発表年:1983年
ez的ジャンル:UK女性ニューウェイヴ・バンド
気分は... :この乾いたポップ感覚がクセになる
今日は脱力モード...
こんな時にはユル〜イ感じの音楽が聴きたい!
ということで、70年代後半から80年代前半に活躍した女性ニューウェイヴ・バンドThe Raincoatsの3rdアルバム『Moving』(1983年)です。
The Raincoatsは、1977年にAna da Silva(vo、g) Gina Birch(vo、b)という女性二人で結成されたロンドンのニューウェイヴ・グループ。その後Vicky Aspinall(violin)が加わり3人組となっています。
1979年にデビュー・アルバム『The Raincoats』をリリースし、同じ時期にデビュー・アルバム『Cut』をリリースしたThe Slitsと共に女性のみのパンク/ニューウェイヴ・バンドとして注目を集めました。
その後、『Odyshape』(1981年)、『Moving』(1983年)という2枚のオリジナル・アルバムをリリースしてグループは解散します。
しかし90年代に入り、NirvanaのKurt Cobainが自身のお気に入りアーティストとしてThe Raincoatsの名を挙げたことで再びスポットライトを浴び、再結成されることになりました。
The Slits同様、演奏はアマチュアのりですが、そんなことを超越したアヴァンギャルドな存在感があるグループですね。攻撃的なThe Slitsと比較すると、もう少しとぼけた魅力を持ったグループだと思います。
今日紹介するのは3rdアルバム『Moving』(1983年)です。
本作においては元PIL(Public Image Ltd)のドラマーRichard Dudanskiが参加しており、正式には女性3名、男性1名の4人組です。
オリジナルLPのジャケは赤地にメンバー4人のシルエットが描かれていたのですが、CD化に伴い青地に女性メンバー3人のシルエットに変更されてしまいました。どうやら、Richard Dudanskiの存在はメンバーというよりゲスト・ミュージシャン扱いになってしまったようですね。
楽曲構成にも変更があります。
オリジナルLPはA面6曲、B面6曲の全12曲でしたが、今日紹介するCDではオリジナルから3曲を削除し、シングル曲「No One's Little Girl」を加えた全10曲の構成になっています。
全体的には前2作と比較してグッと音楽的(?)になっていると思います。
キュートで乾いたポップ感覚はこのグループでしか味わえないものなのでは?
全曲紹介しときやす。
「No One's Little Girl」
前述のようにCD化に際して追加されたシングル曲。グループを代表するシングルですね。Vickyのバイオリンとエスニックなリズムの組み合わせが不思議なユル〜イ音空間へと誘ってくれます。この尖った脱力感(?)がたまりませんね。
「Ooh Ooh La La La」
レゲエ調なんですが、Raincoatsならではの乾いたポップ感覚が加わり、魅力的な仕上がりになっています。
「Dance of Hopping Mad」
つかみどころのない無国籍なポップ・ミュージック。とても中毒性のある仕上がりです。路線が全然違いますがTom Tom Clubあたりにも通じる魅力も感じます。
「Balloon」
ニューウェイヴっぽい音ながらも伝統音楽の要素がスパイスとして効いています。
「Mouth of a Story」
Anaの下手くそヴォーカルが逆にフレッシュな印象を受けるから不思議ですね。
「I Saw a Hill」
Raincoatsらしい民族音楽と伝統音楽が渾然一体となり、ニューウェイヴのテイストでまとめられています。
「Overheard」
大好きな1曲。アップテンポのリズムとエスニックなメロディの組み合わせが、Ginaのキュートなヴォーカルと実にマッチしています。
「Rainstorm」
哀愁モードの仕上がり。アヴァンギャルドかつエレガントな感じがいいですね。
「The Body」
Vickyのピアノが光るスリリングな展開です。特に後半の演奏はかなりエキサイティング!
「Animal Rhapsody」
Raincoats流ポップの完成形ととらえていい仕上がりなのでは?
オリジナルLPには他に「Dreaming Of The Past」、「Honey Mad Woman」、「Avidoso」といった楽曲も収録されていました。
久々に本作を聴きましたが、不思議と鮮度が落ちない内容ですね。
一度ハマるとクセになる音楽かもしれませんよ!