2023年12月13日

Ed Motta『Behind The Tea Chronicles』

ブラジリアンAORの人気アーティスト5年ぶりの新作☆Ed Motta『Behind The Tea Chronicles』

発表年:2023年
ez的ジャンル:ブラジリアンAOR系男性シンガー
気分は... :休止まで残り8エントリーくらい

2023年12月30日でブログを休止します。詳しくはこちら

毎週日曜恒例の新作紹介のみでは紹介しきれない新作が出てきそうなので、水曜ですが新作を紹介します。

新作ブラジルものからEd Motta『Criterion Of The Senses』です。

ブラジルNo.1ソウル・シンガーTim Maiaの甥であり、1971年リオ・デ・ジャネイロ生まれの巨漢男性シンガー・ソングライターEd Mottaについて、これまで当ブログで紹介したのは以下の3枚。

 『AOR』(2013年)
 『Perpetual Gateways』(2016年)
 『Criterion Of The Senses』(2018年)

『AOR』で、タイトル通り、AORフリークぶりを発揮し、AOR人気の高い日本で大絶賛されたEd Motta

それ以降の『Perpetual Gateways』(2016年)、『Criterion Of The Senses』(2018年)もAOR路線で好評を得ました。

最新作『Criterion Of The Senses』はAORは勿論のこと、彼の好きな音楽、好きな映画、好きなTVシリーズなどの要素をすべて詰め込んだ、好きなものづくしのアルバムに仕上がっています。

プロデュース/ソングライティング/アレンジはEd Motta自身。

Michel Limmaが音楽ディレクターとしてクレジットされています。

さらにホーン・セクションはデトロイト、バック・コーラスはL.A.、ストリングスはチェコで録音したもの。デトロイトとL.A.のレコーディングは『Perpetual Gateways』(2016年)をプロデュースしたKamau Kenyattaがディレクションを務めています。

レコーディングにはMichel Limma(el-p、p、clavinet)、Sergio Melo(ds)、Tutty Moreno(ds)、Alberto Continentino(b)、Joao Oliveira(g)、Thiago Arruda(g)、Agustin Rios(congas)、Otavio Rocha(dobro)、Frank Colon(tabla)、Tiago Calderano(vibe)、Kris Johnson(tp)、Rafael Leafar(as)、Marcus Elliot(ts、clarinet)、Vince Chandler(tb)、Aldivas Ayres(tb)、Jesse Sadoc(tb)、Rafael Rocha(tb)、Kaleigh Wilder(b clarinet、bs)、Leandro Dantas(b clarinet)、Marcelo Martins(fl)、Cristina Braga(harp)等のミュージシャンが参加しています。

また、人気シンガーJames Ingramの弟であり、ソウル/ファンク・グループSwitchやブラコン/エレクトリック・ファンク・デュオDecoの元メンバーであったPhillip IngramRufusの初代ヴォーカリスト(二代目がChaka Khan)であったPaulette McWilliams等がバック・ヴォーカルで参加しています。

やはりEd Mottaといえば、Steely Dan/Donald Fagen風のトラックを期待してしまいますよね。

そういった期待に応えてくれるのは「Slumberland」「Safely Far」「Gaslighting Nancy」「Quatermass Has Told Us」「Shot in the Park」といったトラックです。

それ以外にBlue Thumb風の「Newsroom Customers」、ブラジリアン・テイストの「Deluxe Refuge」、従来のEd Mottaのイメージを覆すアーシーな「Buddy Longway」あたりも個人的にはオススメです。

Ed Mottaの音楽に留まらないマニアぶりに思わずニンマリする1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Newsroom Customers」
映画『Sweet Smell of Success(邦題:成功の甘き香り)』(1957年)にインスパイアされたオープニング。映画はBurt Lancaster演じるブロードウェイに大きな勢力をもつジャーナリストとTony Curtis演じるブロードウェイのプレス・エージェントを主人公に、ブロードウェイの暗黒面を描いたものです。Ed本人曰くBlue Thumb風サウンドということらしいです。なるほど流麗なストリングスとアーバンなジャズ・ファンクの組み合わせはBlue Thumbの香りを感じさせます。

「Slumberland」
タイトルは有名なコミック『Little Nemo in Slumberland(邦題:夢の国のリトル・ニモ)』に因んだもの。昨年Netflixでも同作を原作とした映画『Slumberland』が配信されましたね。EdのSteely Dan趣味とドリーミーなポップ・センスが融合したポップ・ソウル的な仕上がり。EdのヴォーカルもDonald Fagen感たっぷりです。
https://www.youtube.com/watch?v=zZX5Xas97SE

「Safely Far」
Ed本人曰くNorman Connors風の仕上がりらしいです。AOR/シティ・ポップ好きの人は気に入るであろうアーバン・メロウ・グルーヴ。こういうサウンドをバックにするとDonald Fagenを思わせるEdのヴォーカルが映えますね。
https://www.youtube.com/watch?v=FNlLLQhkfpA

「Gaslighting Nancy」
Ed本人曰く「アルバムで最もSteely DanとAORから影響を受けた曲」なのだとか。さらにAntonio Carlos Jobimらボサノヴァの影響もあるそうです。個人的には後期The Doobie Brothersの香りも感じます。いずれにしてもAOR好きの人であれば楽しめるアーバン・メロウ・グルーヴです。

「Of Good Strain」
ブロードウェイ・ミュージカルから影響を受けたワルツ調の仕上がり。ノスタルジックな雰囲気は悪くありませんが、オープニングからの流れが一度リセットされてしまう気も・・・

「Quatermass Has Told Us」
タイトルにある「Quatermass」とは1953年にイギリスBBCで放送されたSF連続ドラマ『The Quatermass Experiment』に因んだもの。
前半はSteely Dan/Donald Fagen風ですが、後半はJoao Oliveiraのギター・ソロ、素晴らしいホーン・アンサンブルなどダイナミックなサウンドで盛り上げてくれます。

「Buddy Longway」
従来のEd Mottaのイメージを覆すアーシーな演奏。ブラジルのブルース・バンドBlues EtílicosのメンバーOtavio Rochaがドブロをプレイしています。

「Shot in the Park」
これはDonald Fagen『The Nightfly』へのオマージュって感じですね。詳しくない人に『The Nightfly』収録曲と紹介してもバレないかも(笑)。『The Nightfly』好きの人は思わずニンマリするはず!

「Deluxe Refuge」
ブラジリアン・テイストのファンキー・メロウ。当ブログでも紹介したブラジル人コンポーザー/マルチプレイヤーMoacir Santosを意識したトラックだそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=VNLbBiuDVgo

「Tolerance on High Street」
スタンダード風のノスタルジック&エレガントな仕上がり。Ed本人曰くフィルム・ノワール風の仕上がりらしいです。

「Confrere's Exile」
CDボーナス・トラック。哀愁バラードをピアノ弾き語りで歌い上げます。

ご興味がある方はEd Mottaの他作品もチェックを!

『Manual Prático Para Festas, Bailes e Afins Vol.1』(1997年)
パーティ・マニュアル(1)

『As Segundas Intenções do Manual Prático....』(2000年)
As Segundas Intencoes Do Manue

『Dwitza』(2002年)
Dwitza

『Poptical 』(2003年)
ポップティカル

『Aystelum』(2005年)
Aystelum

『Chapter 9』(2008年)
Chapter 9

『Piquenique』(2009年)
Piquenique

『AOR』(2013年)
AOR

『Perpetual Gateways』(2016年)
Perpetual Gateways

『Criterion Of The Senses』(2018年)
クライテリオン・オブ・ザ・センシズ
posted by ez at 00:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする