発表年:1974年
ez的ジャンル:カンタベリー系ミュージシャンズミュージシャン
気分は... :今、Wyattの歌がグッとくる!
"世界一悲しげな歌声"を持つシンガーRobert Wyattの代表作『Rock Bottom』(1974年)の紹介です。
Robert Wyattは1945年ブリストル生まれ。1966年にDaevid Allen、Kevin Ayers、Mike Ratledgeと共にSoft Machineを結成。Soft Machineはカンタベリー・ロック/ジャズ・ロックを代表するグループとしてUKロックに足跡を残しました。
Soft Machineにおいてドラマー/ヴォーカリストとして活躍したWyattでしたが、音楽的方向性の違いからアルバム『Fourth』(1971年)を最後にグループを脱退します。その後自身のグループMatching Moleを結成し、アルバムを2枚リリースします。しかし、3rdアルバムの準備中にパーティーの席上で酔ったまま窓から転落してしまいます。
下半身不随となりドラマー生命を絶たれてしまったWyattですが、周囲のサポートによりシンガーとして復活します。その後はミュージシャンズミュージシャンとして数多くのアーティストからリスペクトを受けつつ、存在感のあるヴォーカリストとしてマイペースながらも良質な作品をリリースし続けています。
2007年にリリースされた最新作『Comicopera』では、Brian Eno、Paul Weller、Phil Manzaneraといったミュージシャンがサポートしています。、RadioheadのThom Yorkeも絶賛した『Comicopera』は、UKの音楽誌Wireによって2007年のベスト・アルバムに選出されるなど健在ぶりを示してくれました。
僕がRobert Wyattへ興味を持ったのは、Elvis CostelloらがWyattのために書いた名曲「Shipbuilding」が最初でした。その悲しげな歌声が脳裏から離れませんでしたね。
Robert Wyatt「Shipbuilding」
http://jp.youtube.com/watch?v=B6T9qp9XbRY
僕が愛聴するWyatt作品は、『Rock Bottom』(1974年)、『Ruth Is Stranger Than Richard』(1975年)、『Shleep』(1997年)あたりですかね。
やはり最初に聴くべきは、下半身不随となった後のカムバック作品『Rock Bottom』(1974年)だと思います。
以前から独特の歌声を披露していたWyattですが、転落事故からカムバックまでの様々な人生経験が彼のヴォーカルに深みと凄みを与えてくれました。ヴォーカルが際立つシンプルなサウンドと相俟って、真の意味でのシンガーRobert Wyatt誕生のアルバムと言えると思います。
プロデュースはPink FloydのNick Mason。バックにはSoft Machine時代の盟友Hugh Hopper(b)、元CaravanのRichard Sinclair(b)、元GongのLaurie Allan(ds)、Mike Oldfield(g)、南アフリカ出身のジャズ・ミュージシャンMongezi Feza(tp)、Matching Moleに参加予定であったGary Windo(ts)等が参加しています。
今回初めて知ったのですが、後年再リリース時にジャケが下記のように変わっていたんですね。
でも、カラフルなジャケよりも本作にはオリジナルの淡いジャケが似合っていると思います。
人生なんて試練の連続...それでも人は生きていかねばならない!
絶望の淵に立っても、希望さえ捨てなければ前進することができる!
こんな暗い時代だからこそ、Robert Wyattの"世界一悲しげな歌声"が胸の奥にズシリと響いてきます。
全曲紹介しときやす。
「Sea Song」
必聴の名曲!この曲を初めて聴いた時はかなりの衝撃でしたね。悲しげで不安を抱かせるサウンドの向こうから聴こえてくるWyattの淡々とした歌には、絶望の淵から甦ってきた男の生きるパワーが漲っています。聴いているだけで胸に迫ってくるものがありますね。殆どビートのない独特の音空間にも引き込まれます。
http://jp.youtube.com/watch?v=_9g6La7wmzA&feature=related
「A Last Straw」
Hugh Hopper(b)、Laurie Allan(ds)が加わり、ジャズ・テイストのアンサンブルが展開されます。不協和音が効果的ですね。Wyattのヴォーカルもサウンドと一体化していてグッド!変てこなスキャットも面白いです。
「Little Red Riding Hood Hit the Road」
Mongezi Fezaのトランペットをフィーチャーしたフリーキーな仕上がり。WyattがFezaのファンだったようですね。そのため、WyattのヴォーカルというよりエキサイティングなFezaのトランペットにしびれる1曲。Wyatt作品ということを抜きにして楽しめるジャズ作品です。
http://jp.youtube.com/watch?v=x9jpqOedORY&feature=related
「Alifib」
「Alife」
2曲は対の楽曲であり、Wyattの奥方Alfieについて歌ったものです。「Alifib」はWyattのキーボードとHugh Hopperのベースのみの演奏が展開された後に、苦難を支えた最愛の妻への思いが切々と歌われる叙情的な仕上がりです。「Alife」はパーカッシヴな演奏をバックにポエトリー・リーディングが展開されるアヴァンギャルドな仕上がりです。フリーキーなGary Windoのサックスもグッド!
「Alifib」
http://jp.youtube.com/watch?v=9yQj4DMAsaY&feature=related
「Little Red Robin Hood Hit the Road」
ラストはかなりドラマティックな展開です。 Wyattの"世界一悲しげな歌声"でグッと迫り、『Tubular Bells』でお馴染みMike Oldfieldのギターが大活躍し、ポエトリー・リーディングも展開され、ヴィオラも鳴り響いてきます。
東京は雪が降るのでしょうか?
今日は大人しく家に居ようっと!