発表年:1993年
ez的ジャンル:ミステリアス系女性ジャズ・ボーカル
気分は... :嫉妬したならば、進歩して乗り越えろ!
最近、たまたま人間の「嫉妬」について考えさせられる出来事にいくつか遭遇しました。
ご存知のように「嫉妬」とは、自分から見て良く見えるものなどを持っている相手を快く思わない感情のことです。
嫉妬の具体的な状態には以下の2つがあるそうです。
1.上に見える人を見て反感を抱く
2.下に見える人を見て悦に入る
そして、嫉妬心の強い人は1の状態を解消するために、その相手の弱点やミスを無理矢理探して侮辱し、2の状態を作りたがります。
こうした行為が卑しいものであるということは多くの人が認識していると思います。
でも、無意識のうちにこうした行為をしていることはありませんか?
だからこそキリスト教の「7つの大罪」の1つに挙げられているのでしょうね。
自分より優れた人に出会って"悔しい"と嫉妬することは誰しもあります。
でも、相手を侮辱しなくとも、自分が進歩することで追い抜くこともできるはずです。
嫉妬を「侮辱」で解消するか、「進歩」で解消するか、人間の器量が試される場面かもしれませんね。
さて、現在のジャズ界における最高の女性シンガーの一人Cassandra Wilsonの2回目の登場です。
やはり秋になるとこの人の歌が恋しくなりますね。
前回はグラミー賞最優秀ジャズ・ボーカル・アルバム賞を受賞した『New Moon Daughter』(1995年)でしたが、今回は世界的な注目を集めるようになったBlue Note移籍第1弾アルバム『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)です。
Cassandraのアルバムを聴くたびにジャズ、ソウル、ブルース、カントリーといったジャンルの枠を超越したシンガーであるこということを痛感しますね。その意味ではジャズ・ファンは勿論のこと、ソウル・ファンにぜひ聴いて欲しいジャズ・シンガーという気がします。
こんなディープでミステリアスでクールでエモーショナルな低音女性ヴォーカルはなかなか聴けないのでは?
その精霊が宿ったような声を一度聴くと、胸ではなく腹に染み渡ってくる感じですね。
土臭いのに洗練されているバック陣の演奏も素晴らしいですね。特にギターのBrandon Ross、ヴァイオリンのCharlie Burnham、パーカッションのCyro Baptistaあたりが目立ちます。
秋の夜長には、こんなディープ&ブルージーなアルバムが似合うはず!
全曲紹介しときやす。
「You Don't Know What Love Is」
オープニングは多くのジャズ・アーティストによって演奏されているスタンダード。オリジナルは1941年のミュージカル映画『Keep'em Flying(凹凸空中の巻)』です(Gene DePaul/Don Raye作品)。本ブログでもJohn Coltrane(アルバム『Ballads』収録)、Sonny Rollins(アルバム『Saxophone Colossus』収録)の演奏を紹介しています。
ひたすらディープ&ブルージーなCassandraのヴォーカルとミステリアスな響きを奏でるBrandon Rossのギターの絡みが絶品です。Charlie Burnhamのヴァイオリンもムードを盛り上げてくれます。
この1曲でCassandra Wilsonというヴォーカリストの魅力に引き寄せられるのでは?
「Come on in My Kitchen」
伝説のブルース・ギタリストRobert Johnson作のカヴァー。同じミシシッピ州出身ということもありますが、CassandraがRobert Johnson作品を取り上げるのってハマりすぎですよね。Cassandraがカントリー・ブルースを歌って悪いはずがありません。
「Tell Me You'll Wait for Me」
Charles Brownによる1940年代のR&Bチューンのカヴァー。Cassandraの低音ヴォーカルがズシッと腹まで響いてくるのがいいですね。Kenny Davisのエレガントなベース・プレイによる好サポートも目立ちます。
「Children of the Night」
The Stylisticsでお馴染みの曲ですね(Thom Bell/Linda Creed作品)。多彩なパーカッションとBrandon Rossのギターによるリズミックかつエレガントなバックを従えて、Cassandraがミステリアスな歌声を聴かせてくれます。
「Hellhound on My Trail」
Robert Johnsonの作品のカヴァー2曲目。こちらもアーシーなカントリー・ブルースに仕上がっています。Brandon Rossのスティール・ギターがかなりカッチョ良いです。Olu Dara(ラッパーNasの父親)がコルネットで参加。
「Black Crow」
Joni Mitchellのカヴァー(オリジナルはアルバム『Hejira』収録)。CassandraはJoni Mitchellのファンなので取り上げたのでしょうね。ここではパーカッション隊とゲスト参加のDon Byronによるクラリネットのみによるアフリカンな仕上がりが印象的です。自由でオーガニックでコズミックなヴォーカル&演奏がサイコーですね!
「Sankofa」
この曲はCassandraのオリジナル。多重録音で素晴らしいアカペラを聴かせてくれます。様々な音色のCassandraのヴォーカルを堪能しましょう。
「Estrellas」
レコーディングに参加しているパーカッション奏者Cyro Baptistaの作品。ブードゥー的な雰囲気も漂うパーカッシヴなアフリカン・サウンドが印象的です。
「Redbone」
Cassandra Wilsonのオリジナル。「Estrellas」からシームレスに続くこの曲も実にパーカッシヴです。ジャズでもソウルでもブルースでもない、まさに"Cassandra Wilson"というジャンルの歌&演奏にうっとりです。
「Tupelo Honey」
僕の一番のお気に入りは大好きなVan Morrison作品のカヴァー。「Tupelo Honey」カヴァーの最高峰なのでは?Cassandraのクール&エモーショナルなヴォーカルも最高ですが、Brandon RossのギターやCharlie Burnhamのヴァイオリンもサイコーです。この1曲だけでも聴く価値アリですよ!
「Blue Light 'Til Dawn」
タイトル曲はCassandraのオリジナル。ディープ・サウスらしいブルージーな仕上がりです。アーシーなんだけど実にスタイリッシュなのが摩訶不思議!
「I Can't Stand the Rain」
エンディングはAnn Peeblesによるソウル・クラシックのカヴァー。オリジナルとは違った魅力で名曲を堪能できます。この曲をこんなスタイルでカヴァーしてしまうとは...脱帽です。
久々に聴きましたが、音の中に吸い込まれそうです!
普段はほとんど聴かないけど、たまに引っぱり出す時はかなり真剣に聴いたりします。
だって、軽くBGMにってわけにはいきませんから・・。
>ジャズでもソウルでもブルースでもない、まさに"Cassandra Wilson"というジャンル
まさにそうだと思います。Sadeのように。
実際、中古CD屋でもあらゆるジャンルのコーナーで見かけますしね。
私はjoni mitchelきいたことあるのですが、シェラ・マクドナルドならよく聞きます。
ここのブログは自分の趣向に合っていけそうで、これからもチェックさせていただきたいなとおもいました。
ありがとうございます。
確かにBGM的には聴けないディープなアルバムですね。
と言いつつ、ウィスキー片手に聴きたくなります(笑)
ありがとうございます。
> このブログはライナスさんと関連しているのですか?
関係ありません。
ライナスさんという方は存じあげません。
これからもお気軽にお立ち寄りください。