発表年:1975年
ez的ジャンル:ミナス系MPB
気分は... :Who Dat?
注目のNFLスーパーボウルはセインツが見事初制覇を成し遂げました。
僕の予想ではコルツ圧勝だと思っていたのですが...
実際、前半途中まではマニング擁するコルツは完全に試合をコントロールしていたと思います。
試合開始直後は浮き足立っていたセインツですが、前半終了間際からペースをつかみかけ、後半最初のオンサイド・キック、そして逆転TDで完全にいつもの姿に戻りましたね。オンサイド・キックの断を下したセインツHCペイトンの手腕に脱帽です。
アメリカ社会全体から見れば、ハリケーン・カトリーナの被害から復興しつつあるニューオリンズの象徴セインツが勝利した方が、聖者の行進ここに完結!!という感じで望ましいエンディングだったのでしょうね。まぁ、マニングには再びスーパーボウル制覇の機会が訪れることでしょうから...
音楽ファンお楽しみ!The Whoのハーフタイム・ショーは、予想通り「Baba O'Riley」(『CSI:NY』主題歌)〜「Who Are You?」(『CSI』主題歌)〜「Won't Get Fooled Again」(『CSI:Miami』主題歌)というCSI主題歌メドレーになりましたね。特に『CSI:Miami』の舞台マイアミで「Won't Get Fooled Again」を演奏するというのはハマりすぎでした。NHK-BSの生放送では映像と音のズレでイライラしましたが、日テレの録画放送では映像と音が同期していましたね。
あとNHK-BSではQueen Latifahによる「America the Beautiful」の映像が流れなかったのが残念でしたね。
今回はブラジルを代表する世界的なミュージシャンの一人Milton Nascimentoの代表作『Minas』(1975年)です。今まで何故か紹介する機会を逸してきたMiltonでしたが、ようやく紹介することができます。
Milton Nascimentoは、1942年生まれのMPBミュージシャン。
ミナス(ミナス・ジェライス)を代表するアーティストですが、生まれたのはリオ・デジャネイロであり、幼い頃にミナスへ移ったようです。
1960年代前半から本格的な音楽活動を開始したMiltonですが、1966年にMiltonの作品「Cancao do Sal(塩の歌)」をElis Reginaが取り上げてヒットさせています。1967年にはリオで行われたソング・フェスティバルで自作の「Travessia」を歌い、上位入賞します。その勢いで、同年に1stアルバム『Travessia』(オリジナル・タイトル『Milton Nascimento』)をリリースしています。1972年にはLo Borgesと双頭名義でアルバム『Clube Da Esquina』をリリースし、ミナス派ミュージシャンの存在感を示しました。
1974年のスイス・モントルー・ジャズ・フェスティバルへ出演したMiltonは、そのままL.A.へ向かいWayne Shorterの『Native Dancer』(1975年)のレコーディングに参加します。これが大きな転機となり、Milton Nascimentoの名が世界中の音楽ファンに認知されるようになりました。その勢いで今日紹介する名作『Minas』を制作しています。
その後も独自の世界観で世界中のファンを魅了しています。
僕が最初にMilton Nascimentoと出会ったのは、多くの人と同じようにWayne Shorter『Native Dancer』でした(但し、後追いですが...)。ブラジル人ミュージシャンが参加したフュージョン・アルバム、しかもジャケはいかにもサマー・モード!ということで、僕の中で勝手にGeorge Duke『A Brazilian Love Affair』みたいなアルバムをイメージしてしまい、結構肩透かしを食った記憶があります。全然オシャレな雰囲気では無かったもので(笑)
そのせいでMilton Nascimentoに対して、長い間とっつきにくいイメージがあった気がします。しかし、その後ブラジル音楽を聴く機会が増えて、決して明るくはない"憂い"もブラジル音楽の魅力であることに気付いてからは、Miltonワールドに惹かれるようになりました。
そんなMiltonワールドを象徴する作品が本作『Minas』(1975年)だと思います。『Native Dancer』で注目されたMiltonが、自らのアイデンティティを強烈に示した傑作ですね。
憂いの表情を浮かべるMiltonが大写しとなったジャケからしてインパクトがありますよね。このジャケに象徴されるように、アルバム全体を支配するトーンは決して明るいものではありません。それでもミステリアスかつピュアなMiltonワールドに引き込まれてしまいます。
アルバムには、Beto Guedes、Toninho Horta、Wagner Tiso、Novelli、Nivaldo Ornelas、Nelson Angelo、Tavinho Moura、Fernando Brant、Marcio Borgesといったミナス系ミュージシャン/詩人も多数参加しています。
難解だけれども奥深い...聴けば聴くほど味わい深くなるアルバムだと思います。
全曲紹介しときやす。
「Minas」
アルバム中何度も登場する子供たちによる「Paula E Bebeto」(本編は後に登場)のコーラスを織り交ぜながら、Novelli作のタイトル曲でアルバムはスタートします。Miltonがミナスの大地でこだまするかのようなファルセットを聴かせてくれます。
「Fe Cega, Faca Amolada」
Ronaldo Bastos/Milton Nascimento作。「盲信は研ぎすまされた刃のごとく」という邦題がいかなもブラジル音楽の歌詞らしいですね。Nivaldo Ornelasによるソプラノ・サックスが印象的であり、思わず『Native Dancer』をイメージしてしまいますが、フュージョンというよりもジャズ・ロック調の仕上がりです。
「Beijo Partido」
Toninho Horta作のただただ美しい楽曲。Toninho Horta自身のヴァージョンは以前に紹介した『Diamond Land』に「Broken Kiss」のタイトルで収録されています。美しさの中に漂うミステリアスな雰囲気がミナスらしくていいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=emc9GhtVg0Y
「Saudade Dos Avioes Da Panair (Concersando No Bar) 」
Fernando Brant/Milton Nascimento作。邦題「パネールの翼」。Miltonの青春時代を綴ったものです。全体を包む陰鬱な空気が歌にリアリティを与えていますね。そんな中、何かを暗示するかのように子供たちによる美しい「Paula E Bebeto」のコーラス再び登場します。
http://www.youtube.com/watch?v=jdHTbkrj5eg
「Gran Circo」
Marcio Borges/Milton Nascimento作。当時の軍事政権をサーカスに喩えた痛烈な社会メッセージ・ソング。サウンドはダークな美しさが漂います。特に終盤の展開はドラマティックですね。最後の虚しく響くピアノが印象的です。
「Ponta De Areia」
邦題「砂の岬」。本作のハイライトであり、Miltonの代表曲の1つですね(Fernando Brant/Milton Nascimento作)。ミナス・ジェライスへ行ったこともないのに、聴いているとミナスの風景が思い浮かびそうですよね。いつ聴いても心穏やかになると同時に、懐かしい郷愁感に胸打たれる大名曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=DGpRCGGB37s
『Native Dancer』でも取り上げているので聴き比べるのも楽しいのでは?
Wayne Shorter & Milton Nascimento「Ponta De Areia」
http://www.youtube.com/watch?v=UhlAfIKulzs
ブラジル音楽をあまり聴かない方でも、Earth, Wind & Fire『All 'N All』収録の「Brazilian Rhyme」(オリジナルLPB面の方)の中で本曲のメロディをお聴きになった方は多いのでは?また、J-POP好きの人はTHE BOOMのカヴァーで聴いているかもしれませんね。
当ブログでは、誰よりも早くMiltonの才能を見抜いたElis Reginaや新進気鋭のジャズ・ベーシストEsperanza Spaldingのカヴァーを紹介済みです。何度も書いてきましたが、Esperanzaヴァージョンが僕の超オススメです。
Esperanza Spalding「Ponta De Areia」
http://www.youtube.com/watch?v=e9sN3ySkkz0
「Trastevere」
Ronaldo Bastos/Milton Nascimento作。Miltonのピアノ、Beto GuedesとToninho Hortaのギター、Novelliのベースらが絡む実にアーティスティックな雰囲気の漂う演奏です。MPB4のダークなコーラスも印象的です。
「Idolatrada」
Fernando Brant/Milton Nascimento作。邦題「崇拝されし者」凛とした雰囲気とBeto Guedesのギターが印象的ですね。後半は子供たちの例のコーラスに続き、「Paula E Bebeto」のインストへと展開します。
「Leila (Venha Ser Feliz) 」
Milton Nascimento作。邦題「幸福を」。次の「Paula E Bebeto」への助走といった雰囲気ですね。「Sinhere」(Edu Lobo/Gianfrancesco Guarnien作)も挿入されています。
「Paula E Bebeto」
Milton Nascimento/Caetano Veleso作。これまで何度となく登場してきた「Paula E Bebeto」の本編です。本編は小粋なアコースティック・チューンに仕上がっています。歌自体はラブソングなのですが、アルバム内で何度も登場させたのには何か深い意味があるのでしょうか?
YouTubeにライブ映像があったので紹介しておきます。
http://www.youtube.com/watch?v=urLqWH9IW_8
「Simples」
Nelson Angelo作。ドラマティックかつミステリアスにアルバムの幕は閉じます。
現在のCDにはボーナス・トラックとして、「Norwegian Wood」(Beatlesの名曲カヴァー)、「Caso Voce Queira Saber」(Marcio Borges/Beto Guedes作)の2曲が追加収録されています。ライナー・ノーツによると、どちらもBeto Guedesのアルバムに収録されていた曲らしいです。
「Caso Voce Queira Saber」
http://www.youtube.com/watch?v=8vUZAYluVAc
Milton独特のミナス・ワールドを気に入った方は他の作品もどうぞ!
『Courage』(1968年)
『Clube Da Esquina』(1972年)
ありがとうございます。
僕はそのシーンを観ていませんが、そのあたりのいい加減さが南米らしくて微笑ましいのでは?