2010年02月05日

Quincy Jones『Smackwater Jack』

日本人にはお馴染み「Ironside(鬼警部アイアンサイド)」収録☆Quincy Jones『Smackwater Jack』
Smackwater Jack
発表年:1971年
ez的ジャンル:ブラック・ミュージック系ジャズ/フュージョン
気分は... :ウィークエンダーを観て怒られましたぁ(笑)

Quincy Jonesの2回目の登場です。

『Body Heat』(1974年)に続いて紹介するのは、1971年リリースの『Smackwater Jack』です。

本作『Smackwater Jack』『Walking In Space』(1969年)、『Gula Matari』(1970年)に続くA&M第三作であり、ジャズの枠から飛び越えてブラック・ミュージック的なアプローチを強めていく過程の作品です。

本作と言えば、日本人には馴染み深いアメリカの人気TVドラマ『鬼警部アイアンサイド』のテーマ曲「Ironside」でしょうね。

『鬼警部アイアンサイド』は日本語版も放送されていましたし、僕と同世代以上の方は『テレビ三面記事 ウィークエンダー』でもよく聴いたと思います。また、若い方にはQuentin Tarantino監督の映画『Kill Bill(キル・ビル)』でお馴染みかもしれませんね。昔、タモリが出演していた日本テレコムのCMでも使われていました。

僕の場合、『鬼警部アイアンサイド』は子供の頃に番組(日本語版)を放送していたことは憶えていますが、番組を観た記憶がありません。一方、低俗番組として当時評判だった『ウィークエンダー』は親に怒られながらもよく観ていましたね。なので、僕にとっての「Ironside」は長い間、"ウィークエンダーの曲"という位置づけでしたね。その後洋楽を聴くようになり、本曲がQuincy Jones作品だと知った時には少し意外でしたね。

プロデューサーはQuincy JonesPhil RamoneRay Brownの3名。

参加ミュージシャンはArthur Adams(g)、Eric Gale(g)、Freddie Robinson(g)、Jim Hall(g)、Joe Beck(g)Carol Kaye(b)、Chuck Rainey(b)、Bob Cranshaw(b)、Ray Brown(b)、Grady Tate(ds)、Paul Humphries(ds)、Bobby Scott(key)、Bob James(key)、Jaki Byard(key)、Joe Sample(key)、Monty Alexander(key)、Dick Hyman(key)、Paul Beaver(syn)、Edd Kalehoff(syn)、Jimmy Smith(org)、Milt Jackson(vib)、Toots Thielemans(g、harmonica、whistle)、George Devens(per)、Larry Bunker(per)、Freddie Hubbard(flh)、Marvin Stamm(flh)、Hubert Laws(fl、ts)、Jerome Richardson(ss、ts)、Harry Lookofsky(vln)、Valerie Simpson(vo)、Bill Cosby(vo)等の豪華メンバーです。

「Ironside」以外にもTV、映画の主題歌が2曲、Carole KingMarvin Gayeという(当時)旬のアーティストのカヴァー2曲、Vince Guaraldi、Ray Brownというジャズ・アーティスト作品が2曲、ブルース・ギターの変遷をまとめたユニークなオリジナル1曲といったように、Quincyの幅広い音楽ワールドを堪能できる作品です。

参加メンバーの顔ぶれで想像がつくように、『Body Heat』あたりと比べると、まだまだジャズ色が強いアルバムですが、サウンドを聴けばよりブラック・ミュージックへの接近を志向していたことが実感できると思います。

『Body Heat』(1974年)、『Mellow Madness』(1975年)あたりと並んで、Quincyワールドの真髄を堪能できるアルバムだと思います。

全曲紹介しときやす。

「Smackwater Jack」
タイトル曲はCarole Kingのモンスター・ヒット・アルバム『Tapestry』(1971年)の収録曲のカヴァーです(Gerry Goffin/Carole King作品)。グルーヴ感がサイコーのファンキー・カヴァーに仕上がっています。Valerie Simpsonをはじめとするソウルフルなバック・コーラスやToots Thielemansのハーモニカ等をバックに、Quincy本人がヴォーカルを披露してくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=fLmp-tCUQIE

「Cast Your Fate to the Wind」
ジャズ・ピアニストVince Guaraldi作品。Vince Guaraldi Trioのオリジナルも絶品ですが、メロウ・フュージョンに仕上がっている本ヴァージョンもなかなかの出来栄えです。Eric Gale(g)、Bobby Scott(p)、Marvin Stamm(flh)のソロがフィーチャーされています。

Vince Guaraldi Trio「Cast Your Fate to the Wind」
 http://www.youtube.com/watch?v=ADPgTmca6Zs

「Ironside」
前述の『鬼警部アイアンサイド』のテーマ曲。これだけインパクトのあるドラマティックな楽曲に仕上げてしまうのがQuincyの才能なのでしょうね。ホーン・アンサンブルばかりに聴き入ってしまいますが、Jerome Richardson(ss)、Freddie Hubbard(flh)、Hubert Laws(fl)と続くソロ・パートも堪能しましょうね。
http://www.youtube.com/watch?v=rwDL4WPoOrw

本曲はAbove The Law「Untouchable」、「Murder Rap」、Chaser「Sides of Iron」、Da Lench Mob「You & Your Heroes」、Dr. Dre feat. Group Therapy「East Coast/West Coast Killas」、Kool Keith「Lost In Space」、Poor Righteous Teachers「Rappin' Black」、Positive K「Step Up Front」、Rob Swift「Dope On Plastic (Large Professor Remix)」等のサンプリング・ネタとしても定番ですね。Large Professor好きの僕としては、Rob Swift「Dope On Plastic (Large Professor Remix)」にグッときます。

Rob Swift「Dope On Plastic (Large Professor Remix)」
 http://www.youtube.com/watch?v=kI34rXo7qrY

「What's Going On」
Marvin Gayeの名曲カヴァー。ヴォーカルはQuincyとValerie Simpson。Hubert Laws(fl)、Freddie Hubbard(flh)、Milt Jackson(vib)、Toots Thielemans(harmonica、whistle)、Jim Hall(g)、Harry Lookofsky(vln)のプレイがフィーチャーされています。お馴染みの名曲をQuincyがどのように調理し、それに名立たるプレイヤー達がどのように応えているのかを楽しみましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=g4gOwXSh8to

「Theme from "The Anderson Tapes" (From The Anderson Tapes)」
Sidney Lumet監督、Sean Connery主演の映画『The Anderson Tapes(邦題:盗聴作戦)』(1971年)のテーマ曲。ムーグの音色が印象的なクライム・サスペンス映画の主題歌らしいスリリングな仕上がりです。Milt Jacksonのヴァイヴもフィーチャーされています。
http://www.youtube.com/watch?v=x3ICTkdfMlw

「Brown Ballad」
Ray Brown作品。Bobby Scott(p)、Toots Thielemans(harmonica)、Jim Hall(g)の美しい演奏に魅了されるバラードです。

「Hikky-Burr」
偉大な黒人コメディアンBill Cosbyがホストを務めた「The Bill Cosby Show」のテーマ曲であり、Bill Cosby本人がヴォーカルで登場します。個人的にはアルバムで一番格好良いファンキー・グルーヴだと思います。Above The Law「Livin' Like Hustlers」、DJ Smurf「Ooh Lawd」等でサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=r_Rppe_MyM8&feature=fvw

「Guitar Blues Odyssey: From Roots to Fruits」
ラストはタイトルの通り、ブルース・ギターの変遷を楽しめる"ギターの玉手箱"状態です。Eric Gale、Jim Hall、Toots Thielemans、Joe Beckという4人のプレイを楽しむことができます。

「Ironside」を聴くと、『Kill Bill』が観たくなりますね。
『Kill Bill』と言えば、先ほどまで『Kill Bill』に出演していた栗山千明も出演していた、古田新太主演の映画『小森生活向上クラブ』(2008年)を観ていました。古田新太、栗山千明共に大好きな僕なので、このブラック・コメディー映画もなかなか楽しめました。栗山千明ほど唇がセクシーな日本人女優はいないと思うのですが...
posted by ez at 03:28| Comment(6) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このころのクインシーは神への脱皮前って感じでしょうか。自分的には、このアルバムじゃないけど“サマー・イン・ザ・シティ”の、原曲をまったくとどめないアレンジなんてのも好きです。
Posted by ドコドン at 2010年02月05日 11:08
ezさん、こんばんは。

私もこのアルバム好きなんですが、最後の「Guitar Blues Odyssey」は、ちょっと散漫な出来で、消化不良という感じがします。Quincyの意図は、わからないではないんですが・・・。
他のそれぞれの曲の完成度が高いだけに、最後でちょっと肩すかしを食ったような気がしました。

ごく最近、このCDを1000円でゲットしたので、30年ぶりにヘヴィー・ローテーションで聴いていたところでした。
Posted by Apollo at 2010年02月05日 23:02
☆ドコドンさん

ありがとうございます。

確かに脱皮前って感じかもしれませんね。
ジャケの表情そのままにギラギラした感じが好きです。

僕の場合、Quincyの「Summer in the City」は同曲をサンプリングしたMassive Attack「Exchange」経由で聴きました。
Posted by ez at 2010年02月06日 03:52
☆Apolloさん

ありがとうございます。

確かに「Guitar Blues Odyssey」は構成からすると余計な気もしますね(笑)
「Hikky-Burr」 でアルバムは終了し、その後のボートラ的な企画ものとして楽しむといいのでは?

Quincyのようなアーティストって、意外と後回しにしてしまいコレクションが増えないパターンかもしれませんね。
Posted by ez at 2010年02月06日 03:54
あの、サイレンが鳴る感じで始まる、危機感迫る雰囲気たっぷりの曲は、今、NBAのOrlando Magicのホームでの試合中に流れることがあるんですよ!
それが、誰かがファウルをした時にかかるんです。

しかもどうも、自分たちのチーム側がファウルしたときにかかるんですよ!
それって、なんか余計焦ってしまって、チームのためにはプラスにならないような気がしませんか?
相手チームのファウルの時なら、こう、煽る感じで、分かるんですが...

でも、もちろんそれはそれですごくおもしろいんですけどね!
次のOrlandoの試合はじっくり‘聴いて’ 、ほんとに相手チームのファウルの時にはかからないのかどうかをチェックしてみようと思います。
Posted by black pepper at 2010年02月07日 01:12
☆black pepperさん

ありがとうございます。

確かに、自分たちのファウルに対して鳴らすと選手を萎縮させてしまう感じがしますよね。マジック戦を観る機会があれば、チェックしてみます。

今期のマジックは好調ですね。
このまま順調にいけば、セルティックス、キャブスあたりととファイル進出を争うことになりそうですね。
Posted by ez at 2010年02月07日 02:15
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