![The Blue Mask](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/410Kqe-9BaL._SL160_.jpg)
発表年:1982年
ez的ジャンル:センセーショナル系ロック詩人
気分は... :カルト・ヒーローから普通の男へ...
今週は忘年会でもないのに毎晩飲み歩いていたため、肝臓が相当ヤバい状態...こんなご時世だからもっと節制しないといけないよなぁ...なんて思っていたら急にLou Reedが聴きたくなってきました。
ということで、我が道を行くロック詩人Lou Reedの『The Blue Mask』(1982年)です。
Lou Reedのソロ作の紹介は代表作『Transformer』(1972年)に続き2回目となります。
70年代後半のLou Reedは試行錯誤が続き、トンネルに入り込んでしまった印象でしたが、そこから抜け出した充実の80年代の第一歩となった作品が『The Blue Mask』(1982年)だったと思います。
『The Blue Mask』はAristaから古巣RCAへの復帰第一弾アルバムです。
敢えて『Transformer』のジャケ写真を再び使用しているあたりに、原点回帰しようとしたLouの思いが込められているのかもしれませんね。
レコーディング・メンバーはLou Reedに、Richard Hell & the VoidoidsのメンバーであったRobert Quine(g)、Jan Hammer GroupにいたFernando Saunders(b)、元Jethro TullのDoane Perry(ds)という4人のみ。スタジオ・ライブ風の演奏はシンプルながらもロックの醍醐味を存分に伝えてくれます。特にRobert Quineの存在はLouに大きな刺激を与えたのでは?
サウンドのみならず、やはりLou Reed作品は詩に注目ですね。1980年にSylvia Moralesと結婚し、プライベート面での充実を窺わせる詩が多いのが目立ちます。カルト・ヒーローから普通の男へイメチェン中といった感じですね(笑)結婚と言えば、Louは今年4月に長年のパートナーLaurie Andersonと正式に結婚したようですね。
また、1966年に亡くなったLouの詩の師匠Delmore Schwartzや1963年のJFK暗殺といった、60年代にLouに影響を与えた人物や出来事をテーマにしている作品も興味深いですな。
シンプルながらも凄まじいパワーを感じるアルバムです。
全曲紹介しときやす。
「My House」
オープニング曲はLouの師匠Delmore Schwartzに捧げられたもの。なかなかの名曲だと思います。言葉をかみしめながら歌うLouのヴォーカルからは静かなるパワーが発せられている気がします。♪彼は僕が出会った中で最も偉大な男だった♪とLouに歌わせてしまうDelmore Schwartzという詩人は相当ぶっ飛んだ人だったらしいですね。
「Women」
♪I Love Woman〜♪普通の男性歌手が歌えば当たり前の歌詞ですが、バイセクシャルであるLouが歌うと意味深ですよね(笑)こういう歌詞を歌うということは奥さんのSylviaと幸せな結婚生活を過ごしていたのでしょうね。
「Underneath the Bottle」
酒に溺れた男の歌。今週飲み過ぎで反省中の僕には耳が痛い歌詞ですな(笑)
「The Gun」
銃を持ち、いまにも引き金を引こうとしている男を歌ったもの。穏やかなサウンドと穏やかなLouの語り口が逆にテンションを高めてくれます。
「The Blue Mask」
タイトル曲は激しく狂ったロック・チューン。このメンバーによる演奏の魅力を堪能できます。今にも暴発しそうな張り詰めた空気感がたまりません。
「Average Guy」
♪俺はどこにでもいる普通の男♪と全然普通の男ではない歌い方で歌うところが実に面白いですね。聴けば聴くほど、アブノーマルな雰囲気が漂ってきます(笑)
「The Heroine」
最初タイトルを見た時はVelvet Underground時代の名曲「Heroin」の再演だと勘違いしてしまいました(笑)虚しい空気感がいいですね。
「Waves of Fear」
骨太の演奏を堪能できるロック・チューン。「The Blue Mask」と同様に激しく凶暴なロック・サウンドを堪能できます。
「The Day John Kennedy Died」
タイトルの通りJFK暗殺の日を歌ったもの。♪僕はアメリカ大統領になることを夢見ていた♪という歌詞をLou Reedが歌うというのが興味深いです。
「Heavenly Arms」
聴いていればわかると思いますが妻Sylvia Moralesのことを歌ったもの。LouにとってSylviaは天国からの贈り物だったのでしょうね。男気のあるラブ・ソングにかなりグッときます。
本作で弾みをつけたLouは『Live in Italy』(1983年)、『New York』(1989年)といった作品を含む充実の80年代を駆け抜けていきます。個人的には『New York』がイチオシですね。