発表年:1967年
ez的ジャンル:MPB黎明期
気分は... :梅雨の雨模様で聴きたいのは...
都内は昨日の快晴から一転して梅雨の雨ですね。
こんな日に聴きたくなったのが今日紹介するNara Leao『Vento De Maio』(1967年)です。
ジャケからして雨の日にピッタリな気がしませんか?
Nara Leaoの紹介は『Dez Anos Depois』に続き2回目になります。
僕のように『Dez Anos Depois』から入ると、"ボサノヴァのミューズ"というイメージが強いNara Leaoですが、60年代半ばの彼女はボサノヴァと決別し、プロテスト・ソングやサンバを歌っていました。
本作も『Vento De Maio』もそんな時期にリリースされた作品ですが、それなりにボッサな雰囲気を味わえるアルバムだと思います。ボッサな雰囲気のNaraに出会いたい人にはグッとくるアルバムだと思います。
本作でNaraはサンバ、マルシャ、ショーロ等様々なタイプの楽曲を歌いますが、中でもChico Buarque(4曲)とSidney Miller(5曲)というNaraとは縁が深い2人のソングライターの作品を数多く取り上げています。
サンバ、マルシャ、ショーロ、ボサノヴァとバラエティに富んだ楽曲を小粋なアレンジで聴かせてくれるのがいいですね(アレンジはMaestro GayaとDorival Caymmiが担当)。アルバム全体のメリハリがあるので、ブラジル音楽やNara Leao入門編としても聴きやすい1枚なのでは?
翳りと爽快感が同居する感じがたまりません!
全曲紹介しときやす。
「Quem Te Viu, Quem Te Ve」
このオープニングから3曲目まではChico Buarque作品が続きます。本曲は哀愁のメロディとコーラスも入るサンバらしいパートが交互します。2つのパートのコントラストがあっていいですね。テンポも程好く、かなりグッときます。
YouTubeで作者のChico Buarqueのヴァージョン(MPB 4との共演)があってので紹介しておきます。
Chico Buarque e MPB 4「Quem Te Viu, Quem Te Ve」
http://www.youtube.com/watch?v=pFU_WteHiZc
「Com Acucar E Com Afeto」
邦題「思いやりの優しさ」。微妙な女心が歌われます。終盤のストリングスが盛り上げてくれます。
「Noite Dos Mascarados」
邦題「仮面の夜」。ここではGilberto Gilとのデュエット。男女のやりとりにグッとくるマルシャ(マーチ)です。YouTubeに作者のChico、Nara、MPB 4が共演したヴァージョンがありました。
Chico, Nara e MPB 4「Noite Dos Mascarados」
http://www.youtube.com/watch?v=n72vD9Wtt8Y
1967年の映画『Garota de Ipanema(イパネマの娘)』にChicoとElis Reginaの共演が収録されています。さらにElisはPierre Barouhとの共演でも本曲をレコーディングしています。
Elis Regina e Pierre Barouh「La Nuit Des Masques」
http://www.youtube.com/watch?v=-d-GWUZ7SMc
「Vento De Maio」
邦題「5月の風」。タイトル曲は前曲でデュエットしていたGilberto Gilの作品です(作詞はTorquato Neto)。途中でテンポアップするパートにグッときます。
「Maria Joana」
この曲からSidney Miller作品が3曲続きます。この作品はGal Costa e Caetano Veloso『Domingo』でも歌われていますね。Naraヴァージョンは爽快なボッサ・チューンに仕上がっています。単純ですが、僕などはやはりこの手のボッサ・チューンには相当グッときてしまいます。
「A Praca」
邦題「弱い女」。哀愁ボッサですが、Naraの歌声はこうした哀愁モードの曲がハマりますね。
「O Circo」
邦題「サーカス」。楽しく軽快な雰囲気がいいですね。本作と同じ1967年にQuarteto Em Cyもレコーディングしています。
http://www.youtube.com/watch?v=CFKtWFodjqY
「Morena Do Mar」
本作のアレンジを担当しているDorival Caymmiの作品。Naraの翳りのある歌声がたまりません。今日のような雨降りの日に聴くと相当グッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=uqpcdjoQKpU
「Fui Bem Feliz」
邦題「幸多かりし日々」(Jorginho/Sidney Miller作)。サンバのリズムをバックにハッピー・ソングと思いきや、♪私はとっても幸せだったの...でも今は違う♪と寂しげなサンバに仕上がっています。
「Rancho Das Namoradas」
邦題「恋人たちの小屋」(Ary Barroso/Vinicius de Moraes作)。素敵な歌詞にグッとくるマルシャ。ストリングスが盛り上げてくれます。
「Um Chorinho」
Chico Buarque作のショーロ。フルートが印象的なメランコリックな仕上がり。
「Passa Passa Gaviao」
邦題「鷹よ、飛べ」(Sidney Miller作)。平和への願いを込めたメッセージ・ソング。素敵なアレンジも含めて、心に染み入るエンディング。
CDにはボーナス・トラックとして「A Estrada E O Violeiro」が収録されています。Sidney Millerとのデュエットであり、リズミカルな仕上がりがグッド!Sidney Millerの1stアルバム『Sidney Miller』に収録されていた曲のようです。