発表年:1974年
ez的ジャンル:ルーツ回帰系スピリチュアル・ジャズ
気分は... :輪廻転生...
NHK-BS1でMartin Scorsese監督によるBob Dylanのドキュメンタリー映像『No Direction Home:Bob Dylan』(2005年)を観ながら記事投稿しています。
単にDylanのキャリアを振り返るのではなく、Dylan自身へのインタビューや同時代に生きた人々の声を通じて当時の空気感や時代の流れが伝わってくるのが興味深いですね。
なかなか面白いので、改めてじっくり観たいですね。
ということでBob Dylanの作品...といきたいところですが、全く関係ないStanley Cowell『Musa・Ancestral Streams』(1974年)の紹介です(笑)
Stanley Cowellは1941年オハイオ州トレド生まれのジャス・ピアニスト。1960代後半にMax Roachのグループへ参加し、注目を集めるようになります。そして、Max Roachのグループで活動を共にしたCharles Tolliver(tp)と双頭ユニットMusic Inc.を結成します。
さらにCowellとTolliverは1971年に自身のレーベルStrata-East Recordsを設立し、アフリカンアメリカンの自立、ジャズの再生といった視点からスピリチュアルな作品を数多く残しました。
知性派ピアニストと知られているStanley Cowellの代表作と言えば、『Illusion Suite』(1973年)、『Musa・Ancestral Streams』(1974年)、『Regeneration』(1975年)あたりになると思います。特に人気があるのは『Musa・Ancestral Streams』と『Regeneration』の2枚でしょうね。僕もCowell作品と言えば、この2枚が真っ先に思い浮かびます。
ソウルフルなヴォーカルをフィーチャーした"壮大なスピリチュアル・ジャズ作品"『Regeneration』も大好きですが、今の季節にはソロ・ピアノの名盤として名高い"静かなるスピリチュアル・ジャズ作品"『Musa・Ancestral Streams』が似合うと思いセレクトしました。
全9曲のうち1曲を除いて過去にレコーディングした曲であり、それらをソロ・ピアノで再演したものです(「Travelin' Man」のみエレピ+親指ピアノ)。
本作のタイトルになっている"Musa"とはCowellのアフリカン・ネーム(Musa Kalamula)からとったものであり、サブタイトルの"Ancestral Streams(先祖からの流れ)"も含めて考えると、アフリカ回帰をかなり意識して制作されたアルバムであるといえます。
また、本作のリリース年と同じ1973年にCowellの良き理解者であった父親が69歳で亡くなっており、そんな父への想いも込められた作品なのでしょうね。
芸術の秋に相応しい、アーティスティック&スピリチュアルな1枚だと思います。
全曲紹介しときヤス。
「Abscretions」
Charles Tolliverとの双頭ユニットMusic Inc.のアルバム『Music Inc.』(1970年)収録曲。壮大なスケール感のある演奏にアフリカ回帰の流れを強く感じます。
「Equipoise」
CowellやCharles Tolliver(tp)、Gary Bartz(as)らが参加したMax Roach『Members, Don't Git Weary』(1968年)で初レコーディングされた楽曲です。個人的には一番のお気に入り!瞑想モードのひたすら美しいスピリチュアル・チューンです。目を閉じるとそこに映るものは...
Pharcyde「On The DL」でサンプリングされたり、Build An Arkがアルバム『Peace With Every Step』(2004年)でカヴァーしていますね。
「Prayer for Peace」
この曲のみ本作が初披露です。「Equipoise」とは対照的に力強い躍動感を感じる演奏ですね。平和を祈るCowellの強い思いがよく伝わってきます。
「Emil Danenberg」
『Illusion Suite』(1972年)収録曲。少しアヴァンギャルドな雰囲気が漂うアーティスティックな演奏です。
「Maimoun」
「Emil Danenberg」同様に『Illusion Suite』(1972年)収録曲。タイトルは本作の共同プロデューサーであるViki McLaughlin女史のことだそうです。"Maimoun"はカタカナ表記すると"マイムーン"となりますが、曲の出来は"Maimoun"というより"My Moon"といった趣のエレガントな演奏です。
CowellがMJQ解散後のPercy Heathと組んだユニットThe Heath Brothersのアルバム『Marchin' On』(1975年)でも再演しています。また、J Dilla「Trashy」のサンプリング・ネタにもなっていますね。
「Travelin' Man」
Cowellの代表作といえばこの曲ですね。本作以外に『Blues for the Vietcong』(1969年)、『Regeneration』(1975年)でも演奏されています。
ここではエレピと親指ピアノを使ったアフリカ回帰モードのスピリチュアルな演奏を堪能できます。
この名曲はPharcyde「On The DL」や以前に紹介した『Kero One Presents:Plug Label』収録のAloe Blacc & King Most「With My Friends」でネタとして使われたり、Sound Directions(Madlib)によってカヴァーされたりしています。
「Departure No. 1」
「Departure No. 2」
『Blues for the Vietcong』(1969年)やMusic Inc.『Music Inc.』に収録されています。にジャズ・ピアニストStanley Cowellのピアノ・プレイを存分に楽しみましょう。
「Sweet Song」
『Blues for the Vietcong』(1969年)収録。スウィートというよりもビューティフルな仕上がりですね。心洗われる清らかな1曲。
個人的には曲紹介の中でも触れたMax Roach『Members, Don't Git Weary』、Music Inc.『Music Inc.』、同『Live at Historic Slugs'』、The Heath Brothers『Marchin' On』あたりもちゃんと聴いてみたいですね。
Members, Don't Git Weary
Live At Historic Slugs