発表年:1995年
ez的ジャンル:トリップ・ホップ
気分は... :クセになるダークネス!
今回は1995年のUK音楽シーンを代表する名作Tricky『Maxinquaye』です。
Tricky(本名:Adrian Nicholas Matthews Thaws)は1968年イギリス、ブリストル出身のミュージシャン/プロデューサー。
地元ブリストルの悪ガキ仲間から"Tricky Kid"と呼ばれていたAdrian Thawsですが、やがてTrickyを名乗り音楽活動を開始します。
Massive Attackの前身Wild Bunchのメンバーや後にPortisheadを結成するGeoff Barrowらと交流するようになり、Massive Attackのデビュー作『Blue Lines』(1991年)、『Protection』(1994年)へ参加しています。
また、1994年よりソロ・アーティストとしての活動を開始し、同年にデビュー・シングル「Aftermath」をリリースします。さらにシングル「Ponderosa」、「Overcome」を経て、1995年に衝撃のデビュー・アルバム『Maxinquaye』をリリースします。『Maxinquaye』はUKアルバム・チャート第3位の大ヒットを記録し、一気にMassive Attack、Portisheadと並ぶトリップ・ホップの代表アーティストとしてシーンに君臨するようになります。
その後Terry Hall、Alison Moyet、Neneh Cherry、Bjorkらとのコラボ・アルバム『Nearly God』(1996年)、『Pre-Millennium Tension』(1996年)、『Angels with Dirty Faces 』(1998年)、DJ Muggs(Cypress Hill)& Greaseとのコラボ・アルバム『Juxtapose』(1999年)といったアルバムを90年代にリリースし、2000年代に入っても3枚のアルバムをリリースしています。
僕がTrickyのダビー&へヴィーなトリップ・ホップ・サウンドに夢中になったのは、今日紹介する『Maxinquaye』から『Juxtapose』(1999年)までですね。僕と同じパターンの方は結構多いのでは?
90年代前半にブリストルから登場したトリップ・ホップは、倦怠感・虚無感の漂うトリップ&ダウナーなハイブリッド・クラブ・ミュージックとして一世を風靡しました。今思うと、多くの人が何故こんなにもダウナーな音楽を欲したのか不思議な感じもしますが、そういうダークな時代だったのかもしれませんね。
そんなトリップ・ホップのマスト・アイテムがMassive Attack『Protection』(1994年)、Portishead『Dummy』(1994年)、Tricky『Maxinquaye』(1995年)の3枚です。
特にTrickyのデビュー作『Maxinquaye』は衝撃的でした。
アルバム・リリース前からトリップ・ホップの切り札登場!といった感じで盛り上がっていましたよね。僕も全くサウンドも聴かないまま、話題の1枚ということでリリース直後に即ゲットした記憶があります。
プロデュースはTricky自身に加えて、Howie B.、Mark Saunders、Kevin Petrieが担当しています。また、Tricky作品ではお馴染みの女性シンガーMartine(Martina Topley-Bird)、後にWill GregoryとのユニットGoldfrappを結成するAlison Goldfrapp、Raggaの3名がゲスト・ヴォーカルとして参加しています。
久々に通しで聴き直しましたが、聴き応え十分ですね。
ダーク&へヴィながらも意外に聴き易い作品だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Overcome」
シングルにもなったオープニング。Trickyもソングライティングに参加したMassive Attack『Protection』収録の「Karmacoma」の歌詞をそのまま使ったものです。サウンドでは Shakespear's Sister「Moonchild」をサンプリングしています。ダークなトリップ感漂うトラックとMartineの乾いた哀愁ヴォーカルが実にマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=6V26zxH_JMk
「Ponderosa」
「Aftermath」に続く2ndシングル。呪術的なリズムが不気味なへヴィ・トラックとMartineのキュートな歌声のギャップが不穏な音空間をクリエイトしています。静かなる狂気を感じるTrickyらしい1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=Y_YET2JXjlk
「Black Steel」
Public Enemyのカヴァー(PEのオリジナルはアルバム『It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back』に「Black Steel in the Hour of Chaos」として収録)。パンキッシュな仕上がりのカヴァーは意表を突かれました。
http://www.youtube.com/watch?v=UG3sw9JoPuA
Public Enemy「Black Steel in the Hour of Chaos」
http://www.youtube.com/watch?v=VFjaO7OJaH8
「Hell Is Around the Corner」
この曲もシングルになりました。「Overcome」同様、Trickyがソングライティングに参加したMassive Attack『Protection』収録の「Eurochild」の歌詞をそのまま使ったものです。サウンド面ではPortishead『Dummy』収録のシングル「Glory Box」同様にIsaac Hayes「Ike's Rap II」をサンプリングしています。トリップ・ホップらしいダウナー感覚に溢れています。Portishead「Glory Box」と聴き比べるのも楽しいのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=sR7ZWO3EyHo
Portishead「Glory Box」
http://www.youtube.com/watch?v=yF-GvT8Clnk
「Pumpkin」
Alison Goldfrapp参加曲です。哀愁モードの中にも華があるAlison Goldfrappの歌声とうつむいたように呟くTrickyのトースティングのコントラストが印象的です。タイトルそのまんまですがSmashing Pumpkins「Suffer」をサンプリングしています。
http://www.youtube.com/watch?v=oFPW4M93uYM
「Aftermath」
記念すべきデビュー・シングル。ダビー&へヴィなトラックが生み出す独特の浮遊感がグッときます。元Maximum JoyのTony Wrafterがフルートで参加しています。(多分)Marvin Gaye「That's The Way Love Is」ネタがビミョーに使われていると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=-2DEOm7rTLY
「Abbaon Fat Track」
エスニックな香りも漂うトラックとMartineの哀愁ヴォーカルが実にマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=QiqMQaVvomk
「Brand New You're Retro」
Michael Jackson「Bad」ネタのトラックが大胆ですね。「Bad」ネタと聞いて馬鹿にしないで下さいね。意外にグッときますよ。
http://www.youtube.com/watch?v=rGpa2r_jN6s
「Suffocated Love」
The Chantals「Look In My Eyes」ネタのノスタルジックなトラックが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=d5LmSiNdNuY
「You Don't」
Raggaのヴォーカルをフィーチャーしたレゲエ調の仕上がり。アルバムで一番ダビーな仕上がりです。個人的にはこういうレゲエ/ダブのエッセンスが強い曲大好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=wx4J3To-3MQ
「Strugglin'」
淡々とした不気味さと狂気を感じます。
http://www.youtube.com/watch?v=CZzsNHwaKGU
「Feed Me」
ラストはダークな中のキラキラ感が印象的です。結構好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=dm_q_JQZbBc
『Maxinquaye』をクリアしたならば、他の作品にもトライしてみて下さい!
『Nearly God』(1996年)
『Pre-Millennium Tension』(1996年)
『Angels with Dirty Faces 』(1998年)
『Juxtapose』(1999年)
他のトリップ・ホップの名作も一緒にチェックしてみて下さい!
Massive Attack『Blue Lines』(1991年)
Massive Attack『Protection』(1994年)
Portishead『Dummy』(1994年)