発表年:2008年
ez的ジャンル:名曲カヴァー系男性R&B
気分は... :男性R&B、秋の新作ラッシュ!
いよいよ男性R&B、秋の新作ラッシュが始まりましたね。
Ne-Yo、Eric Benet、Raphael Saadiq、Joe、Pretty Ricky、John Legend、Musiq Soulchild等々注目の新作が目白押しですね。嬉しい反面、経済的に困窮しそうで心配です(泣)
今回はそんな男性R&B新作ラッシュの口火を切って、Kenny Lattimoreの新作『Timeless』をセレクト。全曲カヴァーで占めたカヴァー・アルバムです。
Kenny Lattimoreは1967年ワシントンDC生まれ。1989年に5人組の男性R&BグループManiquinの一員としてデビューしますが、成功には至りませんでした。その後ソロに転向し、1996年に1stアルバム『Kenny Lattimore』をリリースします。続く2ndアルバム『From the Soul of Man』(1997年)からはシングル「For You」がR&Bチャート第6位のヒットとなりました。
2002年には本ブログでも紹介した女性R&BシンガーChante Mooreと結婚し、その後Kenny Lattimore & Chante Mooreとして、『Things That Lovers Do』(2003年)、『Uncovered/Covered』(2006年)という夫婦アルバムをリリースしています。
新作『Timeless』は『Weekend』(2001年)以来7年ぶりのソロ・アルバムとなります。
Al Green、Aretha Franklin、Marvin Gaye、Stevie Wonder、Otis Redding、Donny Hathawayといったソウル界の巨匠から、Beatles、Elton Johnといったロック/ポップス界のスーパースター、さらにはJeff Buckley、Terence Trent D'Arbyという意外な人たちまで、Kenny Lattimoreが今まで影響を受けたアーティストの楽曲がセレクトされています。
僕の場合、Chante Mooreとラブラブ・モードだった『Things That Lovers Do』の印象が強く、官能系シンガーというイメージすらありました。しかし、今回カヴァーした選曲を眺めてみると、繊細で、内省的な、ゴスペルライクな楽曲が多く、前述の僕のイメージが表層的なものであったと反省しています。
振り返ると、『Uncovered/Covered』(2006年)も半分はゴスペル・アルバムだったので、そういった彼のゴスペル/スピリチュアル路線の延長線上で考えると、今回の選曲も納得ですね。
オリジナルを知っている人はそれらと聴き比べながら、知らない人はこれを機にオリジナルも聴いてみると楽しめると思います。
全曲紹介しときやす。
「Something」
オープニングはAl Greenのカヴァー。オリジナルはアルバム『Have a Good Time』(1976年)に収録されています。オリジナルに近い雰囲気のアレンジで聴かせてくれます。その分、Al GreenとKenny Lattimoreのヴォーカルスタイルの違いを対比しやすく、興味深く聴けます。Kenny Lattimoreがゴスペル回帰的なこの曲を選ぶのって、とてもよくわかりますね。
「Everybody Here Wants You」
伝説のシンガーソングライターJeff Buckleyのカヴァー。オリジナルの翳りのある雰囲気をそのまま残してカヴァーしています。意外な選曲という気もしますが、Jeff Buckley(1997年没)が多くのミュージシャンに影響を与え続ける偉大なアーティストであると再認識しました。
Jeff Buckley「Everybody Here Wants You」
http://jp.youtube.com/watch?v=OUChkPU3cGg
「You Are My Starship」
先日紹介したばかりのMichael Hendersonがソングライティング&ヴォーカルを務めたNorman Connorsの1976年のヒット曲のカヴァー(アルバム『You Are My Starship』収録)。アルバムからの第1弾シングルにもなっています。個人的に大好きな曲なので、嬉しいカヴァーですね。Lattimoreの甘くソウルフルなヴォーカルが実にマッチする楽曲です。
「And I Love Her」
ご存知、Beatlesの名曲カヴァー(オリジナルはアルバム『A Hard Day's Night』収録)。オリジナルとは異なるリズミックなアレンジが実に新鮮ですね。本アルバムで最もサプライズな出来栄えだと思います。
「Come Down In Time」
Elton Johnのカヴァー(オリジナルは『Tumbleweed Connection』収録)。このカヴァーも絶品ですね。オリジナルの魅力にプラスαを加えた仕上がりって感じですね。
「Ain't No Way」
Aretha Franklinの名曲バラッドのカヴァー(アルバム『Lady Soul』収録、Carolyn Franklin作品)。神聖なこの曲がLattimoreにハマらない訳がないですよね。オリジナル同様、魂が揺さぶられる仕上がりです。
「That's The Way Love Is」
Marvin Gayeの1969年のヒット曲のカヴァー(オリジナルはIsley Brothers、Norman Whitfield作品)。実にオーソドックスなカヴァーですが、それが逆にいいですね。
「It Ain't No Use」
Marvin Gayeの次はStevie Wonderです。オリジナルは『Fulfillingness' First Finale』に収録されています。なかなかシブい選曲に思わずニヤリとしてしまいます。
「I Love You More Than Words Can Say」
Otis Redding、1967年のシングルのカヴァー(Booker T. Jones/Eddie Floyd作品)。Lattimoreの甘いヴォーカルでOtisをカヴァーというのも、なかなか楽しいですね。
「Undeniably」
Terence Trent D'Arbyのカヴァー(オリジナルは1995年のアルバム『TTD's Vibrator』収録)。アルバム全体を見渡しても、違和感のあるセレクトですが、逆に興味深いですね。特にTTDが既に下降線であった時期の作品というあたりに何か理由があるのでしょうね。仕上がり自体は、ミステリアスな雰囲気が面白いですね。
「Giving Up」
ラストはDonny Hathawayの1972年のシングル曲カヴァー(アルバム『Donny Hathaway』収録、Van McCoy作品)。本作の流れとして、この曲で締めくくるというのはピッタリですね。
個人的にはChante Mooreと一緒にラブラブモードなアルバムをまた作って欲しいなぁ〜(笑)
変なとこピックしていますが、まさにその通りなのです。私も。
錬金術使えないかなあって誰かが言ってたな。
経済的な制約があるからこそ、自分が本当に聴きたい作品をちゃんと吟味するのかもしれませんね。