2010年10月03日

John Legend & The Roots『Wake Up!』

21世紀に問うニューソウルの魂!☆John Legend & The Roots『Wake Up!』
Wake Up
発表年:2010年
ez的ジャンル:21世紀モード・ニューソウル・カヴァー集
気分は... :目覚めよ!

今回は人気男性R&BシンガーJohn LegendがNo.1Hip-HopバンドThe Rootsとタッグを組んだ話題のカヴァー・アルバム『Wake Up!』です。

これまで当ブログで紹介したJohn LegendThe Roots作品は以下のとおりです。

 John Legend『Once Again』(2006年)
 John Legend『Evolver』(2008年)

 The Roots『Do You Want More?!!!??!』(1994年)
 The Roots『Things Fall Apart』(1999年)
 The Roots『Game Theory』(2006年)
 The Roots『Rising Down』(2008年)
 The Roots『How I Got Over』(2010年)

The Roots『How I Got Over』のエントリーでも触れていた、John Legend & The Rootsのコラボ・アルバムが遂にリリースされました。

『Wake Up!』と題された作品は、60年代、70年代ニューソウルを中心としたカヴァー集になっています。

2008年のアメリカ大統領選を機に、戦争、不況、貧困といった社会問題に目覚めたJohn Legendが、自らの思いを具現化してくれるパートナーとしてThe Rootsにプロデュースを依頼し、実現したコラボレーションです。

「時代を反映することはアーティストの使命である」

本作でも取り上げられているNina Simoneのこの言葉が、本作を制作する原動力となっているようです。そして、このスピリッツを伝える手段として、60年代、70年代ニューソウルのカヴァー集というコンセプトに至った模様です。

ニューソウルのメッセージは、2010年の現在でも我々の心に強く刻まれ、音楽の持つパワーを改めて実感できます。

そして、ニューソウルの名曲達を単に焼く直すのではなく、見事に21世紀のメッセージ・ソングにしている点がJohn Legend & The Rootsの凄いところですね。

John LegendThe Roots共に大好きな僕としては、両者がタッグを組むというだけで大満足なのですが、さらにニューソウルのメッセージを再確認できる興味深いコラボ作品となりました。

オリジナルおよび収録アルバムも一緒にチェックしながら聴くと、さらに楽しめるアルバムだと思います。

カヴァー・アルバムと聞いて侮るなかれ!
かなり奥深い1枚だと思います!

全曲紹介しときやす。

「Hard Times」
オープニングは巨漢ソウル・シンガーBaby Hueyが歌ったCurtis Mayfield作品。Biz Markie「The Dragon」等のサンプリング・ネタとしてもお馴染みの曲ですね。Curtis自身も『There's No Place Like America Today』(1975年)で歌っています。♪ひどい時代さ♪と嘆く社会派ソングですが、当時以上に現代はひどい時代かもしれない・・・そんな鋭いメッセージをJohnとBlack Thoughtが突き刺します。アルバム全体の意義・テーマを提起する意味でも最適のオープニングですね。
http://www.youtube.com/watch?v=OmbSwCk6_ZA

Baby Huey & The Babysitters「Hard Times」
 http://www.youtube.com/watch?v=zMIzTh0Lafg
Baby Huey & The Babysitters『The Baby Huey Story:The Living Legend』(1971年)
Living Legend

「Compared to What」
Les McCann & Eddie Harrisのカヴァー(Eugene Mcdaniels作)。ジャズ/ソウル分野で活躍したLes McCannはRoberta Flackを見出し、デビューさせた人物としても知られていますね。本曲「Compared to What」はRobertaのデビュー・アルバム『First Take』でも歌われています。ここではThe Rootsらしいグルーヴを堪能できるファンク・サウンドにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=jGth8iG90j0

Les McCann & Eddie Harris「Compared to What」
 http://www.youtube.com/watch?v=PT4-mBAC6KA
Les McCann & Eddie Harris『Swiss Movement』(1969年)
Swiss Movement

「Wake Up Everybody」
タイトル曲はTeddy Pendergrassがリード・ヴォーカルをとるHarold Melvin & The Blue Notesのカヴァー。McFadden & Whiteheadらが作ったフィリー・ソウル名曲です。本作のゲストとしてピッタリの大物ラッパーCommonと、当ブログでもデビューアルバム『The Bridge』を紹介したカナダ出身の実力派女性R&BシンガーMelanie Fionaをフィーチャーしています。アメリカ大統領選で反ブッシュ派の曲としてリメイクされるなど、社会を喚起するメッセージ・ソングとしてお馴染みです。曲自体もJohnのヴォーカルにピッタリですね。さらにMelanieが華を添え、Commonのラップが強く訴えます。この1曲だけでも大満足!
http://www.youtube.com/watch?v=iJgxJ6JrPkc

Harold Melvin & The Blue Notes「Wake Up Everybody」
 http://www.youtube.com/watch?v=B4ZX-geGG_g
Harold Melvin & The Blue Notes『Wake Up Everybody』(1975年)
Wake Up Everybody

「Our Generation」
ミシシッピ出身のソウル・シンガー/ギタリストErnie Hinesのカヴァー。ここではC.L.Smoothをゲストに迎えています。C.L.Smoothと言えば、当ブログでも紹介したPete Rock & C.L.Smooth時代のシングル「Straighten It Out」(アルバム『Mecca & The Soul Brother』収録)のサンプリングソースとして「Our Generation」で使っていました。その流れでの参加でしょうね。「Straighten It Out」大好き!の僕としては嬉しい1曲です。オリジナルはErnieのリードヴォーカルの弱さが気になったのですが、本ヴァージョンはその不満を解消してくれる大満足の出来栄え!オリジナルを越えていると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=oRAJ6JIm48M

Ernie Hines「Our Generation」
 http://www.youtube.com/watch?v=8LgPyoNmzi0
Ernie Hines『Electrified』(1972年)
エレクトリフィード

「Little Ghetto Boy (Prelude) 」
シカゴ出身のポエトリー・ラッパーMalik Yusefをフィーチャーした次曲「Little Ghetto Boy」のプレリュード。

「Little Ghetto Boy」
Donny Hathawayでお馴染みの名曲。Dr. Dre「Lil' Ghetto Boy」等のサンプリングソースとしてもお馴染みの曲ですね。 ここではBlack Thoughtをフィーチャーし、頭からガツンとしたラップを聴くことができます。どうしても名作『Live』のイメージが強い曲ですが、ここではJohn Legendならではソウルが伝わってきます。
http://www.youtube.com/watch?v=mbY7KTZFR5Y&ob=av2e

Donny Hathaway「Little Ghetto Boy」
 http://www.youtube.com/watch?v=ogNnJk3xOh0
Donny Hathaway『Live』(1972年)
ライヴ

「Hang On In There」
ニューソウル裏名盤として名高いMike James Kirkland『Hang On in There』収録曲。Ugly Duckling「I Did It Like This」のサンプリングソースにもなっています。Marvin Gaye『What's Going On』的な魅力を持ったアルバムですが、そのオリジナルの魅力を受け継いだカヴァーに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=D5wvYViM74w

Mike James Kirkland「Hang On In There」
 http://www.youtube.com/watch?v=Iz0WZmQN4Z4
Mike James Kirkland『Hang On in There』(1972年)
ハング・オン・イン・ゼア(紙ジャケット仕様)

「Humanity (Love The Way It Should Be) 」
ジャマイカのレゲエ・シンガーPrince Lincoln Thompsonのカヴァー。オリジナルはPrince Lincoln & The Royal Rasses『Humanity』(1979年)に収録されています。収録曲の中で最も異色の選曲かもしれません。レゲエを演奏するThe Rootsというのが興味深いですよね。
http://www.youtube.com/watch?v=VzI9zo7SwTM

Prince Lincoln & The Royal Rasses「Humanity (Love The Way It Should Be) 」
 http://www.youtube.com/watch?v=Uf8rJDlPIYA
Prince Lincoln & The Royal Rasses『Humanity』(1979年)
Humanity

「Wholy Holy」
Marvin Gayeの名盤『What's Going On』収録曲(Al Cleveland/Renaldo Benson/Marvin Gaye作)。『What's Going On』の中からこの曲をセレクトするところがシブいですね。こういったゴスペル・テイストの曲はJohn Legendにマッチしていますね。

Marvin Gaye「Wholy Holy」
 http://www.youtube.com/watch?v=n-aoL5ohFZY
Marvin Gaye『What's Going On』(1971年)
What's Going on

「I Can't Write Left Handed」
Bill Withersのカヴァー。11分を越える大作カヴァーです。ベトナム戦争で右腕を失った帰還兵をテーマに作られた反戦ソングですが、本作ではイラクやアフガニスタンに派兵されている兵士のことを思い、歌われます。
http://www.youtube.com/watch?v=QnlgRQdfONs

Bill Withers「I Can't Write Left Handed」
 http://www.youtube.com/watch?v=O4RyYtkifTM
Bill Withers『Live At Carnegie Hall』(1973年)
ライヴ・アット・カーネギー・ホール(紙ジャケット仕様)

「I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free」
Nina Simoneのカヴァー。前述のように本作制作におけるNina Simonの存在感、影響力はかなり大きいものがあるようです。差別に対するプロテスト・ソングを数多く作ったNina Simoneの作品をカヴァーの締め括りに配置しているところに、John Legend & The Rootsの思いが伝わってきます。こんなひどい時代だからこそ、自由を求めて進んでいかねばならないのかもしれませんね。勇気と希望が沸き立つ名曲です。

Nina Simone「I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free」
 http://www.youtube.com/watch?v=aI-ezEtJ_-s
Nina Simone『Silk & Soul』(1967年)
Silk & Soul (Exp)

「Shine」
ラストはJohn Legendのオリジナルです。輝ける未来へ向けた感動バラードでアルバムは幕を閉じます。

国内盤にはボーナス・トラックとして「Shine(Waiting For Superman Version)」「Wake Up Everybody(Live In Studio Performance)」の2曲が追加収録されています。

John Legendには、このままThe Rootsプロデュースでオリジナル・アルバムも制作して欲しいですね!

う〜ん、今回はかなりの大作エントリーになりました。大変だったぁ(笑)

John Legend及びThe Rootsの過去記事もご参照下さい。

John Legend『Once Again』(2006年)
Once Again

John Legend『Evolver』(2008年)
Evolver

The Roots『Do You Want More?!!!??!』(1994年)
Do You Want More?!!!??!

The Roots『Things Fall Apart』(1999年)
シングズ・フォール・アパート

The Roots『Game Theory』(2006年)
Game Theory

The Roots『Rising Down』(2008年)
Rising Down

The Roots『How I Got Over』(2010年)
How I Got Over
posted by ez at 00:01| Comment(2) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「Little Ghetto Boy」が好きで、一時期こればかり聴いていました。犯罪を犯した父を持つ少年を戒め励ます歌詞で、感動的な曲。間奏のピアノもいいです。
Posted by ami at 2014年05月06日 21:10
☆amiさん

ありがとうございます。

このカヴァーはJohn Legendの優しく包み込んでくれるヴォーカルが胸に響きますね。

70年代ニューソウル期のメッセージが今でも聴く者の心を打つというのが素晴らしいですね。こういう名曲が世代を超えて歌い継がれていくっていいですね。

Posted by ez at 2014年05月07日 03:15
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