発表年:1980年
ez的ジャンル:フュージョン/R&B/ファンク系べーシスト&シンガー
気分は... :やはりファンク魂が欲しい!
今日は長年のMiles Davisグループでの活動で知られるべーシスト/シンガーMichael Hendersonのアルバム『Wide Receiver』(1980年)の紹介です。
Michael Hendersonは1951年ミシシッピ生まれ。その後デトロイトで育った彼は、10代前半でプロのべーシストとしてキャリアをスタートさせます。
Aretha Franklin、Stevie Wonder等のツアー・メンバーを務めた後、1970年よりジャズの帝王Miles Davisのグループに参加します。以降1975年にMilesが引退するまでエレクトリック・マイルスを支える天才べーシストとして活躍します。『A Tribute to Jack Johnson』(1970年)、『Live-Evil 』(1970年)、『On the Corner』(1972年)、『In Concert』(1972年)、『Get Up with It』(1970-1974年)、『Dark Magus』(1974年)、『Agharta 』(1975年)、『Pangaea』(1975年)等エレクトリック・マイルスの主要アルバムで彼のベース・プレイを聴くことができます。
Miles引退と共にソロ・アーティストとしての活動を開始したHendersonは、Norman Connorsのアルバムに"フィーチャリング・ヴォーカリスト"として招かれます。それきっかけに、Norman Connorsの橋渡しでBuddahとの契約に成功します。
Buddahでは、『Solid』(1976年)、『Goin' Places』(1977年)、『In the Night-Time』(1978年)、『Do It All』(1979年)、『Wide Receiver』(1980年)等の作品をリリースしています。
ソロ・アーティストとしてのMichael Hendersonはべーシストと言うよりも、ヴォーカリストとしての印象が強いかもしれませんね。『In the Night-Time』 のジャケ写真(マイクを片手に持ったHendersonの写真)なんて、どう見てもシンガーであり、とてもべーシストには見えません。
Hendersonの伸びやかで、スウィートで、ソウルフルな低音ヴォーカルは、"天才べーシスト"の肩書きが無くとも十分勝負できる魅力的なものだと思います。また、Hendersonのヴォーカリストとしての才能を見抜き、自身のアルバムに抜擢したNorman Connorsの眼力に驚かされますね。
と言いつつ、エレクトリック・マイルス大好きの僕としては、やはりMiles作品における"べーシスト"Michael Hendersonの印象が強いですね。なので、『In the Night-Time』やNorman Connors『You Are My Starship』における、"ヴォーカリスト"Michael Hendersonが同一人物であるというのがいまいちピンと来ませんでしたね。もちろん、"ヴォーカリスト"Michael Hendersonも好きですが...
その意味で今日紹介する『Wide Receiver』(1980年)は、"べーシスト"Michael Hendersonと"ヴォーカリスト"Michael Hendersonをバランス良く楽しめる作品になっていると思います。
Norman Connorsとの蜜月時代の作品に比べて、ファンク・モードが格段にパワーアップしています。やはりMichael Hendersonにはファンク・チューンが似合う気がします。
"ヴォーカリスト"Michael Hendersonがお好きな方は、甘〜いヴォーカル・チューンもしっかり収録されていますのでご安心を!
全曲紹介しときやす。
「You're My Choice」
オープニングはHendersonの甘いヴォーカルを堪能できるメロウ・グルーヴ。同時期のGeorge Bensonあたりとイメージが重なりますね。べーシストとしてのHendersonも健在で、メロウ・グルーヴを下支えする骨太ベースをブイブイ聴かせてくれます。僕の一番のお気に入り曲。
「Make Me Feel Like」
ご機嫌モードのミッド・ファンク。メロウな雰囲気の中にもHendersonのファンク魂が感じられる仕上がりですね。キュートなヴォーカルでHendersonのデュエット・パートナーを務める女性シンガーは若き日のCherrelleです(ここでは本名のCheryl Nortonでクレジットされています)。この後、本ブログでも紹介したようにJam & Lewisプロデュースのもと80年代半ばからソロ・シンガーとして活躍することになります。
「Reach Out for Me」
Dionne Warwickのヒットで知られるHal David/Burt Bacharach作品のカヴァー。Hendersonの低音ヴォーカルを堪能できる、甘く感動的なスロウに仕上がっています。アレンジが少し仰々しい気もしますが...
「Wide Receiver」
タイトル曲は全米R&Bチャート第4位(Henderson最大のヒット)となった疾走するファンク・チューンです。P-FunkをHenderson流に調理した、少しお下劣モードの仕上がりがサイコーですね。大音量で聴くほどテンション上がる演奏だと思います。
「I Don't Need Nobody Else」
以前に紹介したLou Courtneyのカヴァー(オリジナルはアルバム『I'm In Need Of Love』収録)。Marvin Gayeに強く憧れていたHendersonがLou Courtneyをカヴァーするのって、とてもわかる気がしませんか?この曲はNorman Connorsも本作と同じ1980年のアルバム『Take It To The Limit』の中でカヴァーしていますね。これって単なる偶然なのでしょうか?
「What I'm Feeling (For You)」
この曲は正統派R&Bヴォーカル・チューンに仕上がっています。Hendersonのヴォーカルと女性コーラス陣の絡みは素晴らしいのですが、僕には少し真っ当すぎるかも?
「Ask the Lonely」
Four Tops、1965年のヒット曲のカヴァー。Hendersonが本当に気持ち良さそうに歌っているのがわかります。伸びやかで、スウィートなHendersonの低音ヴォーカルと哀愁のサックス・ソロが実にマッチしています。
「There's No One Like You」
レコーディング参加メンバーRandall Jacobsの作品。CDの原文ライナーノーツに"Doobie Brothers「What a Fool Believes」をディスコチックにした仕上がり"といった説明がなされていますが、確かにそんな感じかも?
「Prove It」
シングルとしてR&Bチャート第27位となったファンク・チューン。ロック・テイストのギターが唸りまくります。Ray Parker Jr.がギターで参加。Ray Parker Jr.とMichael Hendersonってギタリストとべーシストの違いこそあれ、とても共通するものを感じる2人ですよね。
次回は、"ヴォーカリスト"Michael Hendersonの魅力を堪能できる作品『In the Night-Time』(1978年)を紹介したいと思います。