発表年:1967年
ez的ジャンル:唯一無二オルガン・ボッサ
気分は... :一度聴いたらハマります!
今日はボサノヴァの中でもユニークなオルガン・ボッサを展開したWalter Wanderleyの紹介です。
Walter Wanderley(1932-1986年)はブラジルのオルガン奏者。ボサノヴァにおける唯一無二のオルガン奏者でした。ブラジル国内では1950年代から活躍していたようですが、1966年にMarcos Valleの名曲「Samba do Verao(邦題:サマー・サンバ)」をカヴァーしたことが彼に更なる成功をもたらします。
同曲は全米ポップ・チャート第26位のヒットとなり、同曲を収録したアルバム『Rain Forest』も全米アルバム・チャート第22位にランクインしました。こうしてWalter Wanderleyの名はブラジル国内に止まらず、世界中のポピュラー音楽ファンに知られるようになります。
そんな全盛期のWalter Wanderleyの作品が、ジャズの名門レーベルVerveに残した『Rain Forest』(1966年)、Astrud Gilbertoと共演した『A Certain Smile A Certain Sadness』(1966年)、『Cheganca』(1966年)、『Batucada』(1967年)の4枚です。
これらのうち、今日『Batucada』(1967年)をセレクト。
ブラジル音楽ファンのみならず、モッド・ジャズ好き、ラウンジ好きといった若い音楽ファンの方をも魅了する1枚だと思います。
前述のVerveに残した4作品のうち、本作以外の3作品はWalter Wanderley、Jose Marino(b)、Claudio Slon(ds)というWalter Wanderley Trioによる録音でしたが、本作『Batucada』にはClaudio Slonは参加していないようです。
(国内盤ライナーノーツにはClaudio Slonの名がありますが、クレジットやClaudio Slonのオフィシャル・サイトで調べた限り、『Batucada』には不参加のようです。僕の誤認であればゴメンなさい。)
本作におけるメンバーは、Walter Wanderley(org、p)、Jose Marino(b)、Sebastian Netto(b)、Dom Um Romao(ds)、Marcos Valle(g)、Lu Lu Ferreira(per)、Claudio Miranda(vo)、Talya Ferro(vo)という布陣です。
プロデュースはCreed Taylor。彼の貢献も大きいのでしょうね。
オルガン・ボッサ自体がユニークなので、その独特のサウンドやグルーヴに魅了されると思います。さらにモッド・ジャズやラウンジ好きの方がグッとするカッチョ良さ、スタイリッシュさがあるように思います。
全曲紹介しときやす。
「On the south side of Chicago」
Vic Damoneの歌でも知られるPhil Zeller作品。初めて聴く方は、オルガン・ボッサの独特のムードに魅了されることでしょう!
「O Barquinho (Little Boat)」
「小舟」という邦題でもお馴染みのRoberto Menescalによるボッサ・スタンダード。本ブログではElis Reginaのヴァージョンを紹介しました。本カヴァーではオルガン・ボッサらしい軽快さが印象的です。
「Batucada (The beat)」
本アルバムのハイライトであるタイトル曲。Paulo Sergio Valle/Marcos Valleによる名曲です。日本人にはオダギリジョーが出演していたKIRINキリン・ザ・ゴールドのCMで使われたbirdのカヴァーでお馴染みですね。
BATUCADA-バトゥカーダー
Walter Wanderleyのヴァージョンは、ロンドン・クラブ・シーンでもリヴァイバル・ヒットしたクールなボッサ・グルーヴに仕上がっています。スウィンギン・ロンドン+ボッサといった趣きのモッドな雰囲気がサイコーですね。
http://www.youtube.com/watch?v=FGDocC6hVeg
Marcos Valle自身のヴァージョンはアルバム『Samba '68』(1968年)に収録されています。また、本ブログでは以前にSergio Mendes & Brasil'66『Look Around』(1968年)収録のヴァージョンを紹介済みです。また、クラブ・ミュージック好きの方はTowa Tei『Future Listening!』(1994年)収録のカヴァーも見逃せませんね。
僕はたまたまこれらの作品を全て持っていますが、まとめて聴き比べしたことがありません。今度、iPodで試してみようっと!
「It Hurts to Say Goodbye」
Francoise Hardyの歌でお馴染みのSerge Gainsbourgの名曲(原題「Comment Te Dire Adieu」)。そんなフレンチ・ポップスの名曲を淡々としたオルガン・ボッサでサラッとカヴァーしています。
「Os Grilos (The Crickets Sing For Anamaria)」
Paulo Sergio Valle/Marcos Valle作品。個人的には「Batucada」に負けず劣らずカッチョ良いボッサ・グルーヴだと思いマス。
http://www.youtube.com/watch?v=vK2gwtKNQZo
「Minha Saudade」
Joao Donato/Joao Gilberto作品。ヴォーカル入りの親しみやすいキャッチーな仕上がりです。
「E Preciso Cantar (It's Time to Sing)」
Paulo Sergio Valle/Marcos Valle作品。ここではオルガンのみならずWanderleyのピアノも聴くことができます。
「So, What's New?」
Peggy Leeの代表曲ですね(Peggy Lee/John Pisano作品)。ラウンジ・ミュージック好きの方が喜ぶ仕上がりですね。
「Wave」
Antonio Carlos Jobimの名曲カヴァー。ヴォーカルはTalya Ferro。「Wave」と言えば、Jobim自身の『Wave』(1967年)収録ヴァージョンを思い浮かべる方が多いですが、個人的にはヴォーカル入りのヴァージョンが好きですね。本ヴァージョンもロマンティック・ムードたっぷりで大好き!
「Ainda Mais Lindo」
Paulo Sergio Valle/Marcos Valle作品。この曲もオシャレですね。ラウンジ系ボッサとでも呼びたくなる仕上がりです。
「Ela E Carioca (She's a Carioca)」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraesによるボッサ・スタンダード。邦題「彼女はカリオカ」の方がピンと来るかもしれませんね。サウダージ指数高めの仕上がりです。
「Jequibau (Pretty butterfly)」
Cyro Pereira/Mario Albanese作品。まさに可愛い蝶のように軽やかなWanderleyのオルガン・プレイを堪能できます。
本作を気に入った方は、『Rain Forest』(1966年)、Astrud Gilbertoと共演した『A Certain Smile A Certain Sadness』(1966年)あたりもどうぞ!