発表年:1967年
ez的ジャンル:スウィンギング・ロンドン系女性シンガー
気分は... :ジャケ買い大正解!
今回はスウィンギング・ロンドンのムーヴメントを代表する白人女性シンガーDusty Springfieldの『Where Am I Going』(1967年)です。
Dusty Springfield(1939-1993年)はロンドン生まれ。1960年に二人の兄とフォーク・トリオThe Springfieldsを結成しますが、1963年にグループを脱退し、ソロ歌手として活動するようになります。ツアーで訪れたアメリカでモータウン・サウンドに感化されたことが彼女を新たな方向へ誘ったようです。
そして1963年にソロ・デビュー・シングル「I Only Want To Be With You(邦題:二人だけのデート)」をリリース。1970年代のBay City Rollersのヒットでも知られるこの曲がUK、USチャート共にTop10に入るヒットとなり、ソウルフルなハスキー・ヴォーカルと共に一躍注目のシンガーとなりました。
「I Only Want To Be With You」
http://www.youtube.com/watch?v=3XQon5NsYVw
以降は「I Just Don't Know What to Do with Myself」(1964年、UKチャート第3位)、「You Don't Have To Say You Love Me」(1966年、UKチャート第1位、USチャート第4位)、「The Look Of Love」(1967年、Hal David/Burt Bacharach作品。映画『007/カジノ・ロワイヤル』主題歌)、「Son Of A Preacher Man」(1969年、UKチャート第3位)等ヒットチャートの常連シンガーとなります。
「The Look Of Love」
http://www.youtube.com/watch?v=a28kY1-s-Vc
「Son Of A Preacher Man」
http://www.youtube.com/watch?v=dp4339EbVn8
1970年代には低迷していましたが、1986年に人気ポップ・ユニットPet Shop Boysが彼女との共演を熱望します。そして、レコーディングされたシングル「What Have I Done To Deserve This?」がUK、USチャート共にTop3に入る大ヒットとなり、彼女は見事に復活を果たしたのでした。
Pet Shop Boys & Dusty Springfield 「What Have I Done To Deserve This?」
http://www.youtube.com/watch?v=Wn9E5i7l-Eg
残念ながら乳癌との闘病の末、1999年に59歳で死去。
死後10年となる現在でも多くファンから支持され、多くの女性シンガーに影響を与えている偉大なシンガーですね。
僕の場合、名前や代表曲は知っているもののアルバムまでは手が出ず...といった状況が長かったですね。そんな中でようやくゲットしたDusty Springfieldのアルバムが本作『Where Am I Going』です。
『A Girl Called Dusty』(1964年)、『Ev'rything's Coming Up Dusty』(1965年)という前2作(UK版)と比較すると、目立ったヒット曲も収録されておらず、商業的には不発に終わった作品です。しかしながら、90年代以降に再評価の高まっているアルバムであり、モロにスウィンギング・ロンドンしているジャケも含めて若いリスナーからも受け入れられている作品なのでは?
僕もやはりジャケに惹かれてゲットした部分が大きいかもしれません(笑)
内容的には、ソウル、ポップス、ジャズ、フォークの世界を自由かつ柔軟に行き来しているような構成です。
バック・ヴォーカルを務めるMadeline Bell、Lesley Duncan、との息もピッタリです。黒人シンガーMadeline Bellは当ブログでも紹介したフリーソウル人気作『This Is One Girl』でお馴染みですね。白人シンガーLesley Duncanもソロ作品をリリースしていますし、Pink Floyd『Dark Side Of The Moon』のバック・コーラスでお聴きの方もいるのでは?
シングル・ヒット曲はありませんが、Dusty Springfieldという一時代を築いた女性シンガーの魅力を存分に堪能できる1枚だと思います。
ジャケにグッと来た人はゲットすべし!
全曲紹介しときやす。
「Bring Him Back」
ノーザン・ソウルしているオープニング。この1曲だけで相当グッとくるはずですよ!パーカッシヴなアレンジがカッコ良すぎ!
http://www.youtube.com/watch?v=36oVw94zMKk
「Don't Let Me Lose This Dream」
Aretha Franklinのカヴァー。『I Never Loved a Man the Way I Love You』や『Aretha in Paris』でArethaヴァージョンを堪能されている方も多いと思いますが、Dustyヴァージョンも親しみやすいソウル・チューンに仕上がっていて大好き!
http://www.youtube.com/watch?v=uHYAPXA2iyk
「I Can't Wait Until I See My Baby's Face」
本作のハイライト。Saint Etienneのヒット曲「Nothing Can Stop Us」(1991年)でサンプリングされたことで、一気にこの曲への注目が集まりました。メロウ・ソウル・サウンドとDustyのハスキー・ヴォーカルの相性バッチリといった感じですね。
本曲はAretha Franklinも歌っています。また、バック・コーラスを務めるMadeline Bellが本作と同じ1967年に本曲をリリースしています(アルバム『Bell's a Poppin'』収録)。MadelineヴァージョンとDustyヴァージョンは、リード・ヴォーカルが異なるだけで殆どトラックは同じなのでは?YouTubeにDustyヴァージョンが無いのでMadelineヴァージョンを紹介しておきます。
Madeline Bell「I Can`t Wait Until I see My Baby`s Face」
http://www.youtube.com/watch?v=6zNL2Abb_q0
Saint Etienne「Nothing Can Stop Us」
http://www.youtube.com/watch?v=bSuxnF8dOPU
「Take Me for a Little While」
ライナーノーツに書いてある通り、Dusty、Madeline Bell、Lesley Duncanの3人が、まるで黒人ガールズ・グループのように聴こえてしまいます。素晴らしいチームワーク!
「Chained to a Memory」
ロマンティック・バラード。エヴァーグリーンな魅力に溢れています。胸キュンな感じがたまりません。
「Sunny」
Bobby Hebbの1966年のヒット曲のカヴァー。ビッグ・バンドを従えたスウィンギーな仕上がりがサイコー!オリジナル以上に好きです。以前に紹介した北欧ボッサの人気作Birgit Lystager『Birgit Lystager』にも本曲のカヴァーが収録されていますが、おそらくDustyヴァージョンをお手本にしているのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=ehy6VjLU8DY
Bobby Hebb「Sunny」
http://www.youtube.com/watch?v=IbUl_E-R91Q
「(They Long to Be) Close to You」
Carpentersの大ヒット曲で知られるHal David/Burt Bacharach作品。驚くべきは本ヴァージョンがCarpentersヴァージョンに3年先んじているという点ですね。それだけでも興味津々な1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=u53zaLpKpxM
「Welcome Home」
エレガントなストリングスを従えたスタンダード風のスロウ。
「Come Back to Me」
かなりお気に入りの高速スウィンギー・チューン。こうしたジャズ・ヴォーカルも難なくこなしてしまうあたりがスゴいですな。
http://www.youtube.com/watch?v=Y0XVwK-y4Sg
「If You Go Away」
一転して、しっとりとした哀愁チューン。雨の午後に聴くとピッタリな感じ!
http://www.youtube.com/watch?v=BCcbrnqSgYw
「Broken Blossoms」
トラディショナルを兄のTom Springfieldがアレンジしたもの。このあたりはSpringfieldsの名残りでしょうか。
「Where Am I Going?」
タイトル曲は1966年のブロードウェイ・ミュージカル『Sweet Charity』挿入歌。ライナーノーツに"イントロがピチカート"と書いてありましたが、確かにそんな雰囲気です。
オリジナルはここまですが、CDには「I've Got a Good Thing」、「Don't Forget About Me」、「Time After Time」の3曲がボーナス・トラックで収録されています。
「Time After Time」
http://www.youtube.com/watch?v=5PK_ZhXkGxs
Dusty SpringfieldのアルバムはUKとUSでリリースが異なるので気をつけましょう。ちなみに本作はUKリリース盤ですが、本作と同じ1967年にUSでは 『The Look Of Love』 というアルバムがリリースしており、約2/3の曲が本作と被っています。
他のアルバムではメンフィス録音 『Dusty in Memphis』 (1969年)やKenneth Gamble/Leon Huffプロデュースの 『From Dusty... With Love』 (1970年、US盤は 『A Brand New Me』 )あたりも聴いてみたいですね。
ありがとうございます。
いかにもスウィンギング・ロンドンらしいジャケにグッときますよね。
> お人形さんが歌ってるみたいですね!!
本作時点で彼女は28歳だったわけで、
アイドル・シンガーと呼ぶには???だったのかもしれませんが(笑)
このCD、ショップのサイトで視聴して
とても気にいったのですが…。
購入された方の「CDの音がすごく小さく感じる」という意見を読んで迷っています。
こちらのサイトではそのような事には
触れられていませんが音質はどうですか?
私は特に深くこだわる方ではないのですが
CDのボリュームについては問題ないと
思われますか?
ありがとうございます。
申し訳ありませんが、これだけ多くのエントリーを書いているので、各作品の音質まで細かく覚えていません。少なくても記事エントリーしたということは、特にそうした点は気になっていなかったということでしょう。
ただし、60年代の作品ですから、ある程度の音質の悪さは仕方ないと思います。
試聴されたのであれば、その時聴いたご自身の印象で判断するのが一番良いのでは?
曲はとっても気に入って、全曲通して聴いてみたいので
購入する事にします!