発表年:1980年
ez的ジャンル:モッズ+パンク+α
気分は... :時代の代弁者...
Paul Weller率いるThe Jamの久々の登場です。
これまでThe Jamは以下の3枚を紹介してきました。
『All Mod Cons』(1978年)
『Setting Sons』(1979年)
『The Gift』(1982年)
4枚の紹介となるのは5thアルバム『Sound Affects』(1980年)です。
3rdアルバム『All Mod Cons』で大ブレイクしたThe Jamは、4thアルバム『Setting Sons』でUKロック・シーンの頂点に立ちます。厳密には80年3月にリリースされたシングル「Going Underground」がグループ初のUKシングル・チャート第1位になった時がThe Jamの絶頂期でしょうが。
名実共にUKロックのNo.1バンドとなったThe Jamが、周囲の大きな期待の中でリリースしたアルバムが『Sound Affects』です。
本作はUKアルバム・チャート第2位という、それまでのグループの最高位を記録しましたが、『All Mod Cons』、『Setting Sons』あたりと比較すると評価が分かれたアルバムです。また、“過渡期のアルバム”、“Beatles『Revolver』的なアルバム”といった説明も多いですね。
前作と比較して音楽的な幅の広がりが顕著なアルバムですが、そこの好き/嫌いが分かれるのでしょう。個人的には最初に聴くべきThe Jam作品ではないけれど、『All Mod Cons』、『Setting Sons』や代表的なシングル(ベスト盤を活用しましょう)を聴いた後ならば、かなり楽しめるアルバムだと思います。
リード・シングル「Start」は確かにBeatles「Taxman」にそっくりですが、“Beatles『Revolver』的なアルバム”といった説明は一面的な見方だと思います。サイケなアプローチ以外にもR&B/ファンク的なエッセンスを消化しようとしている面も随所にありますしね。
むしろ、次作『The Gift』を踏まえて考えると、R&B/ファンク的な要素に注目した方が興味深く聴けると思います。
当時のイギリスはサッチャー政権下で失業者が増加し、若者や労働階級の人々に閉塞感が蔓延していた時期でした。そんな中で多くの若者が自分たちの代弁者としてPaul Wellerを選んだのでしょうね。
今まさに時代の代弁者が求められているのかもしれませんね。
全曲紹介しときヤス。
「Pretty Green」
Bruce Foxtonのベースが推進力となっているオープニング。切れ味鋭いけど、勢いだけじゃないって感じがJamらしくて好きです。
「Monday」
語られることが少ない曲ですが、なかなかメロディアスでグッド!曇ったポップ感がいいですね。
「But I'm Different Now」
僕の一番のお気に入り曲。「Eton Rifles」、 「Going Underground」あたりがお好きな人ならば気に入るであろう疾走感溢れるストレートなロック・チューン。
「Set The House Ablaze」
「But I'm Different Now」、「Man In The Corner Shop」と並ぶ僕のお気に入り。『All Mod Cons』、『Setting Sons』のカッチョ良さをそのまま引き継いでいる感じがいいですね。実にエネルギッシュ!いつ聴いてもイントロでは思わず一緒に口笛吹いてしまいます(笑)
「Start」
アルバムからのリード・シングルであり、「Going Underground」に続きUKシングル・チャート第1位に輝きました。前述のようにBaetles「Taxman」そっくりのベースラインが印象的です。当時の僕はそれが気になって素直に好きになれず、複雑な思いで聴いていましたね。
「That's Entertainment」
アルバムからの2ndシングル。Paul兄貴のソロ・コンサートのレパートリーとしてもお馴染みの名曲ですね。Morrissey等がカヴァーしています。アコギを掻き鳴らすPaul兄貴が実に新鮮でした。この曲のPVはシンプルですがエラくカッチョ良いですよね。
http://jp.youtube.com/watch?v=mv55WsedLYI
「Dream Time」
テープの逆回転からスタートしますが、本編はJamらしい疾走感に充ちたR&Bテイストのロック・チューンです。
「Man In The Corner Shop」
この曲も僕のお気に入り。Paul Wellerのソングライティング能力の成長ぶりを窺える1曲なのでは?この曲もソロのコンサートのレパートリーになっていましたね。コンサートで聴くといかにも盛り上がりそうですよね。
「Music For The Last Couple」
この曲のみメンバー3人の作品としてクレジットされています(残りは全てPaul Weller作品)。Specialsあたりを意識したかのようなスカっぽいテイストが聴けるのが楽しいですね。
「Boy About Town」
モッズ・ヒーローThe Jamらしい1曲。ホーン・セクションの使い方あたりは次作『The Gift』やStyle Councilを予感させてくれますね。エンディングがThe Who「Kids Are Alright」風で大好きです。
「Scrape Away」
混沌としたムードが漂う1曲。ジャケのイメージにピッタリですね。
この後、Paul Wellerは黒人音楽への傾倒を強めていき、ラスト・アルバム『The Gift』へ向かって突き進んでいくことになります。