2009年04月12日

The Roots『Things Fall Apart』

Rootsの志の高さが窺える傑作☆The Roots『Things Fall Apart』
シングズ・フォール・アパート
発表年:1999年
ez的ジャンル:知性派&ダーク系Hip-Hop
気分は... :グループのターニング・ポイントになった1枚

唯一無二の存在である知性派Hip-HopグループThe Rootsの4回目の紹介です。

『Game Theory』(2006年)、『Do You Want More?!!!??!』(1994年)、『Rising Down』(2008年)に続いて紹介するのは、The Roots『Things Fall Apart』(1999年)です。

彼らにとって4thアルバムとなった本作は、初の全米アルバム・チャートTop10(第4位)入りを果たした作品であり、グループにとって大きな転換点になったアルバムではないかと思います。

ヒットしたと言っても売れ筋に走った訳ではなく、アーティステックなスタンスを失っていないのが、Rootsの面目躍如といったところなのでは?

本作には、D'AngeloErykah BaduJay DeeCommon、Mos Def、James Poyserといったミュージシャン/プロデューサーが参加しています。

これらのメンバーの名を見ると、当時の先鋭ミュージシャン/プロデューサーが集結したSoulquarians及びD'Angelo『Voodoo』Erykah Badu『Mama's Gun』Common『Like Water For Chocolate』といった21世紀の音楽シーンを切り拓いたSoulquarians関連作品が思い浮かびます。

その意味で、本作も『Things Fall Apart』『Voodoo』『Mama's Gun』『Like Water For Chocolate』とセットで聴くと、さらに楽しめる作品だと思います。

特に?uestloveD'Angelo『Voodoo』のレコーディングに触発されて本作『Things Fall Apart』を制作したようです。

従来からのジャジーな感覚を残しつつも、その後の彼らを支配するダークな世界観が印象に残りますね。

「Things Fall Apart」というタイトルは、ナイジェリアの作家Chinua Achebeの小説からとったものです。1950年代後半に出版されたこの小説は、ナイジェリアのとある村の生活が宣教師の到来と共に一変してしまう様子を描いた作品のようです。

ダークな世界観は、ジャケにも反映されています。
本作は「Girl」「Church」「Ace」「Riot」「Baby」という5種類のジャケでも話題になりましたね。Amazonには「Riot」のジャケしかないようですが...僕が持っているのは「Ace」です。(トランプの)スペードのエースを手にしたままの血まみれの死体は一番惨たらしいジャケかもしれません。

芸術性と社会性と商業性、この3つを同時達成したRootsに脱帽する1枚です。

ファンの中でも最高傑作に挙げる人が多い、Hip-Hop史に残る傑作だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Act Won (Things Fall Apart)」
プロローグ的なオープニング。Spike Leeがジャズ・ミュージシャンについて描いた映画『Mo'Better Blues』(1990年)における、主演のDenzel WashingtonとWesley Snipesによる音楽論争のシーンが使われています。創造性追求か?商業的成功か?ミュージシャンが抱えるジレンマを問題提起しています。

「Table of Contents, Pts. 1-2」
Rootsらしいダークネスが漂います。?uestloveのドラムが煽るアーティスティックな緊張感がいいですね。The Beginning of the End「Funky Nassau」ネタ。

「The Next Movement」
オススメその1。DJ Jazzy Jeffをフィーチャーしたシングル曲。ネオ・ソウル/ジャジーHip-Hop好きの人ならば気に入るであろうメロウ・グルーヴ。その心地好いグルーヴにJazzy Jeffのスクラッチが程好く絡んできます。
http://www.youtube.com/watch?v=BnevMn60Unk

「Step into the Realm」
Black Thought、Malik B.の巧みなフロウを堪能する1曲。

「The Spark」
D'Angeloがベース&キーボードで参加しています。派手な印象はありませんが、淡々とした展開の中にリアルなHip-Hopを感じることができるのでは?。

「Dynamite!」
オススメその2。Jay Deeプロデュース曲。僕の一番のお気に入り曲。Jay DeeおよびジャジーHip-Hop好きならば間違いない1曲なのでは?この時期のJay Deeの充実した仕事ぶりが窺えます。♪Touch this ill-a-5th dynamite♪Touch this ill-a-5th dynamite♪
http://www.youtube.com/watch?v=g5oTl0qEGPY

「Without a Doubt」
オススメその3。Schooly D「Saturday Night」ネタを使ったオールドスクールな仕上がり。Rootsらしからぬテイストですが、たまにはこういうのも楽しいのでは?

Schooly D「Saturday Night」
http://www.youtube.com/watch?v=Nr59F0UObm0

「Ain't Sayin' Nothin' New」
オススメその4。Black Thought & Dice Rawの疾走するフロウと浮遊感の中のあるバックの相性が抜群です。カッチョ良すぎ!
http://www.youtube.com/watch?v=6hANRXseFcg

「Double Trouble」
オススメその4。Mos Defをフィーチャー。Rootsらしい&ジャジー&クールな雰囲気に、Mos Defが引き締まったスパイスを利かせてくれます。特に後半のオールドスクールな展開がHip-Hopファンにとって楽しい展開なのでは?

「Act Too (Love of My Life)」
オススメその5。Commonをフィーチャー。Commonの過去の楽曲「I Used to Love H.E.R.」をオーバーラップさせながら聴くと、さらに彼の熱いラップが深く入ってくるのでは?フィリーサウンドへのリスペクトも感じる楽曲であり、後半にはMFSB等でお馴染みのチェロ奏者Larry Goldを中心としたストリングスも聴けます。James Poyserもキーボードで参加。全体の完成度もかなり高い1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=tjIcga4Afrg

「100% Dundee」
オススメその6。Black Thoughtの男気溢れた感じがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=3Ser5MYxOSU

「Diedre Vs. Dice」
Dice Rawをフィーチャーしたインタールード的な1曲。

「Adrenaline!」
Dice Raw & Beanie Sigelをフィーチャー。このキャッチーさはScott Storchの貢献が大きいのでは?

「3rd Acts: ? Vs. Scratch 2...Electric Boogaloo」
この曲もインタールード的な1曲です。

「You Got Me」
オススメその7。Erykah Baduも参加しているアルバムからの1stシングル。スパニッシュなギターをバックにしたBlack Thought & Eveの哀愁ラップがグッときます。そして、後半のドラムンベースな展開が"さすがは?uestlove!"と唸ってしまいます。ソングライティングに翌年ブレイクするJill Scottが加わっている点も興味深いですな。
http://www.youtube.com/watch?v=kBBBhQUl99w

Jill Scott & The Roots「You got Me」
http://www.youtube.com/watch?v=4b5lNKnqp_o

「Don't See Us」
オススメその8。ネオソウルなリズム感覚が魅力ですね。クールなオリジナルも好きですが、サックスをフィーチャーしてかなりキャッチーな仕上がりになったNutin But Sax Remixも好きです。

「Don't See Us (Nutin But Sax Remix)」
 http://www.youtube.com/watch?v=bcuS1yxJVr4

「The Return to Innocence Lost」
ラストはUrsula Ruckerをフィーチャーした12分弱にも及ぶポエトリーリーディング。このあたりが知的Hip-hopグループらしいですな。

それにしてもこの頃のSoulquariansメンバーの作品ってスゴすぎですね。
posted by ez at 05:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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