
『Process』(2017年)