発表年:1972年
ez的ジャンル:エンターテイナー系女性ヴォーカル
気分は... :ラブ&ピース
今回は多彩な才能を持つ女優/女性シンガーBette Midlerの紹介です。
Bette Midlerは1945年ハワイ生まれ。ハワイ大学で演劇を学んだ後、N.Y.へ移りブロードウェイの舞台に出演する機会を得ました。その後ナイトクラブで歌うようになり、そこで後の大スターBarry Manilowと出会います。
そして、そのBarry Manilowらのサポートにより、1972年に今回紹介するデビュー・アルバム『The Divine Miss M』をリリースし、いきなりグラミー賞の最優秀新人賞を獲得します。1979年にはJanis Joplinのモデルにした映画『The Rose』の主演を務め、アカデミー賞の最優秀女優賞にノミネートされました。それ以外にもエミー賞、トニー賞も受賞しており、まさにアメリカが誇る偉大なエンターテイナーの一人と呼べるでしょう。
僕の場合、『The Rose』、『Ruthless People(邦題:殺したい女)』(1986年)、『Beaches(邦題:フォーエバー・フレンズ)』(1988年)、『For the Boys』(1991年)といった映画のイメージが強いですね。
決して美人ではないけれども、実にチャーミングな人だと思います。
演技にしても、歌にしても、様々な感情・表情を自由に操れるところがスゴいですね。
そんな彼女のエンターテイナーとしての確かな実力を確認できるのが、今回紹介するデビュー・アルバム『The Divine Miss M』(1972年)です。
とてもデビュー・アルバムと思えない、Midlerの実力にただただ驚くばかりです。
殆どがスタンダード、有名ヒット曲のカヴァーですが、それをBette Midlerの歌として堂々と歌いきってしまうところがスゴすぎ!デビュー前にナイトクラブで自分のスタイルを確立し、それに確固たる自信を持っていたのでしょうね。
レコーディングには、Barry Manilow(p、rhythm track)をはじめ、David Spinozza(g)、Ron Carter(b)、Ralph MacDonald(per)、Cissy Houston(back vo)、Melissa Manchester(back vo)、Thom Bell(horn & strings arr)、Arif Mardin(arr)等が参加しています。
プロデュースはJoel Dornが5曲、Barry Manilow/Geoffrey Haslam/Ahmet Ertegunが6曲を手掛けています。Barry Manilowのいい仕事ぶりが目立つアルバムでもあります。
全体として、盛り上げる曲とじっくり聴かせる曲のメリハリがあるのがいいですね。
曲調やポップス、ソウル、ジャズなど音楽スタイルに合わせて、様々なスタイルのヴォーカルを聴かせてくれるのも楽しいです。
才能豊かなエンターテイナーでクリスマスを盛り上げるのも楽しいのでは?
全曲紹介しときやす。
「Do You Want to Dance?」
邦題「踊ろよベイビー」。アルバムからの1stシングルとして、全米チャート17位のヒットとなりました。オリジナルは作者Bobby Freemanのヴァージョン(1958年)。それ以降数多くのアーティストがカヴァーしているスタンダードです。有名なのはBeach Boysヴァージョンですかね。僕の場合、John Lennonヴァージョン(『Rock 'n' Roll』収録)を一番聴いた気がします。
軽快なアップテンポの印象が強い曲ですが、本ヴァージョンはテンポを落としたメロウな仕上がりが秀逸です。Midlerのデビュー作とは思えない余裕の歌いっぷりに魅了されます。Ralph MacDonaldのパーカッション、Cissy Houstonらのバック・ヴォーカル、Thom Bellのホーン&ストリングス・アレンジもグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=nV5KGvQGaMY
「Chapel of Love」
The Dixie Cups、1964年の全米No.1ヒットのカヴァー。Ronettes、Beach Boys等もカヴァーしています。YouTubeにデビュー前ライブ映像が残されており、Midler、Barry Manilowにとって以前からライブ・レパートリーであったことが確認できます。本ヴァージョンも歌い慣れた楽曲のせいか、ハマりすぎと思えるノリの良さで聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=WqewZ_9QWhY
「Superstar」
1971年のCarpentersの大ヒットでお馴染み、Bonnie Bramlett/Leon Russell作の名曲。どうしてもCarpentersのイメージが強い曲ですが、Midlerヴァージョンも情感たっぷりでグッときますよ。
http://www.youtube.com/watch?v=8XkTfOMDINQ
「Daytime Hustler」
個人的には一番のお気に入り曲。ソウル・テイストのグルーヴィーな仕上がりがカッチョ良すぎです。Midlerの歌が素晴らしいのは勿論ですが、リズム・セクションおよびMelissa ManchesterをはじめとするMiss M's choirのコーラスがサイコー。特に中盤のブレイクはサンプリング・ネタになるほど人気ぶりでこの部分だけでも相当グッときます。Jeff Kent作。
「Daytime Hustler」※Drum Breakのみ
http://www.youtube.com/watch?v=RW0DpUHko2E
Young MC「Bust A Move」
http://www.youtube.com/watch?v=xy4FXhkm6Nw
「Am I Blue」
Harry Akst/Grant Clarke作のスタンダード。Barbra Streisand等もカヴァーしています。「Daytime Hustler」から一転、雰囲気たっぷりにジャジーなヴォーカルを披露してくれます。Midlerの引き出しの多さを実感できます。
「Friends」
Mark Klingman/Buzzy Linhart作品。キャッチーなメロディとパーカッシヴなライト・グルーヴ感が僕好み。
「Hello in There」
カントリー/フォーク・シンガーJohn Prine作品。朝鮮戦争で戦死した若者を歌ったシリアスな仕上がり。『For the Boys』と一緒に聴きたくなります。
「Leader of the Pack」
The Shangri-Las、1964年の全米No.1ヒットのカヴァー。キュート&キャッチーなオリジナルは今聴いても実に魅力的ですよね。それに負けじとMidlerもMiss M's choirと息の合ったヴォーカル&コーラスを聴かせてくれます。変幻自在に緩急を操るところにグッときます。
「Delta Dawn」
Tanya Tucker、Helen Reddyのヴァージョンで知られる Larry Collins/Alex Harvey作品。Tanya Tucker、Helen Reddyらと比べると、よりじっくり聴かせる仕上がりが印象的です。シンガーとしての器の大きさをまざまざと感じます。
Tanya Tucker「Delta Dawn」
http://www.youtube.com/watch?v=zxRYMiitmho
Helen Reddy「Delta Dawn」
http://www.youtube.com/watch?v=JQpvbTHkJXg
「Boogie Woogie Bugle Boy」
Andrews Sistersが映画『Buck Privates』(1941年)の中で歌っていたブギウギ・スタンダード。今時の音楽ファンであれば、Andrews SistersヴァージョンがPVも含めてChristina Aguilera「Candyman」にインスパイアを与えたことはお馴染みですね。
Midlerヴァージョンはアルバムからのシングルとして全米第8位のヒットとなりました。小西康陽氏のお気に入り曲ということで本曲をチェックされている方も多いのでは?勿論のコチラもノリノリのブギウギ状態です。
http://www.youtube.com/watch?v=CUxUbYUHExs
「Friends(Reprise)」
ラストは「Friends」のリプライズ。
記事を書いていたら、『Beaches(邦題:フォーエバー・フレンズ)』、『For the Boys』が観たくなりました。『For the Boys』で「In My Life」(Beatlesカヴァー)を歌うシーンは、いつ観ても感動的ですね。最後のピース・サインのところでいつも涙腺が決壊してしまいます。
Bette Midler「In My Life」(From 『For the Boys』)
http://www.youtube.com/watch?v=bhyST3UGCag