録音年:1966年
ez的ジャンル:Coltrane流フリー・ジャズ
気分は... :やっぱりアゲインだよね!
今日はいよいよNFLの頂上決戦「カーディナルス対スティーラーズ」のスーパーボウルです。
個人的には初制覇を狙うカーディナルスを応援していますが、実力的には強力守備陣を擁するスティーラーズが一枚上という気がします。
ここ数年、毎年生放送で観ていたのですが、今年は仕事で録画放送で観戦予定です。残念!
音楽ファンは、Jennifer Hudsonによる国歌斉唱、Bruce Springsteenにハーフタームショーも楽しみですね。
今日はジャズの求道者John Coltraneの6回目の登場です。
これまで紹介してきたColtrane作品は以下の5枚です。
『Blue Train』(1957年)
『My Favorite Things』(1960年)
『Ballads』(1962年)
『Impressions』(1961年、62年、63年)
『Kulu Se Mama』(1965年)
今回は『Live At The Village Vanguard Again!』(1966年)です。
タイトルの通り、本作は有名なジャズ・クラブVillage Vanguardで1966年に行われたライブ・レコーディングです。
ジャズ・ファンの方はご存知のとおり、本作は1961年の『Live At The Village Vanguard』に対するアゲイン!です。
但し、同じVillage Vanguardのライブでも本作『Live At The Village Vanguard Again!』は『Live At The Village Vanguard』の続編といった内容ではありません。
『Live At The Village Vanguard』は、前年にMilesのグループから脱退し、自己のグループを結成した上昇モードのColtraneが、Eric Dolphy(bcl)、McCoy Tyner(p)、Reggie Workman(b)、Elvin Jones(ds)といったメンバーを率いて演奏した定評のある名ライブ作品です。
その後、Jimmy Garrison(b)がグループに加わり、Coltrane、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Elvin Jones(ds)という最強カルテットが実現します。『A Love Supreme(至上の愛)』(1964年)で最強カルテットは1つの完成形を迎えます。
その後フリージャズの方向へ大きく舵を切ったColtraneですが、他のメンバー次第に戸惑いを感じ、『Meditations』(1965年)を最後にMcCoy Tyner、Elvin Jonesの二人はグループを去ります。
そして、McCoy、Elvinに代わり、Pharoah Sanders、Alice Coltrane、Rashied Aliが加わったJohn Coltrane(ts、ss、bcl)、Pharoah Sanders(ts、fl)、Alice Coltrane(p)、Jimmy Garrison(b)、Rashied Ali(ds)というニュー・グループで行われたライブ・レコーディングされた作品が『Live At The Village Vanguard Again!』(1966年)です。実際にはEmanuel Rahim(per)を加えた6名による演奏です。
とにかく壮絶&圧巻のライブです。聴いていて、好き/嫌いを考える以前に圧倒されるというのが正直な感想です。翌年に肝臓ガンで死去するColtraneですが、それを予期していたかのような凄まじいパワーでキャリアの総決算をしている印象を受けます。
Coltrane作品の中では、ある程度の枚数を聴いたあとに聴くべきアルバムだとは思いますが、「Naima」(アルバム『Giant Steps』収録) 、「My Favorite Things」(アルバム『My Favorite Things』収録)といったお馴染みの曲の新解釈に興味は尽きないはずです。。
途中で脱落せず最後まで聴くことができる人は、Coltraneにハマっている証拠だと思います(笑)
全曲紹介しときやす。
「Naima」
Coltraneの前妻Naimaに捧げた作品であり、前述の『Giant Steps』(1959年)が初演です。
ColtraneとPharoah Sandersという二人のサックスの対比が面白いですね。まずはColtraneがリリカルにテーマを披露したのに続き、Pharoahが"どフリー"なテナーで狂いまくります。フリージャズが苦手な方はここで脱落かも(笑)。再びColtraneが登場し、今度はフリーな演奏で締め括ってくれます。同じフリーでもPharoahほど凶暴ではなく、探求者然としているのがColtraneらしいかもしれませんね。
あとはスピリチュアルな雰囲気も醸し出すAliceのピアノが実に効果的です。本作のレコーディング直前にColtraneの妻となったAlice Coltraneは前妻に捧げられたこの曲をどのような心境で演奏したのでしょうね?
聴き終わった時のスピリチュアル・ジャズならではの高揚感が湧いてきます。
本曲は数多くのジャズ・ミュージシャンがレコーディングしていますね。正統派ジャズ以外にもCarlos Santana & John McLaughlin、Lonnie Liston Smith等も取り上げています。さらにクラブ・ミュージックがお好きな方は、2000Black(4 Hero)、Hipnoticといったアーティストがカヴァーしているので、そちらと聴き比べてみるという楽しみ方もあると思います。
Hipnotic「Naima (Ian O'Brien mix)」
http://jp.youtube.com/watch?v=k428KiOPY0c
「Introduction To My Favorite Things」
タイトルの通り、「My Favorite Things」のイントロとなるJimmy Garrisonによる約6分間のベース・ソロ。本来は「My Favorite Things」と合わせて1曲で良いと思いますが。LP時代のA/B面の構成の関係で、この部分のみ分けられたのかもれませんね(LPでは「Naima」と本曲がA面、「My Favorite Things」がB面)。
コアなジャズ・ファンでもない僕は、6分間のベース・ソロなんてあまり聴く機会がないので、そういう意味で興味深いですね。テクニック的なことはよくわかりませんが、あの手この手で楽しませてくれますし、格好良いです!
「My Favorite Things」
Garrisonのベース・ソロで期待が高まったところで、いよいよ本編突入です。アルバム『My Favorite Things』収録バージョンの印象で聴くと、とんでもない目に遭うかもしれません。フリーなプレイの合間にお馴染みのメロディが微かに聴こえてくるとホッとするはずですよ(笑)。
でも、この『My Favorite Things』バージョンとの違いにこそ、Coltraneミュージックの進化を感じとることができるのでは?長い音楽探求の旅を経て、ついに手にした音世界をここで聴くことができます。ちょっと触れただけで火傷しそうな熱い情熱がこの演奏に凝縮されているはずです。
本曲で言えば、『Selflessness』での演奏も圧巻ですね。『My Favorite Things』→『Selflessness』→『Live At The Village Vanguard Again!』という流れで、聴き比べていくと興味深いのでは?
このライブ録音は1966年5月に行われましたが、7月には本グループを率いて最初で最後の来日公演を果たしています。来日公演の模様はアルバム『Live in Japan』で聴くことができます。