2009年07月31日

Chet Baker『Chet Baker Sings And Plays』

夏に相応しいウェストコースト・ジャズ☆Chet Baker『Chet Baker Sings And Plays』
Chet Baker Sings and Plays with Bud Shank, Russ Freeman and Strings
録音年:1955年
ez的ジャンル:モテ男系ウェストコースト・ジャズ
気分は... :中性的ヴォーカルがグッとくる!

夏気分ということで、ウェストコースト・ジャズが聴きたくなりました。

今回は栄光と挫折のトランペット奏者Chet Bakerのアルバム『Chet Baker Sings And Plays』(1955年)です。

Chet Baker(1929-1988年)は、オクラホマ出身のジャズ・トランペット奏者。

Charlie Parkerに見出され、1952年にウエストコーストのGerry Mulliganのグループに参加し、華やかなデビューを飾ります。翌1953年には自身のコンボを結成し、初のリーダー・セッションを行っています。そして、人気を決定付けたアルバム『Chet Baker Sings』(1954-56年録音)ではヴォーカルも披露しています。

こうしてChet Bakeは瞬く間にウエストコースト・ジャズを代表するトランペット奏者として注目され、当時は帝王Miles Davisをも凌ぐ人気を誇っていたようです。

しかしながら、50年代後半から麻薬問題、傷害事件などのトラブルが続発し、長きにわたり演奏できない状態にあったようです。その後1970年代にカムバックを果たしますが、1988年にオランダ、アムステルダムのホテルの窓から転落し、波乱万丈の人生の幕を閉じました。

僕の中でChet Bakerは、"パシフィック・ジャズ"、"ウエストコースト・ジャズ"といった言葉から受ける眩しい印象も重なり、"色男"、"伊達男"という言葉が似合うモテ男ジャズ・ミュージシャンというイメージが強かったですね。

特に、トランペットに止まらず、ヴォーカルまでこなしてしまうという点に格好良さを感じたものです。それだけに転落死のニュースは衝撃的でした。光と影...両極端な人生だったのかもしれませんね。

そんなChet Bakerの代表作として真っ先に挙げられるのが、おそらく『Chet Baker Sings』(1954-56年)だと思います。「My Funny Valentine」をはじめ、いい曲が揃っていますからね。僕も昔は『Chet Baker Sings』ばかり聴いていました。
『Chet Baker Sings』
チェット・ベイカー・シングス

しかしながら、最近のお気に入りは今日紹介する『Chet Baker Sings And Plays』(1955年)です。この作品は『Chet Baker Sings』に続いて録音されたヴォーカル作品です。

録音は1955年2月28日と同年3月7日の2回に分けて行われ、2月28日に録音された4曲は、Chet Baker(tp、vo)、Russ Freeman(p)、Red Mitchell(b)、Bob Neel(ds)、Bud Shank(fl)、Corky Hale(harp)というメンバーにストリングスを加えた布陣、3月7日に録音された6曲は、Chet Baker(harp)、Russ Freeman(p)、Carson Smith(b)、Bob Neel(ds)という布陣になっています。

Chet Bakerの唯一無二の中性的ヴォーカルと親しみやすいトランペットをコンパクトに堪能できます。特に、本作ではストリングス入りの演奏が4曲あり、アルバム全体としてのメリハリがある点がいいですね。

彼の中性的ヘタウマ・ヴォーカルって不思議な魅力がありますよね。
当時、女の子もキャー、キャー言っていたというのも納得です(笑)

順番から言えば、まずは『Chet Baker Sings』をゲットすべきだと思いますが、ぜひセットで本作を揃えておくことをオススメします。

クールで小粋なウェストコースト・ジャズを堪能あれ!

全曲紹介しときやす。

「Let's Get Lost」
いきなり本作のハイライト。Frank Loesser作詞、Jimmy McHugh作曲のスタンダード。Frank Sinatra等も歌っていますね。Chet Bakerの死後に公開された自伝的ドキュメンタリー映画のタイトルが『Let's Get Lost』であり、Chetのキャリアを代表するレパートリーと言えるでしょうね。

Russ Freemanの小粋なピアノをバックに、Chetのトランペット&ヴォーカルを堪能できます。さすが伊達男!って感じでキマりすぎの出来栄えです。サバービア好きの方は要チェックの1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=Q0ZBaZoBCaA

「This Is Always」
オリジナルは1946年の映画『Little Girls In Blue』のために書かれたもの(Mack Gordon作詞、Harry Warren作曲)。この曲も様々なジャズ・ミュージシャンがカヴァーしていますが、Cal Tjaderのヴァージョンあたりは僕好みです。Chetヴァージョンは、ストリングスを従えたエレガントなアレンジで、甘くロマンティックなヴォーカル&トランペットを際立たせています。

「Long Ago and Far Away」
Ira Gershwin作詞、Jerome Kern作曲のスタンダード。オリジナルはミュージカル映画『Cover Girl』(1944年)のために書かれたものです。この曲ではヴォーカルもさることながら、Chetのトランペットを堪能しましょう!

「Someone to Watch Over Me」
「Let's Get Lost」と並ぶお気に入り。Ira Gershwin作詞、George Gershwin作曲のスタンダード(邦題「やさしき伴侶」)。オリジナルはミュージカル『Oh, Kay!』(1926年)のために書かれたもの。曲自体が大好きなのですが、Chetヴァージョンは彼の中性的ヴォーカルが曲、アレンジと実にマッチしていると思います。サイコー!
http://www.youtube.com/watch?v=CCTIpclVQe4

Chet以外にも数多くのアーティストが取り上げている名曲ですね。オールド・ファンならば、Ella Fitzgerald、Frank Sinatra、Perry Comoあたりが王道でしょうか。ポップス・ファンであればLinda Ronstadtヴァージョン、若いリスナーであればAmy Winehouseヴァージョン(Ella Fitzgeraldヴァージョンを意識したもの)で聴いているのでは?

Ella Fitzgerald「Someone To Watch Over Me」
 http://www.youtube.com/watch?v=PzjLzUn_9oc
Frank Sinatra「Someone To Watch Over Me」
 http://www.youtube.com/watch?v=mlgWm7Yly-I
Perry Como「Someone To Watch Over Me」
 http://www.youtube.com/watch?v=dqVUg-0hzac
Linda Ronstadt「Someone To Watch Over Me」
 http://www.youtube.com/watch?v=S0oRfg5RyVA
Amy Winehouse「Someone To Watch Over Me」
 http://www.youtube.com/watch?v=Wo5--q2GPNo

「Just Friends」
Sam M. Lewis作詞、John Klenner作曲のスタンダード。Russ Columboが1931年にヒットさせたらしいです。Charlie Parkerも演奏していますね。
ここでは軽快なヴォーカル&演奏を聴かせてくれます。ノリの良いバック陣にChetのトランペットも気持ち良さそうです!
http://www.youtube.com/watch?v=88CqlgFAJ-k

「I Wish I Knew」
オリジナルは映画『Diamond Horseshoe』(1945年)のために書かれたもの。「This Is Always」と同じくMack Gordon作詞、Harry Warren作曲です。当ブログでは、これまでJohn ColtraneBill Evansの演奏を紹介してきました。Chetヴァージョンは、スタンダード・ムード満点のロマンティックな仕上がりです。優しげなヴォーカルに野郎の僕もウットリしてしまいます(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=D0fq1szgiN4

「Daybreak」
この演奏も大好き!中世的なヴォーカル、親しみやすいトランペットとChetの魅力がコンパクトに凝縮されている気がします。
Ferde Grofe/Harold Adamson作品。

「You Don't Know What Love Is」
Don Raye/Gene De Paul作。ミュージカル映画『Keep 'Em Flying』の挿入歌です。数多くのジャズ・ミュージシャンが演奏しているスタンダードですね。当ブログでは、これまでJohn ColtraneSonny Rollinsの演奏を紹介したことがあります。Chetヴァージョンも素敵な哀愁バラードに仕上がっています。♪ブルースの意味が分かるようにならなければ、恋も分かるようにはならない...
http://www.youtube.com/watch?v=MDsaQhxvXS4

「Grey December」
Frank Campo作品。タイトルから想像できるように、哀愁ムードのバラードに仕上がっています。いつも明快なChetのトランペットも何処か寂しげ...

「I Remember You」
ラストは映画『The Freet's In!(邦題:艦隊入港)』(1942年)の挿入歌(Johnny Mercer作詞、Victor Schertzinger作曲)。に仕上がっています。Russ Freemanをはじめとするバックの演奏がキマっていますね。

日本のバンド勝手にしやがれ(グループ名です)が、本作のジャケをパロったアルバム『Let's Get Lost』(2007年)をリリースしています。

勝手にしやがれ『Let's Get Lost』(2007年)
LET’S GET LOST(初回生産限定盤)(DVD付)

ジャズと言えば、以前にエントリーしたThe Quiet Nights Orchestra『Chapter One』の音源をYouTubeで見つけたので、記事に加えておきました。今年の新作クラブ・ジャズの中でも大プッシュしたい1枚なので、ぜひ音源を聴いてみてください。
posted by ez at 00:22| Comment(2) | TrackBack(0) | 1950年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このアルバム大好きです。
しかも、「Chet Baker Sings」よりもスキ♡
ジャケの天使も良いですよね。
チェットはアルバムによって出来のバラツキが激しいので外れを掴まされた事も多々あるんですけど、このアルバムを買って来て家で聴いた時は本当嬉しかったなぁ〜。

また来ます。
Posted by クレイディー・スズキ at 2009年07月31日 01:01
☆クレイディー・スズキさん

ありがとうございます。

50年以上の前の作品なのに、そういった古さを感じないのがいいですね。
クールで明快な仕上がりが大好きです。
確かにジャケのエンジェルはグッときますね!

Gerry Mulligan、Chet Bakerといったウエストコースト・ジャズ作品は、限られた作品しか聴いていないので、もう少しいろいろ聴いてみたいですね。
Posted by ez at 2009年07月31日 12:22
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