2009年09月24日

Maria Muldaur『Maria Muldaur』

「Midnight at the Oasis」収録の1stソロ☆Maria Muldaur『Maria Muldaur』
Maria Muldaur
発表年:1973年
ez的ジャンル:オールド・タイミー系女性シンガー
気分は... :少しのんびりと...

今日までコンスタントに作品をリリースし続ける女性シンガーMaria Muldaurのソロ1stアルバム『Maria Muldaur』です。

Maria Muldaurは1943年N.Y.生まれの女性シンガー。

1960年代前半、Even Dozen Jug BandのメンバーとしてJohn Sebastian、David Grisman、Stefan Grossmanらと活動した後、 Jim Kweskin & His Jug Bandへ加入します。ここでGeoff Muldaurと知り合い二人は結婚、Geoff & Maria Muldaurとして活動します(二人は1972年に離婚)。

1973年よりソロ活動を開始し、今日までコンスタントに作品をリリースしています。

Maria Muldaurと言えば、やはり本作収録のヒット曲「Midnight at the Oasis(邦題:真夜中のオアシス)」 のイメージが強いですよね。Maria Muldaurのようなフォーク/カントリー系作品を全く聴かない若いリスナーの方でも、フリーソウルなどを通じて「Midnight at the Oasis」だけは知っているのでは?

逆に「Midnight at the Oasis」の都会的で洗練されたサウンドをイメージすると、本来のMaria Muldaurの音楽性とギャップがありすぎて愕然としてしまうかもしれませんね。

今日紹介する『Maria Muldaur』(1973年)や、本作と並ぶ僕のお気に入り作『Waitress In A Donut Shop』(1974年)の印象を一言で表現すればフォーク、カントリー、ジャズ、R&Bといった古き良きアメリカン・ミュージックをする"オールド・タイミー"なアルバムって感じでしょうか。

プロデュースはLenny Waronker & Joe Boyd。レコーディングには、Amos Garrett(g)、David Nichtern(g)、Ry Cooder(g)、Clarence White(g)、Andrew Gold(g)、David Lyndley(g)、Bill Keith(g)、David Grissman(md)、Mark Jordan(p)、Spooner Oldham(p)、Dr. John(p、g)、Nick DeCaro(string arr)、Dave Holland(b)、Freebo(b)、Ray Brown(b)、Klaus Voorman(b)、Jim Gordon(ds)、Jim Keltner(ds)等多数のミュージシャンが参加しています。

「Midnight at the Oasis」のイメージをリセットして、オールド・タイミーなグッド・ミュージックを楽しみましょう。

全曲紹介しときやす。

「Any Old Time」
オープニングは"The Singing Brakeman"と呼ばれた伝説のカントリー歌手Jimmie Rodgers(1897-1933年)の作品。実にオールド・タイミーな本作を象徴する演奏です。ニューオリンズ風のホーン隊を含むジャズ・テイストのバックとMariaの少しレイジーなヴォーカルが実にマッチしています。アルバム『Jazz』を予感させるフィンガー・ピッキングを聴かせるRy Cooder、ハワイアン・ギターをプレイするDavid Lyndleyというギタリストの共演にもグッときます。

「Midnight at the Oasis」
邦題「真夜中のオアシス」。Maria Muldaurのキャリアを代表する大ヒット曲(全米シングル・チャート第6位)。David Nichtern作です。キュートなMariaのヴォーカルとDavid Nichtern(g)、Amos Garrett(g)、Mark Jordan(p)、Freebo(b)、Jim Gordon(ds)といったバック陣の演奏、Nick DeCaroによるストリングス・アレンジは、まさにオアシスのような心地良さです。特にAmos Garrettのギターは特筆ものですね。ただし、前述のように本曲は彼女のキャリアの中でも異質な1曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=4K-hF-Tlp0Y

アシッド・ジャズ好きの方はBrand New Heaviesによるカヴァー(アルバム『Brother Sister』収録)もチェックしてみては?
Brand New Heavies『Midnight at the Oasis』
 http://www.youtube.com/watch?v=zmzG8XK1qkQ

SWV「When This Feeling」(アルバム『New Beginning』収録)でサンプリングされています。
SWV「When This Feeling」
 http://eastzono.seesaa.net/article/8479413.html?1253691954

「My Tennessee Mountain Home」
「9 to 5」の大ヒットで知られるカントリー界の女王Dolly Partonのヒット曲カヴァー。Dolly自身のオリジナルは前年にシングル・リリースしています。典型的なブルーグラス風カントリー・フォークであり僕の苦手な曲調ですが、それほどアレルギー反応が出てきません。なぜだろう(笑)。Even Dozen Jug Band時代の仲間David Grissmanがマンドリンで参加しています。

曲紹介からは逸れますが、最近TVで本曲の作者Dolly PartonへのCBSによる取材番組を観ました。イメージそのままのオープンな人柄は、好き嫌いが分かれるでしょうが、なかなかおもろいオバちゃんという印象を受けました。

「I Never Did Sing You a Love Song」
邦題「ラヴ・ソングは歌わない」。「Midnight at the Oasis」と同じくDavid Nichtern作です。こちらは「Midnight at the Oasis」のような都会的なサウンドではなく、田舎モードの味わい深いカントリー・バラードに仕上がっています。Jim Kweskin & The Jug Band時代のMariaの同僚Bill Keithが素晴らしいスティール・ギターを聴かせてくれます。

「The Work Song」
カナダ人シンガーソングライターKate McGarrigle作品。妹Annaとのフォーク・デュオKate & Anna McGarrigleとして知られている人ですね。ニューオリンズ風のアレンジが実に小粋なオールド・タイミー気分を満喫できる1曲。Mark Jordanのピアノがいい味出しています。

「Don't You Make Me High (Don't You Feel My Leg) 」
女性R&BシンガーBlue Lu Barkerが1938年に作った作品のカヴァー。Mariaのお気に入り曲のようですね。確かに、Mariaのヴォーカルがよく似合う楽曲だと思います。「The Work Song」同様、ニューオリンズ風の仕上がりにグッときます。この曲ではDr. Johnがピアノ、ギター、アレンジと大活躍です。

「Walkin' One and Only」
日本にも熱心なファンが多い男性シンガー・ソングライターDan Hicksの作品。スウィンギーな演奏が素晴らしいです。ジャズ・ファンには大物ベース奏者Ray Brownの参加が嬉しいですね。Jim Kweskin & The Jug Band時代の同僚Richard Greeneのバイオリンも盛り上げてくれます。この曲を聴いていると、荒井由実「チャイニーズスープ」が聴きたくなるのは僕だけでしょうか?

「Long Hard Climb」
男性シンガー・ソングライターRon Daviesの作品。本曲と言えば、アルバムのタイトル曲にもなったHelen Reddyのヴァージョンの方が有名かもしれませんね。Nick DeCaroのストリングス・アレンジが冴え渡るロマンティックなバラードに

Helen Reddy「Long Hard Climb」
 http://www.youtube.com/watch?v=zc6FRU9MB5w

「Three Dollar Bill」
Mac Rebennack(Dr. John)作。アルバムの中で一番R&B色が強い仕上がりです。Dr. Johnらのバック陣によるニューオリンズR&Bサウンドに合わせて、Mariaのヴォーカルも幾分ソウルフルです。女性R&BシンガーBettye LaVetteがソウルフルなバック・コーラスが盛り上げてくれます。「Midnight at the Oasis」を除けば、一番好きな曲かも?

「Vaudeville Man」
「Mad Mad Me」
ラストはMariaと親交の深いシンガー・ソングライターWendy Waldmanの作品2曲。「Vaudeville Man」はクラリネットも入りヴォードヴィル風のテイストも聴かれます。「Mad Mad Me」は少しミステリアスなバラード。他の曲にはないシリアスな雰囲気が漂います。

本作を気に入った方は『Waitress In A Donut Shop』(1974年)もどうぞ!

『Waitress In A Donut Shop』(1974年)
ドーナッツ・ショップのウェイトレス
posted by ez at 00:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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