発表年:1981年
ez的ジャンル:カムバック・マイルス
気分は... :アカデミー賞観ました?
昨日は第81回アカデミー賞授賞式がありましたね。
約4時間しっかり生放送で観てしまいました。仕事しろって!(笑)
日本人としては、やはり『Departures(おくりびと)』の外国語映画賞受賞は感動的でしたね。
全体としては、『The Curious Case Of Benjamin Button(ベンジャミン・バトン/数奇な人生)』を抑えた『Slumdog Millionaire(スラムドッグ$ミリオネア)』の圧勝でした。低予算作品が巨額制作費の作品に勝利したのは映画界全体の流れとして良かったのでは?
個人的には受賞作品、受賞者よりも、司会を務めたHugh Jackmanの見事なパフォーマンスが印象的でした。単なるイケメン俳優だと思っていたので、歌って、踊れて、話も上手で...と見事なエンターテイナーぶりにびっくりしてしました。特に音楽ファンとしては、滅多に観ることができないBeyonceとの音楽パフォーマンスは圧巻でしたね。
音楽で言えば、オリジナル作曲賞&オリジナル歌曲賞をダブル受賞したインド音楽界の巨匠A.R. Rahman(Slumdog Millionaire)のパフォーマンスも素晴らしかったですね。昨日に限って言えば、一緒にステージに立った(大好きな)John Legendよりも存在感がありましたね。
Queen Latifahが追悼コーナーでスタンダードを歌っていましたね。彼女にはスタンダードではなく、ラップをして欲しいのですが。また、Alicia Keysにはプレゼンターだけではなく、パフォーマンスを披露して欲しかったですね。
さて、今日はジャズ界の帝王Miles Davisの『The Man With The Horn』(1981年)です。ジャケに描かれている像が何となくオスカー像っぽい(?)のでセレクトしてみました(笑)
これまで紹介してきたMiles作品は以下の11枚(録音年順)♪
『Bag's Groove』(1954年)
『'Round About Midnight』(1955、56年)
『Cookin'』(1956年)
『Miles Ahead』(1957年)
『Milestones』(1958年)
『Someday My Prince Will Come』(1961年)
『Miles Smiles』(1966年)
『Filles De Kilimanjaro』(1968年)
『In A Silent Way』(1969年)
『On The Corner』(1972年)
『Get Up With It』(1970、72、73、74年)
相変わらず、『Kind of Blue』(1959年)、『Bitches Brew』(1969年)を後回しにしていますが(笑)
ファンの方はご存知の通り、『Agharta』(1975年)、『Pangaea』(1975年)という大阪でのライブ録音2作品を最後に病気療養のため、活動を休止してしまいます。
そして、約6年ぶりの復帰作として発表された作品が今日紹介する『The Man With The Horn』(1981年)です。
本作を含めて、復帰後の作品に対するジャズ・ファンからの評価はあまり高くありませんね。
そもそも復帰後のMilesはラップ/Hip-Hop等最新ブラック・ミュージックのエッセンスを積極的に取り入れ、ジャズの範疇では収まりきらない作品をリリースしていました。Scritti Politti『Provision』(1988年)、Cameo『Machismo』(1988年)といった作品へのゲスト参加からも、こうした傾向がうかがえます。
そして極めつけは、最後のスタジオ録音作となった『Doo-Bop』(1992年)でしょう。ラッパーのEasy Mo BeeがプロデュースしたHip-Hopアルバムである同作をジャズ・ファンが聴いても全然ピンと来ないでしょうし、到底受け入れられなかったと思います。
『The Man With The Horn』はそんな晩年のMilesの出発点となった作品です。
メンバーは、Miles Davis(tp)、Bill Evans (ss)、Mike Stern(g)、Barry Finnerty(g)、Robert Irving(p)、Randy Hall(syn、vo)、 Marcus Miller(b)、Felton Crews(b)、Al Foster(ds)、Vincent Wilburn(ds)、Sammy Figueroa(per)という布陣です。特にMarcus MillerのMiles作品初登場が目を惹きますね。プロデュースはお馴染みTeo Macero。
全部で6曲収録されていますが、Al Foster、Bill Evans、Marcus Miller等を擁するメンバーによる4曲と、Milesの甥っ子Vincent Wilburnを中心とした2曲に大別できます。
ジャス・ファンからはVincent Wilburn絡みの2曲の評判が良くありませんね(Miles本人というよりVincentへの批判かもしれませんが)。きっと"何でMilesがこんな軟弱な演奏をするの!"ということなのだと思います。まぁ、それもわからなくはありませんが...軟弱な音も大好きな僕などは全然違和感ありません(笑)
インパクトという点では弱いかもしれませんが、Milesが決してエレクトリック・マイルスで立ち止まらず、さらなる進化へ歩みはじめたことを印象づけてくれる佳作だと思います。
アルバム全体を眺めてみるとバラエティに富んでおり、聴く人の嗜好でお気に入り曲がかなり変わってくるアルバムなのでは?という気もします。そんな聴き方をしても楽しめるのでは?
Milesマニアでもなく、ジャンルへのこだわりが全くなく、かつ"永遠のジャズ初心者"である僕のようなリスナーが案外一番楽しめる作品かもしれません。
全曲紹介しときやす。
「Fat Time」
アルバムのハイライトとなるのがこのオープニングなのでは?まずはAl FosterとMarcus Millerが生み出す骨太グルーヴにKOされ、そこにMilesのミュートが絡むと昇天しそうな気分になりますね。数あるMiles作品の中でも上位にくるカッチョ良さなのでは?それだけでも大満足なのに、さらにMike Sternのギターが暴れまくり、とどめを刺されます。ちなみにタイトルの"Fat Time"とはMike Sternのことなのだとか(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=TxDq65Wjua8
「Back Seat Betty」
ライブ・レパートリーとしてお馴染みの曲ですね。この張り詰めた感じが好きです。ゴチャゴチャしていない分、音空間での各プレイヤーの動きがクリアに聴こえていいですね。特にMarcus Millerのベースがたまりませんなぁ。フェードアウトで終わってしまうのがTeo Maceroらしい(笑)
「Shout」
さて問題のVincent Wilburn絡みの1曲目。曲もRobert Irving/Randy Hall等Vincent人脈のメンバーによるものです。所謂フュージョン・チューンに仕上がっています。個人的にはキャッチーでパーカッシヴな演奏はなかなかカッチョ良いと思います。まぁ、この演奏にMilesが加わる必要があるのかという気はしますが...それを意識せずに聴けば結構ノリノリになるはずですよ。
「Aida」
この曲もライブ・レパートリーになっていた曲です。エレクトリック・マイルス好きの人が聴いて安心する曲なのでは?確かに「Shout」の次に本曲を聴くと、「Shout」が安っぽく聴こえるのも仕方がないかもしれませんね(笑)。それ位スリリングでカッチョ良い音ですな。
「The Man With the Horn」
Vincent Wilburn絡みの2曲目(Robert Irving/Randy Hall作品)。このタイトル曲はなんとヴォーカル入りです(リード・ヴォーカルはRandy Hall)。歌詞はタイトルからわかる通りMilesのカムバックをテーマにしたものです。アーバン・ムードたっぷりのAORといった仕上がりです。普通にアーバン・ソウル/AORとして聴けば全然OKだと思うのですが、ジャズ・ファンはそれを許容しないのでしょうね。
http://www.youtube.com/watch?v=25vB7bWz2qY
「Ursula」
ラストは4ビートの曲です。やはりジャズ・ファンは軟弱なタイトル曲よりも、こういった4ビートにグッとくるのでしょうね。でも往年のMilesを懐かしむノスタルジックな演奏になっていないのが、さすが帝王ですね。
最近、記事ボリュームが多くて作成するのにエラく時間がかかります(泣)。自分で自分の首を絞めている気が...