録音年:1966、67、68年
ez的ジャンル:ウルグアイ産ボッサ
気分は... :アンニュイ&クール!
今回はウルグアイ産ボッサの名盤Diane Denoir/Eduardo Mateo『Ineditas』です。
Eduardo Mateo(1940-1990年)はウルグアイを代表する偉大なギタリスト、作曲家でした。本国ウルグアイのみならず、ブラジル、アルゼンチンでも高い評価を受けていたようです。
そのEduardo Mateoが同じくウルグアイ人の女性シンガーDiane Denoirと1966〜68年にレコーディングした作品集が『Ineditas』です。
1998年にリリースされると、その方面で評判となり、瞬く間にウルグアイ産ボッサの名盤と称されるようになった作品です。
ウルグアイと聞いて、通商交渉(ウルグアイ・ラウンド)やサッカー(エンツォ・フランチェスコリ好きでした!)くらいしか思い浮かばない僕にとって、ウルグアイの音楽シーン、ミュージシャンというのは全く未知の世界であり、その意味でも興味深く聴くことができた作品でした。
本作ではDiane Denoirのヴォーカルを前面に押し出し、Eduardo Mateoはサポート役に徹しています。その意味では他のEduardo Mateo作品とは異なる雰囲気の作品なのかもしれません。
レコーディングにはEduardo Mateo、Diane Denoir以外に、Mateoも参加していたサイケ・グループEl Kintoのメンバーや同じくウルグアイのグループLos Malditosのメンバー等が参加しています。
アルバムは大きく、Diane Denoir/Eduardo Mateoのオリジナル、Antonio Carlos Jobim、Baden Powell、Marcos Valleの名曲カヴァー、フランス語ヴォーカルによるフレンチ・ポップのカヴァーの3つに分かれています。その意味で"ウルグアイ産ボッサ"という括り以上の拡がりを持った内容になっています。
とにかくDiane嬢のアンニュイ&クールなヴォーカルが魅力です。
この独特の空気感がクセになる1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Je Suis Sans Toi (Estoy Sin Ti)」
オススメその1。オープニングはフランス語で歌われますが、Eduardo Mateo/Diane Denoirのオリジナルです。Diane嬢の気だるいフレンチ・ヴォーカルとサイケな雰囲気が漂う独特のボッサ・サウンドがクセになります。このあたりはサイケ・サウンドにもアプローチしていたEduardo Mateoらしい仕上がりなのでは?
「Rendez-Vous D'automne (Cita De Otono)」
オススメその2。Francoise Hardyも歌っていたフレンチ・ポップのカヴァー(Jean-Max Riviere/Gerard Bourgeois)。Diane嬢のヴォーカルとMateoのギターのみのシンプルな演奏ですが、寂しげな雰囲気がグッとくる素晴らしい仕上がりです。
「La Derniere Valse (El Ultimo Vals)」
Engelbert Humperdinckの大ヒット曲「The Last Waltz」(Barry Mason/Les Reed)のフレンチ・カヴァー。その意味では最初にフレンチ・ヴァージョンを歌ったMireille Mathieuヴァージョンのカヴァーと言うべきかもしれませんが。パリの街角が思い浮かぶ小粋な仕上がりです。
「Le Lendermain (El Manana)」
Antoine & Les Problemesのカヴァー(Gerard Filipelli/Gerard Rinaldi作)。哀愁モードの仕上がりです。Mateoのギターがいいですね。
「Un Amour, Un Sourire, Une Fleur (Meditacion)」
オススメその3。Antonio Carlos Jobim作品の1曲目(Antonio Carlos Jobim/Newton Mendonca作)。フランス語&英語で歌われます。Diane嬢の気だるいヴォーカルがモロにハマる曲ですね。
「Corcovado」
Antonio Carlos Jobim作品の2曲目。これまで当ブログではJoanie Sommers、Cannonball Adderley、Wanda Sa(Wanda De Sah)、Mario Castro-Neves & Samba S.A.のヴァージョンを紹介済みです。。本ヴァージョンはDiane嬢のクールなヴォーカルが醸し出すヒンヤリ感がたまりません。
「Agua De Beber (Agua De Beber)」
オススメその4。Antonio Carlos Jobim作品の3曲目(Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作)。邦題「おいしい水」。当ブログではこれまでSergio Mendes & Brasil'66、Wanda Sa(Wanda De Sah)のヴァージョンを紹介済みです。本ヴァージョンはクールな疾走感が魅力です。格好良さという点では、数ある本曲のカヴァーの中でも上位に入る出来栄えなのでは!
「Berimbau」
Baden Powell/Vinicius de Moraes作の名曲をカヴァー。当ブログでは以前にLennie Dale & Sambalanco Trioのヴァージョンを紹介しています。Mateoのギターを堪能できます。
「Vivo Sonhando (Vivo Sonando)」
Antonio Carlos Jobim作品の4曲目。当ブログでは以前にWanda Sa(Wanda De Sah)のヴァージョンを紹介済みです。本ヴァージョンはライブ・レコーディングになっています。
「Fever (Fiebre)」
数多くのアーティストがカヴァーしているR&Bの名曲をカヴァー(Eddie Cooley/John Davenport作)。本ヴァージョンも前曲同様ライブ・レコーディングになっています。
「Garota De Ipanema (La Chica De Ioanema)」
Antonio Carlos Jobim作品の5曲目(Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作)。名曲「イパネマの娘」のカヴァー。当ブログではTamba Trio、Agustin Pereyra Lucenaのカヴァーも紹介済みです。本ヴァージョンはさり気ないサラっとした仕上がりが印象的です。
「So Nice (Sombra De Verano)」
Marcos Valle/Paulo Sergio Valle作の名曲カヴァー。当ブログではAstrud Gilberto/Walter Wanderley Trio、Bebel Gilbertoのヴァージョンを紹介済みです。どうしてもAstrud Gilbertoのキュートなヴォーカルのイメージが強い曲ですが、Diane嬢のクール・ヴォイスもなかなかグッドですよ!
「Las Flores Nuevas」
オススメその5。Eduardo Mateo作。ワルツ調の仕上がりが実に心地よいです。
「Y Hoy Te Vi」
Eduardo Mateo作。楽曲が素晴らしいですね。それだけにもっと良い録音状態で聴きたい気もします。
「Esa Tristeza」
オススメその6。Eduardo Mateo作。軽快なバックとDiane嬢の気だるいヴォーカルのギャップが逆にいい感じです。
「Mejor Me Voy」
Eduardo Mateo作。Diane嬢の寂しげなヴォーカルにグッときます。
他のEduardo Mateo作品もチェックしてみたいですね。
Eduardo Mateo『Mateo Solo Bien Se Lame』(1972年)
※上記のオリジナル・ジャケはコチラ(色使いは異なりますが)
Eduardo Mateo/Jorge Trasante『Mateo Y Transante』(1976年)
El Kinto『Circa 1968』(1968年)