録音年:1965年
ez的ジャンル:女性ジャズ・ヴォーカル&ピアノ・トリオ
気分は... :そろそろジャズが似合う季節...
10月も中旬となり、ようやくジャズが似合う季節になってきました。
今回はクラブジャズ・サイドより再評価が高まったジャズ作品Elsie Bianchi Trio『The Sweetest Sound』(1965年)です。
Elsie Bianchi Trioは、Elsie Bianchi(p、vo)、Siro Bianchi(b)、Charly Antolini(ds)によるピアノ・トリオ。
中心メンバーであるElsie Bianchiは1930年スイス、チューリッヒ生まれの女性ジャズ・ピアニスト/シンガー。
6人兄弟の末っ子として生まれ、母親が熱心であったこともあり、幼少期よりアコーディオンを習っていた模様です。その後、ピアノを演奏し始め、地元チューリッヒでジャズのジャム・セッションに参加するようになります。そこでベーシストのSiro Bianchiと出会い、1954年に二人は結婚します。その後アメリカに渡り、アメリカとスイスの行き来しながら演奏活動をしていたようです。
今日紹介する『The Sweetest Sound』(1965年)は、ジャズ・ファンにはお馴染みのドイツのレーベルSABAで録音されたものです。
埋もれたジャズ作品であった本作が注目を集めるようになったきっかけは、Gilles Peterson監修による人気コンピ『Talkin' Jazz Vol.3』で本作収録の「Little Bird」がセレクトされ、人気曲となったことです。それ以来、謎のベールに包まれた女性ピアニスト/シンガーとしてElsie Bianchiの名が知れ渡るようになりました。
そんな人気曲「Little Bird」が収録されたアルバムが『The Sweetest Sound』(1965年)です。
全12曲中、オリジナルは1曲のみで残りは有名スタンダード等のカヴァーです(その中で「Little Bird」は異色の選曲ですが)。また、8曲がBianchiのヴォーカル入りです。
軽快なスウィング、しっとりとした大人のバラード、洗練されたボッサ・チューンといった、奇をてらわない、わかりやすいピアノ・トリオ+女性ジャズ・ヴォーカル作品であり、初心者からクラブジャズ好きまで楽しめます。
なかなか侮れない1枚ですよ!
全曲紹介しときやす。
「Teach Me Tonight」
Gene De Paul作詞、Sammy Cahn作曲のスタンダード。ピアノ・トリオらしい小粋にスウィングした演奏と清々しいBianchiの歌がいいですね!
「Fallin' In Love」
Lorenz hart作詞、Richard Rodgers作曲のスタンダード。1938年のミュージカル『The Boys From Syracuse』のために書かれた楽曲です。さり気ない雰囲気にグッときてしまいます。
「Little Bird」
Tommy Wolf作詞、Dick Grove/Peter Jolly作曲。前述のように本作のハイライトとなるボッサ・テイストのインスト・チューン。45年前というのが信じられないクラブジャズ・テイストな演奏に相当グッときます。作者の一人ジャズ・ピアニストのPeter JollyとBianchiはアメリカでの演奏仲間であり、その関係から本曲を取り上げたのでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=z6pqg28r6Jc
「A Sleepin' Bee」
Truman Capote作詞/Harold Arlen作曲。1954年のミュージカル『A House of Flowers』のために書かれた楽曲です。実にスウィートなムードにうっとりですね。Bianchiのヴォーカルが最高です。Truman Capoteの名を聞くと、彼を描いた映画『Capote』(2005年)を思い出してしまいます。Capote役のPhilip Seymour Hoffmanがアカデミー主演男優賞を受賞しましたね。
「The Shadow Of Paris」
映画ピンク・パンサーシリーズの第2作『A Shot In The Dark(邦題:暗闇でドッキリ)』(1964年)の主題歌カヴァー(Robert Wells作詞、Henry Mancini作曲)。スロー・ワルツ調の哀愁を帯びた演奏とヴォーカルが印象的です。
「Fiddler On The Roof」
ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』のタイトル曲(Jerry Bock作曲)。ミステリアスな雰囲気に包まれたスウィング感にグッとくるインスト・チューン。
「The Sweetest Sound」
タイトル曲は1962年のブロードウェイ・ミュージカル『No Strings』の挿入歌です(Richard Rodgers作)。タイトルとは異なり、甘くなりすぎないビター・スウィートな演奏&ヴォーカルにグッときます。
「Spring Can Really Hang You Up The Most」
Fran Landesman作詞、Tommy Wolf作曲。ミュージカル『The Nervous Set』の挿入歌として作られた曲です。春をテーマとした曲ですが、ここでの味わい深い演奏は秋にピッタリだと思います。
「Meditation」
Antonio Carlos Jobim作品のカヴァー(原題「Meditacao」)。当ブログではJoanie Sommersによるカヴァーも紹介済みです。「Little Bird」に次ぐ人気曲なのでは?少し気だるいBianchiのヴォーカルにグッとくるボッサ・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=6pHbuo5e9h0
「Why Did I Choose You」
Herbert Martin作詞、Michael Leonard作曲。しっとりとした大人の哀愁バラード。胸に迫ってくるものがありますね。かなり好きです。
「Little Blues」
本作唯一のオリジナル。タイトルの通り、ブルージーな演奏を堪能できるインスト・チューン。
「Guess Who I Saw Today」
Elisse Boyd作詞、Murray Grand作曲。ブロードウェイ・ミュージカル『New Faces of 1952』の挿入歌です。ラストはしっとりとした大人のバラードで締め括ってくれます。
興味がある方は『Atlantis Blues』(1962年)もどうぞ!『Atlantis Blues』は、10インチLPとして100枚限定で配布された1962年録音の音源を復刻したものです。
『Atlantis Blues』(1962年)