発表年:2010年
ez的ジャンル:MPBの新星系女性シンガー・ソングライター
気分は... :調子どうよ!
W杯「日本対オランダ」は、0対1でオランダに敗れました。
やはり1点差以上の実力差はありましたね。その意味では日本はかなり善戦したのでは?同じ敗北でも1点差負けに止めたことは、得失点差の面でも大きいと思います。
失点の場面はGK川島には不運でしたね。
ミスではありませんが、本人には悔しさが残るかもしれませんね。次のデンマーク戦に引きずらなければいいですが・・・
交代出場の中村俊は全くフィットしていませんでしたね。今大会では俊輔に見切りをつけた方が良いと思います。
試合終了後のTV中継の落胆ぶりにも思わず笑ってしまいました。
オランダ戦は、負けて当たり前、引き分けで大健闘、勝ったら奇跡!でしょ!
カメルーン戦の勝利で、マスコミは完全に勘違いモードに突入してしまいましたね(笑)
次のデンマーク戦こそが本当の勝負ですね。
闘莉王あたりが累積警告で出場停止になることを危惧していたのですが、何とか現行ベスト・メンバーで臨めそうなので良かったです。
今回はMPBの新星として活躍が期待される女性シンガー・ソングライターLuisa Maitaのソロ・デビュー・アルバム『Lero-Lero』です。
Luisa Maita『Lero-Lero』は1982年サンパウロ生まれ。彼女の父親Amado Maitaも著名なミュージシャンであり、彼のアルバム『Amado Maita』(1972年)はコレクター・アイテムとしてかなりのレア盤らしいです。
10代後半で歌手への道を志し、音楽の手ほどきを受けたDr. MorrisことMorris PicciottoらとUrbandaというグループを結成し、2003年にはアルバムもリリースしているようです。
その後のLuisaはUrbandaを脱退し、ソロ活動を開始します。そして、サンパウロの中堅女性シンガーVirginia Rosaのアルバム『Samba a Dois』(2006年)で「Madrugada」、「Amado Samba」の2曲を楽曲提供して話題となります。Cartola、Marcos Valle、Baden Powell、Celso Fonseca等のカヴァーが並ぶ中で、無名の女性シンガー・ソングライターの作品は目立ったのかもしれませんね。
また、サン・パウロ出身の女性MPBシンガーMariana Aydarへ提供した「Beleza」(Rodrigo Camposとの共作、アルバム『Peixes Passaros Pessoas』収録)は、Rolling Stone誌ブラジル版のSong of The Yearにも選ばれました。Mariana Aydarは名アレンジャー/マルチ奏者Mario Mangaの娘です。
Mariana Aydar「Beleza」
http://www.youtube.com/watch?v=XI0UxY7Zh1w
さらに2016年にリオデジャネイロで開催されることが決定したオリンピックのプロモーション・ヴィデオにヴォーカルで参加し、さらにLuisaへの注目度が高まります。
「Rio 2016」 ※プロモPV
http://www.youtube.com/watch?v=Z00jjc-WtZI
2009年にはスペインのガイタ奏者(スペイン・ガリシア地方のバグパイプ)Carlos Nunezのアルバム『Alborada Do Brasil』にLenineらと共にゲスト参加しています。
さて、本作『Lero-Lero』は彼女にとって初のフル・アルバムであると同時にワールド・デビュー作となります。ブラジル国内では2009年に8曲入りEP『Luisa Maita』をリリースしています(4曲は本作と同じ楽曲)。
内容の方ですが、ロマンチックなボサノヴァや心地好いブラジリアン・グルーヴのようなサウンドはありません。その意味では日本人受けするステレオタイプ的なブラジル音楽とは明らかに異なる内容です。
サンパウロのゲットーが舞台にした歌詞が多く、サウンド面でも全体的にどこか翳りのあるウェットな仕上がりです。サウンドやリズム・センスには新世代MPBならではの感覚を堪能でき、その意味では現地のリアルなブラジル音楽を堪能できるアルバムだと思いす。
レコーディングはLuisaとRodrigo Campos、Paulo Lepetitを中心に、数年かけてコツコツと行われたようです。プロデュースもこの3名がクレジットされています。楽曲は全11曲中8曲がLuisa自身によるものであり、曲によってDr. MorrisやRodrigo Camposと共作しています。それ以外の3曲はRodrigo Campos等の作品です。
1回聴いただけではピンと来ないかもしれませんが、聴き重ねるほど味わいが増してくる1枚です。
リアルなブラジル音楽を堪能しましょう!
全曲紹介しときやす。
「Lero-Lero」
タイトル曲はサンパウロのゲットーのスラング("調子どうよ!"を意味するらしいです)を題したもの。サンパウロの現実を妖しいヴォーカルで歌い上げます。
http://www.youtube.com/watch?v=w8QwSDHw3y4
「Alento」
僕は本曲を試聴してアルバム購入を決めました。このクールな疾走感は新世代MPBならではの感性なのでは?ザラついた感じがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=TVxfFi94KFc
「Ai Vem Ele」
サンパウロの街角のリアルな恋物語といったところでしょうか。ウェットな雰囲気が本作らしくて良いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=nvXN3QtM8h8
「Desencabulada」
「浮気女」という邦題のイメージも重なり、妖しくセクシーなLuisaにグッとくるサンバ・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=2wYyckZhstk
「Fulaninha」
ジャマイカのダンスホールの要素も取り入れたリズム&サウンドが格好良いですね。新世代MPBならではの感性を感じる仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=ksOswZLwUJE
「Mire a Veja」
美しさと切なさが交錯する独特の音世界へと誘ってくれます。一聴すると何の変哲もない曲に聴こえますが、よく聴くとなかなか面白いサウンドに仕上がっています。聴き重ねるほど味わいが増してきます。
「Maria e Moleque」
Joao Boscoやブラジル映画『Cidade de Deus(英題:City Of God)』(2002年)にインスパイアされた作品であり、ゲットーのドラッグの売人を歌ったものです。『Cidade de Deus』はリオデジャネイロのスラム街を描いた作品です。ちなみに同作のFernando Meirelles監督は前述したオリンピックのプロモPVの監督です。サンバ調の哀愁チューンに仕上がっています。
「Anunciou」
「Alento」と並ぶ僕のお気に入り。クールなサウンドと土着的なリズムが融合したサウンド感覚が今のブラジル音楽を感じさせます。
http://www.youtube.com/watch?v=0WUryODPdfk
「Um Vento Bom」
Luisaのソングライターとしての才能を感じる1曲。美しくもウェットなメロディ&ヴォーカルに魅了されます。
http://www.youtube.com/watch?v=I5E9doyHXWs
「Alivio」
この曲にも新感覚を感じます。一筋縄ではいかないサウンド・センスにグッときますね。
「Amor e Paz」
ラストはJoao Gilbertoへのオマージュ。ギターのみのシンプルなアレンジで静寂に包まれた音空間の中でで愛と平和を切々と歌います。なかなか感動的なエンディングです。
興味がある方は関連作品もチェックしてみては?
Mariana Aydar『Peixes Passaros Pessoas』(2009年)
Carlos Nunez『Alborada Do Brasil』(2009年)