発表年:2008年
ez的ジャンル:Schema系クラブジャズ
気分は... :クラブジャズの濃縮ジュース
今回はクラブジャズ・ファン必聴の1枚、Nicola Conteの新作『Rituals』です。
Nicola Conteはイタリアの人気DJ/プロデューサー/ミュージシャン。クラブジャズの人気レーベルSchemaを拠点に、ヨーロピアン・ジャズの最重要人物としてシーンを牽引しています。
これまで自身のアルバムとして『Jet Sounds』(2000年)、『Bossa Per Due』(2001年)、『Jet Sounds Revisited(リミックス・アルバム)』(2001年)、『Other Directions』(2004年)といった作品をリリースしています。
前々から『Jet Sounds』を紹介しようと思っていたのですが、そんな間に新作がリリースされてしまいました...
約4年ぶりの新作となる『Rituals』ですが、全13曲中11曲がヴォーカル入りという点が特徴的です。そして、Jose James、Philipp Weiss、Kim Sanders、Chiara Civello、Alice Ricciardiという多彩なヴォーカリストが参加しています。
特にJose Jamesは、あのGilles Petersonに"15年に 一人の逸材"と言わしめた現在大注目のシンガーです。デビュー・アルバム『The Dreamer』は、その絶賛の言葉通りの内容でしたね。
バックのメンバーも豪華です。基本はFabrizio Bosso(tp)、Pietro Lussu(p)、Pietro Ciancaglini(b)、Lorenzo Tucci(ds)というNicola Conteのコンボとその派生グループ(Schema Sextet、LTC、High Five)のメンバーが中心です。Nicola Conte自身もギタリストとして参加しています。
Lussu、Ciancaglini、Tucciの3人が組んだグループLTCは、昨年リリースしたアルバム『A Different View』がサイコーでしたね。また、 Bosso率いるHigh Fiveは以前に本ブログでMario Biondiと組んだ『A Handful Of Soul』を紹介しましたね。さらに今年リリースした『Five For Fun』も大人気です!
その他ゲストとして、"Chet Bakerの再来"と言われる人気のドイツ人トランペット奏者Till Bronnerは前作『Other Directions』に続いての参加です。フィンランドの人気グループThe Five Corners QuintetからはTeppo Makynen(ds)、Timo Lassy(bs、fl)の2人が参加しています。意外なところではアメリカ人アルトサックス奏者Greg Osbyも参加しています。元々M-BASE派の人ですが、どうしても大胆にHip-Hopへアプローチした『3-D Lifestyles』(1993年)の印象が強いですね。
Nicola Conteの作品で、これだけのメンバーが集まれば、悪いはずがありません。クラブ・ジャズ好きの方は曲単位でいろいろ楽しめると思います。
また、クラブ・ジャズをあまり聴かないという方には入門編としても最適だと思います。ヴォーカル曲が多い分、入りやすいのではないかと思います。
2曲のカヴァーを除いて全てNicola Conteのオリジナルです。
全曲紹介しときやす。
「Karma Flower」
Chiara Civelloのヴォーカルをフィーチャー。退廃的な美しさを感じる仕上がりです。少し気だるいヴォーカルと美しく響くハープやフルートが印象的ですね。
「Nubian Queens」
話題のJose Jamesをフィーチャー。ナイル河の上流をさす"Nubian"をタイトルに冠したアフリカン・テイストのディープな仕上がりです。Jose Jamesのブラック・フィーリング溢れるヴォーカルが実にマッチしていますね。Fabrizio Bossoのトランペット、Timo Lassyのバリトンサックスのソロもいかしています。
クラブ仕様という点では国内盤にボーナストラックとして収録されている本曲のリミックスSamba Versionがグッド!。
「Like Leaves in the Wind」
この曲もJose Jamesをフィーチャー。僕好みのラテンタッチの小粋な仕上がりです。このスタイリッシュな疾走感こそがNicola Conteならではのスタイリッシュさが溢れており、クラブジャズを聴いている!って気分になります。Gianluca PetrellaのトロンボーンとPietro Lussuのピアノのソロもサイコー!
「Love In」
Kim Sandersのヴォーカルをフィーチャーした軽快なアフロキューバン・グルーヴ。この曲もクラブジャスならではの疾走感を堪能できます!Kim Sandersとバック・コーラスのPhilipp Weissの絡みがいい感じです。後半の盛り上がりはかなり来ますね。
「Awakening」
Jose Jamesをフィーチャー。スリリングなアップチェーンの後は暫し小休止ということで、ロマンティックかつセクシーなミッドナイト・モードのワルツに仕上がっています。
「Paper Clouds」
Chiara Civelloのヴォーカルをフィーチャー。かなりラウンジ感覚のボッサ・チューンに仕上がっています。オシャレ・モードがお好きな方に!
「I See All Shades of You」
Alice Ricciardiのヴォーカルをフィーチャー。僕の一番のお気に入りはこのスタイリッシュなアフロキューバン・グルーヴです。パーカッシヴかつクールな疾走感がたまりません。Fabrizio Bossoのトランペット・ソロとDaniele Scannapiecoのテナー・ソロがカッチョ良すぎです。
「Macedonia」
旧ユーゴ出身のトランペット奏者Dusko Gojkovicの作品をカヴァー。エスニックかつミステリアスな雰囲気が漂います。
「Song of the Seasons」
Alice Ricciardiのヴォーカルをフィーチャー。「I See All Shades of You」と並ぶ僕のお気に入り。洗練され尽くしたワルツといった感じですね。カフェのBGMにぴったりな仕上がりです。Greg Osbyが短いながらも気の利いたアルトソロを聴かせてくれます。
「Red Sun」
Kim Sandersのヴォーカルをフィーチャーした激シブ・チューン。哀愁モードの仕上がりは秋にぴったりです。
「Black Is the Graceful Veil」
Kim Sandersヴォーカルをフィーチャー。ブラック・フィーリングに溢れたアフリカンな人力ハウスといった仕上がりはクラブ・ジャズのみならずハウス・ファンも虜にするのでは?さり気ないヴァイヴやハープの音色が心憎いですね。
「Caravan」
Duke Ellingtonと楽団のJuan Tizolが作曲したアフロ・キューバン・ジャズ・クラシック。ここではPhilipp Weissのヴォーカルをフィーチャー。この曲の持つミステリアスな魅力を残しつつも、かなりエキサイティングな演奏を聴かせてくれます。特にTill BronnerとFabrizio Bossoという人気トランペッター2人の競演にはワクワクしますね。
「Rituals」
ラストはインスト。ヴォーカルものもいいですが、このメンツならばインストものもいいですね。クールにアルバムの余韻に浸るといった趣です。
本作を気に入った方は参加メンバーの関連作品もどうぞ!
機会があれば本ブログでも紹介したいと思います。
Jose James『The Dreamer』
ザ・ドリーマー
LTC『A Different View』
ア・ディファレント・ヴュー
High Five『Five For Fun』
Five for Fun
The Five Corners Quintet『Chasin' the Jazz Gone By』
チェイシン・ザ・ジャズ・ゴーン・バイ
Till Bronner『Rio』
リオ~ボサ・ノヴァの誘い