発表年:1999年
ez的ジャンル:オルタナ・カントリー系ダーク・ポップ
気分は... :オルタナ・カントリーのアルバムと思ったら大間違い!
シカゴ出身のオルタナ・ロック・グループWilcoの2回目の登場です。
2ndアルバム『Being There』(1996年)に続いて紹介するのは、3rdアルバム『Summerteeth』(1999年)です。
元々オルタナ・カントリーの雄として注目されていたWilcoですが、本作ではオルタナ・カントリー色は薄まり、ギター・ポップ/音響ポップ的なポップ・ワールドが展開されています。もはやオルタナ・カントリーのアルバムとは呼べない作品ですね。
Jim O'Rourkeをエンジニア&ミキサーに迎えてオルタナ・ロック・グループへと脱皮し、商業的にも成功を収めた次作『Yankee Hotel Foxtrot』(2002年)の陰に隠れて、イマイチ地味な存在のアルバムですが、サウンド的にはグループ史上最もポップでカラフルな仕上がりの作品だと思います。
本作におけるメンバーは、Jeff Tweedy、Jay Bennett、John Stirratt、Ken Coomerの4名。どうしてもJeff Tweedyのグループという印象が強いですが、本作におけるカラフルな音作りにおいてはマルチ・プレイヤーJay Bennettの貢献が大きいと思います。
多くの人が抱くWilcoのイメージを一度リセットして聴くと、かなり楽しめるポップ/ロック・アルバムだと思います。
全曲紹介しときやす。
「Can't Stand It」
本作を象徴するダークなポップ・チューン。パワーポップ好きの人も気に入るオープニング・チューンだと思います。メロディアスだけど決して明るくなり過ぎないのがWilcoらしいのでは?
「She's a Jar」
曲調は味わい深いオルタナ・カントリーですが、音の質感はオルタナ・カントリーっぽくないですね。多分、キーボードの使い方にそんな印象を受けるのかも?
「A Shot in the Arm」
本作ならではのポップ・センス全開の1曲。シンセ・サウンドが響き渡る本曲は、オルタナ・カントリーと言うよりも音響ポップですね。次作でのJim O'Rourke参加を予感させる仕上がりです。
「We're Just Friends」
味わい深いバラード。90年代オルタナ・ロックならではのダークな感覚がグッド!
「I'm Always in Love」
ドライヴ感の格好良さにグッとくるロック・チューン。70年代風のチープなスペーシー感で盛り上げるところにグッときます(笑)
「Nothing'severgonnastandinmyway (Again)」
ハンド・クラップ入りの青春ネオアコっぽいギターポップに仕上がっています。それでも少しヒネリが効いているのがWilcoらしい気がします。
「Pieholden Suite」
バラード調の前半、爽やかなに疾走するロック調の中盤、トランペットも入ったポップ・ワールド全開な終盤と1曲で3倍楽しめます。
「How to Fight Loneliness」
正にロンリーな仕上がり。アルバム中一番オルタナ・カントリー・フレイヴァーの曲かも?
「Via Chicago」
♪I dreamed about killing you again last night♪という物騒な歌詞で始まるバラード。個人的にはオルタナ・カントリーと音響ポップが融合したようなサウンド・プロダクションがかなり興味深いです。
「ELT」
キャッチーなギター・ポップ。Wilcoファンというよりもギター・ポップ好きの人がグッとくる仕上がりかもしれませんね。
「My Darling」
僕の一番のお気に入り曲。オールド・タイミーなノスタルジック感と90年代オルタナ・ロックならではの空虚な空気感が上手く融合した1曲だと思います。『OK Computer』の頃のRadioheadに通じる魅力を持った曲だと思います。
「When You Wake up Feeling Old」
この曲はモロにBeach Boys『Pet Sound』的風です。High Llamasにも負けないポップ・ワールドが全開です。
「Summer Teeth」
タイトル曲は、川のせせらぎや鳥のさえずりも聞こえてくるメロディアスな青春ギター・ポップに仕上がっています。
「In a Future Age」
ラストは淡々としたバラードでダークに締め括ります。
さらに僕の持っているCDには「Candyfloss」、「In a Future Age(Alternate Version)」がボーナス・トラックとして収録されています。