発表年:2010年
ez的ジャンル:ブラジル最高のメロディ・メーカー
気分は... :根拠のない自信!
ブラジルを代表するシンガー・ソングライターMarcos Valle、待望の新作『Esphera』です。
当ブログでこれまで紹介したMarcos Valle作品は以下の4枚。
『Vento Sul』(1972年)
『Previsao Do Tempo』(1973年)
『Vontade De Rever Voce』(1981年)
『Pagina Central』(2009年) ※Celso Fonsecaとの共演作
『Esphera』はソロ作としては『Contrasts』(2003年)以来、約7年ぶりの新作となります。
本作のプロデュースを務めるのはDJ Venomとしても知られるDaniel Maunick。数日前紹介したIncognitoのリーダーJ.P. "Bluey" Maunickの息子です。
当ブログでは以前にDanielのプロデュースしたSabrina Malheiros『New Morning』(2008年)を紹介しています。"21世紀ボッサ"と呼ぶに相応しいクラブ・テイストのサンバ/ボッサ・サウンドの『New Morning』は『ezが選ぶ2008年の10枚』に選ぶほどのお気に入り作品でした。Sabrinaの1st『Equilibria』(2005年)もDanielがプロデュースしています。
ちなみに前述のSabrina Malheirosの2枚のアルバムは、本作と同じJoe Davisが運営するFar Out Recordingsからのリリースです。本作『Esphera』でもJoe Davisはエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされています。
Sabrina Malheirosは、Azymuth(Azimuth)のベーシストAlex Malheirosの娘であり、AzimuthはかつてMarcosのバック・バンドを務めていました。そのように考えると、DanielがMarcosをプロデュースするというのは何か不思議な縁を感じます。
Daniel Maunickのような若い才能に自身のアルバムを任せるMarcosの姿勢に感心させられます。こうした感性があるからこそ、いつまでも若々しい作品を創り続けることができるのでしょうね。そうしたことも含めてFar Out Recordingsからアルバムを出しているだと思いますが。
レコーディング・メンバーはMarcos Valle(vo、key、g)以下、Mazinho Ventura(b)、Renato Massa(ds)、Robertinho Silva(per)、Julio Diniz(per)、Patricia Alvi(vo)といったレギュラー・メンバーに加え、Marcelo Camelo(g)がゲスト参加しています。
Marcelo Cameloは、リオ出身の人気ロックバンドLos Hermanosのリーダーであり、当ブログではMaria Rita作品で何度か紹介しています。本作では演奏以外にソングライティング面でもMarcosと3曲で共作しています。
"円熟"なんて言葉は無縁!いつまでも若々しいMarcosのセンスを堪能しましょう!
全曲紹介しときやす。
「Vamos Sambar」
Marcos Valle/Marcelo Camelo作。ストリングスも含めてスケールの大きさを感じるオープニング。メリハリの効いた展開がいいですね。
「Na Pista」
Marcos Valle/Ronaldo Bastos作。僕好みの1曲。メロディアスかつリズミック!Marcos Valleワールドを存分に堪能できます。
「Prefixo」
Marcos Valle作。Danielのアイデアで『Vento Sul』収録の「Democustico」エッセンスを取り入れた仕上がりになっています。「Democustico」はクラブ方面から人気のある楽曲ですね。個人的にはSerge Gainsbourgっぽい雰囲気の曲という印象が強いですが・・・。そんな「Democustico」からクラブ系リスナーがグッとくる要素を抽出して、2010年版Marcos Valleサウンドに上手く取り入れた仕上がりです。まさにプロデューサーにDanielを起用した成果の1つでしょう。
「Papo De Maluco」
Marcos Valle/Joyce作。一瞬Joyceとのデュエットか?なんて期待してしまいましたが、女声ヴォーカルはPatricia Alviです。逆にPatriciaの方がMarcosの公私にわたるパートナーなので呼吸はピッタリですが。アルバムの中では最もキャッチーな夏向けの1曲だと思います。
「Eu Vou」
Marcos Valle/Marcelo Camelo作。それほど派手な曲ではありませんが、アルバムで一番完成度が高い曲という気がします。個人的にはアルバムで一番のお気に入りです。夏の夕暮れに聴きたいですね。Mazinho Venturaのベースが効いています。
「Estatica」
Marcos Valle作。Marcosのリズミックなピアノに誘われるインスト。ホーン・セクションも入ったクラブ・テイストのサンバ・チューンに仕上がっています。Danielの手腕が存分に発揮されていますね。
「Novo Acorde」
Wanda Sa/Marcos Valle/Paulo Sergio Valle作。哀愁モードのアコースティック・チューン。ロマンティックなストリングス・アレンジもグッド!
「Baiao Maracatu」
Marcos Valle/Ronaldo Bastos作。どこかミステリアスな雰囲気が漂います。この打ち水のようなヒンヤリ感はでも猛暑の昼間に聴くといいかも?
「Arranco Toco」
Marcos Valle/Paulo Sergio Valle作。淡々としたクール・サウンドをバックに、Marcosがラップのようなヴォーカルを聴かせてくれます。聴けば聴くほど面白さを感じる1曲です。
「Esphera」
Marcelo Camelo/Marcos Valle作。タイトル曲はMarcelo Cameloのギター・ソロをフィーチャー。そこへMarcosとPatriciaの男女スキャットが絡んできます。
Marcos Valleの過去記事もご参照下さい。
『Vento Sul』(1972年)
『Previsao Do Tempo』(1973年)
『Vontade De Rever Voce』(1981年)
『Pagina Central』(2009年)