発表年:1965年
ez的ジャンル:"ボサノヴァの妖精"系ボサノヴァ
気分は... :清楚でキュートな感じがたまりません!
今日はかつて"ボサノヴァの妖精"と称されたブラジル人女性シンガーWanda Sa(Wanda De Sah)の2ndアルバム『Softly!』の紹介です。
Wanda Sa(Wanda De Sah)は、1944年リオデジャネイロ、イパネマの生まれ(文字通り"イパネマの娘"の娘ですね)。
偉大なギタリスト/コンポーザーRoberto Menescalにギターを師事していましたが、TV番組に出演したことがきっかけでレコード・デビューのチャンスを得ます。
そして、Roberto Menescalプロデュースで制作されたのが、デビュー・アルバム『Vagamente』(1964年)です。レコーディングでは、Menescalのグループのピアニストであった弱冠20歳のEumir Deodatoがオーケストラの編曲・指揮を手掛けています。
『Vagamente』で注目を浴びたWandaは、「Garota de Ipanema(The Girl from Ipanema)(イパネマの娘)」の大ヒットでで一躍"ボサノヴァの女王"となったAstrud Gilbertoと人気を二分する女性シンガーとなります。後続の女性シンガーへの影響も大きく、Nara Leao、Joyce、Gal Costaといった、その後のブラジル音楽シーンを牽引することになる女性シンガー達へ大きなインパクトを与えたようです。
さらにWandaへの関心を示したのが、当時アメリカ進出に意欲を見せていたSergio Mendesでした。当時ピアノ・トリオで活動していたMendesは、アメリカで成功するためには女性シンガーの存在が不可欠と考え、そこで白羽の矢を立てたのがWandaでした。こうしてWandaを迎えて制作されたアルバムが『Brasil'65』です。この作品でWandaは"Wanda De Sah"の名で大きくフィーチャーされます。
レコード会社のWandaに対する期待は大きく(おそらくSergio Mendesよりも関心を持っていた)、そんな流れで制作された2ndアルバムが『Softly!』(1965年)です(このアルバムのアーティスト表記もWanda De Sah)。しかし、そんな期待に反してSergio Mendes & Brasil '65名義のライブ・アルバム『In Person at El Matador』(1965年)を最後に、Wandaはブラジルへ帰国してしまいます。
その後、Edu Loboと結婚した彼女は70年代には音楽活動から引退してしまいます(Loboとは1982年に離婚)。しかし、1989年に音楽活動を再開し、師匠Roberto Menescalとの共演作『Eu E A Musica』(1995年)、Celia Vazとのとの共演作『Brasileiras』(1996年)、Bossa Tresとの共演作『Wanda Sa & Bossa Tres』(2000年)、『Bossa Do Leblon』(2005年)、再びRoberto Menescalと共演した『Swingueira』(2006年)等の作品をリリースしています。
さて、本作『Softly!』ですが、デビュー作『Vagamente』とセットで手元に置いておきたいアルバムです。
ジャケ写真からして、"ボサノヴァの妖精"と言うイメージがピッタリですよね。
素人っぽいイノセントな雰囲気にグッときます(笑)
中身もジャケの雰囲気そのままの清楚でキュートな歌声が響きわたります。
バックはSergio Mendes(p)、Sebastiano Neto(b)、Chico Batera(ds)、Rosinha de Valenca(g)といったBrasil'65のメンバーが努めています。また、1曲を除きJack Marshall編曲・指揮によるオーケスレーションが施されています。
前述のように、本作はUSマーケットを狙って制作されたものであり、多くは英語で歌われています。その意味ではコアなブラジル音楽ファンにとっては少しビミョーかもしれませんが、逆に親しみやすくボサノヴァ入門アルバムにも向いているのでは?
また、Sergio Mendesファンは、Sergio Mendes & Brasil '66でのブレイク前夜として、本作や『Brasil'65』を聴くと楽しいのでは?
タイトルの通り、まさにソフトリーなボッサ・アルバムを堪能しましょう。
全曲紹介しときやす。
「Ho-Ba-La-La」
Joao Gilberto作品。映画のサントラのような雰囲気がいいですね。夕暮れの海に浮かぶヨットなんて光景が似合いそうな...
「Sweet Happy Life (Samba de Orfeu) 」
映画『Orfeu Negro(黒いオルフェ)』収録曲としてお馴染みの「オルフェのサンバ」(Luiz Bonfa作)のカヴァー。この曲で言えば、約1ヶ月半前に紹介したDaniela Und Annによるロリロリ・モードのガールズ・ソフトロック・カヴァーが最近のお気に入りだったのですが、Wandaヴァージョンは晴れた青空がよく似合う爽快な仕上がりです。
「Quiet Nights (Corcovado) 」
Antonio Carlos Jobimの名曲カヴァー。Astrud Gilbertoも取り上げていますね(アルバム『Getz Au-Go-Gol』収録)。当ブログではJoanie Sommersのキュートな“なんちゃって”ボッサ・カヴァーも紹介しました。WandaヴァージョンはUSマーケットを意識したロマンティックなアレンジがいい感じです。
「Aruanda」
Carlos Lyra/Geraldo Vandrsa作品。アルバムの中でもかなりお気に入りの1曲。奴隷生活を強いられた人々が夢の楽園を思い描く社会派ソングですが、軽やかなテイストで聴かせてくれます。この曲もAstrud Gilbertoが取り上げています(アルバム『The Shadow of Your Smile』収録)。
「The Dreamer」
Antonio Carlos Jobim作品の2曲目(原題「Vivo Sonhando」)。『Vagamente』でも取り上げられていましたね。エレガントなオーケストレーションをバックにムーディーな仕上がりです。まさに夢心地な1曲。3曲続けて、この曲もAstrud Gilbertoが取り上げています(アルバム『The Astrud Gilberto Album』収録)。
「So Danco Samba (Jazz 'N' Samba)」
Antonio Carlos Jobim作品の3曲目。鉄板ボッサ・ソングですよね。ここでは英語ではなく、Vinicius De Moraes作詞によるポルトガル語で歌われています。Wandaのコケティッシュな魅力と曲がマッチしています。この曲で言えば、Sergio Mendes & Brasil '66のヴァージョン(アルバム『Equinox』収録)を聴くことが多いですが、本ヴァージョンの影響を聴き比べてみるのも楽しいかもしれませんね。
「Once I Loved」
Antonio Carlos Jobim作品の4曲目(原題「O Amor em Paz」)。憂いを帯びた哀愁モードの仕上がりです。この曲もAstrud Gilbertoが取り上げています(アルバム『The Astrud Gilberto Album』収録)。
「Who Knows」
ラウンジ系DJに人気の1曲なのだとか。確かにそれも頷けるスタイリッシュな仕上がりですね。
「Tem Do」
「Aruanda」と並ぶ僕のお気に入り曲。Baden Powell作品のカヴァー。この曲のみオーケストラなしです。そのせいか弾け具合が際立って聴こえます。日本人の感性にジャスト・フィットするボッサ・チューンに仕上がっていますよ!
「With Feeling」
ボサノヴァと言うよりもジャズ・スタンダードといった雰囲気の仕上がりです。
「Agua de Beber」
邦題「おいしい水」最後はAntonio Carlos Jobim作品で締め括ります。この曲も鉄板ですね。やはり、こういったボサノヴァらしい曲・アレンジがいいですな。この曲もAstrud Gilbertoヴァージョンと聴き比べると楽しいかもしれませんね(アルバム『The Astrud Gilberto Album』収録)。
http://www.youtube.com/watch?v=8_VK3kNnZtE
恥ずかしながら、復帰後の作品は殆どチェックできていません。
一度きちんとチェックしたいと思っています。
特に師匠Roberto Menescalとの共演作は興味深いですね。
僕が今最も気になるアーティストRosalia De Souzaの2ndアルバム『Brasil Precisa Balancar』(2005年)をMenescalがプロデュースしたことを知り、Menescalへの関心が高まっているもので...