発表年:1966年
ez的ジャンル:吟遊詩人系フレンチSSW
気分は... :♪生きる♪生きる♪生きる♪
今日はPierre Barouh『Vivre』(1966年)です。
Pierre Barouhは1934年、フランス、パリ生まれのミュージシャン。
カンヌ映画祭でグランプリを受賞した『Un Homme Et Une Femme(邦題:男と女)』(1966年)への出演・歌で脚光を浴びるまで、Barouhはバレーボール選手、空軍入隊、スポーツ記者、映画監督のアシスタント、俳優と様々な経験を積んできました。
初めて出演した映画である『Arretez Les Tambours』(1961年)の中で、自作曲「Les Filles Du Dimanche」を歌いミュージシャンの道に目覚めたBarouhは、やがてFrancis Laiと楽曲制作を行うようになります。
1962年にシングル数枚をリリースし、レコード・デビューを果たします。さらにはパリでBarden Powel、Vinicius de Moraesらと出会い、レコーディングを行っています。「フレンチ・ボサノヴァ」ブームの火付け役という印象も強いBarouhですが、50年代終わりにブラジル音楽に傾倒し、果てはブラジルまで渡った経験があるようです。
その後、俳優、ミュージシャンとして活動する中でClaude Lelouch監督と出会い、前述の映画『Un Homme Et Une Femme(邦題:男と女)』(1966年)へ出演し、スターの座を射止めます。
しかし、スターの座には目もくれず、1966年にはSaravah Recordを設立し、埋もれた才能の発掘に財産を投じます。Brigitte FontaineもSaravahで発掘された才能の1人ですね。
ちなみにBarouhの奥さんは日本人女性(潮田敦子バルーさん)です。
『Vivre』は、今日では彼が敬愛するボサノヴァとシャンソンの出会いといった「フレンチ・ボサノヴァ」の文脈で語られることが多く、そういった楽曲満載をイメージする方もいるかもしれませんが、全12曲中ボッサ・チューンは「Roses (Das Rosas)」、「Ce Piano」の2曲のみです。
むしろ、信念のミュージシャン、吟遊詩人としてのBarouhを堪能できるのが本作の魅力だと思います。本作を聴くと、なぜ彼がスターの座に目もくれずSaravahを設立したのかわかる気がします。
全12曲中6曲がFrancis Laiとの共作であり、Francis Lai好きの人にもオススメです。
秋冬にピッタリの1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Vivre!」
邦題「生きる」。Francis Laiとの共作。この1曲のみで本作を欲しくなる方も多いのでは?ジャズ・ワルツ調の小粋なサウンドに合わせてBarouhの信念が歌われます。パーカッシヴなリズムはモロに僕好み。自分の信念を貫きたい人にとって絶好のテーマ曲になるはず!♪生きる♪生きる♪生きる♪
http://www.youtube.com/watch?v=nTAHCKWzSk4
「Un Jour D'Hiver」
邦題「冬のある日」。Raymond Lesenechalとの共作。哀愁モードのサウンド&ヴォーカルがジワジワ胸に染み渡ってきます。
「Ce Piano」
邦題「このピアノ」。Francis Laiとの共作。エレガントな雰囲気漂うボッサ・チューン。ボッサなギターと美しいピアノの組み合わせがグッド!
「Le Coeur Vole」
邦題「盗まれた心」。Rimbaud(ランボー)の詞に感動したBarouhが曲をつけたもの。寂しげなBarouh歌声にグッときます。
「Roses (Das Rosas)」
邦題「薔薇」。Barden Powelと共作した名曲「Samba Saravah」(サントラ『Un Homme Et Une Femme』収録)と同じ日、Barden の家で録音した曲(Dorival Caymmiとの共作)。Barden Powelのギターをバックにしたボッサ・チューン。フレンチ・テイストを上手くボサノヴァに取り入れているのが魅力です。
「Les Filles Du Dimanche」
邦題「日曜日の娘達」。前述のように映画『Arretez Les Tambours』(1961年)の中で歌われた曲です。フレンチ気分を存分に堪能できるシャンソン調の仕上がり。アコーディオンの音色にグッときます。
「Huit Heures A Dormir」
邦題「8時間は眠れる」。Francis Laiとの共作。8時間と言わず10時間位は寝たいものですな(笑)
「Monsieur De Furstemberg」
邦題「フュールステンベルグさん」。Francis Laiとの共作。サンジェルマン・デ・プレ教会の神父であったFurstemberg枢機卿に由来するパリの小さな広場について歌ったもの。Barouhはこの広場をパリ中で最も美しく、魅力的でつつましい場所と感じているようです。サウンドからもそんな雰囲気が伝わってきます。
「Des Ronds Dans L'Eau」
邦題「水の中の環」。Raymond Lesenechalとの共作。後にFrancis Laiが音楽を担当した映画『Vivre Pour Vivre(邦題:パリのめぐり逢い)』でも使われています(Barouh自身も映画に出演しています)。サントラでは英語ヴァージョン(タイトル「Now You Want To Be Loved」)はNicole Croisille、仏語ヴァージョンはAnnie Girardotが歌っています。野望に向かって突き進みつつも、空しさを感じる心の揺らぎが見事に歌われています。名曲だと思います。
「Celle Qu'on N'oublie Pas」
邦題「忘れられない人」。Francis Laiとの共作。♪これは悲しい歌ではない♪甘いエレジー♪なのだそうです(笑)。映画の挿入歌にピッタリな雰囲気ですね。Francis Lai好きの人であればグッとくるはずですよ。
「De L'amour A L'amour」
邦題「愛から愛へ」。目まぐるしく変化する夢の断片が、様々な言葉で語られています。歌詞を見ながら、夢の映像の断片をイメージするのも楽しいかもしれません。
「Chanson Ouverte A Mon Directeur Artistique」
邦題「アートディレクターへの公開歌」。Francis Laiとの共作。ベトナム戦争中だった当時、悲惨な戦争さえも商売のネタにしてしまうアーティストや音楽ビジネスを痛烈に批判した歌。♪そんな恥ずかしい歌は歌えない♪と歌うBarouhの潔さと、Francis Laiらしい美しいメロディにグッときます。
『Ca Va, Ca Vient』(1971年)も愛聴盤です。次回Pierre Barouhを取り上げる時に紹介したいと思います。また、『Un Homme Et Une Femme』は来月記事にする予定なのでお楽しみに!
Pierre Barouh『Ca Va, Ca Vient』
Francis Lai『Un Homme Et Une Femme』